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ケララの高齢者 [インド]

お年寄り自身の国―ケララの高齢者人口が危機をもたらす
Old's own country: Kerala's elderly population bringh forth a crisis
India Today Online, 2011年10月29日、M.G. Radhakrishnan記者

 人口置換水準に近い出生率が何十年も続き、その間平均寿命が伸長するというのは、社会の進歩を示す指標かもしれない。しかし、ケララ州での高齢者人口の増加は多くの危機をもたらしてきた。大規模な出稼ぎにより厳しい労働力不足が置き、州政府に対する年金給付申請も増え続けている。
IndiaToday2011-11-7-1.jpg 60歳以上人口は、3340万人で州総人口の13%を占める。2011年の人口センサスによると、高齢化率は全国平均は8.2%である。過去10年間でインドの総人口は17.6%増加したが、ケララの人口増加率はわずか4.6%である。パタナムティッタ県では、インド史上初めての人口減少が報告されている。
 「公衆衛生を劇的に改善したケララの開発経験は、平均寿命の伸びを加速させましたが、質の高い生活を保障するのには失敗しました」――人口学者のS.イルダヤ・ラジャンはこう指摘する。ケララ州の高齢従属人口指数は57.8%で、高齢者の35.1%は財産と呼べるものを全く持っていない。年金給付のために州庫から出ていく予算は年間7311万ルピーにものぼり、税収による歳入総額の35%以上を占める。
2008年の送金受取額は4億3288万ルピーにも達するため、ケララ州経済は繁栄してきた。しかし労働者の不足は厳しいものになってきている。高い最低賃金とも相まって、労働人口不足は、ビハール、西ベンガル、北東州といった国内他地域からの労働者の流入も招いている。
 ケララ州では、4世帯に1世帯は誰かしらを海外で働かせている。州外で働くケララ人非居住者は2008年には335万人にものぼった。老人ホームの数は増え続けており、2000年には150軒だったのが、今では300軒に届こうというところまで来ている。「でも、空室待ちのウェイティングリストは膨大なものになっています」――トンナッカルでサイ・グラマムという老人ホームを運営するサイ・オーファネージ・トラストのK.アナンダ・クマールはこのように述べている。「生活が豊かな人々ですら、自分の年老いた両親を老人ホームに入れたいと考えているくらいですから。」
*英文による原文は、下記URLにてダウンロード可能です。
 http://indiatoday.intoday.in/story/elederly-polpulation-in-kerala/1/157762.html

今日は久し振りにインドの雑誌記事からご紹介しよう。大衆向け週刊誌『INDIA TODAY』の2011年11月7日号で見つけた記事である。この雑誌は本当は別のカバーストーリーの方を読みたくて頁をめくり始めたのだが、ケララの老人ホームに暮らす女性の高齢者の写真に目が行き、短い記事だったので先に読むことにした。

おおかたそんなことが起きているのだろうなとは想像はしていたが、具体的な事実として指摘されると、やはり「インドは人口学的には若い国」だとする僕らの先入観には多少の修正が必要になる。少なくとも高齢化先進州であるケララではこんなことが起きているのだ。

幾つか重要な点が書かれている。①既に「人口減少」すら始まっている県があること、②労働力不足が既に問題として顕在化し、そのために北東地域から多くの出稼ぎ労働者がケララに来ていること、③いくら自分が裕福になっても、自分で親の面倒を見ずに老人ホームに入れたいと考えているケララ人が多いということ。2009年2月にケララを訪れた時、「息子たちが自分たちを大事にしてくれない」と声高に主張していた高齢の市民活動家が何人かいらしたのだが、本当にそうらしい。


子供が親と離れて暮らし始めるというのがどういうことなのか――日本だけじゃなく多くの国々で実際に起きており、上の台湾の記事になるような話は既にインドにもあるが、家族の中でも相互ケアが機能しなくなり、子供が親を見捨てるという事態が、ここケララでも起きているのだ。

週末に実家に立ち寄ってこの記事を入力している僕には身につまされる記事である。
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