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『緑のふるさと協力隊』農山村再生・若者白書2010 [読書日記]

緑のふるさと協力隊―どこにもない学校 農山村再生・若者白書〈2010〉

緑のふるさと協力隊―どこにもない学校 農山村再生・若者白書〈2010〉

  • 作者: 『農山村再生・若者白書2010』編集委員会編
  • 出版社/メーカー: 農山漁村文化協会
  • 発売日: 2010/04
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
行ってみませんか?受け入れてみませんか?16年で465人が巣立つた1年間の農山村体験。
「青年海外協力隊」のライバルになるような政府事業は他にあるのだろうか?
―――そんな疑問をしばらく抱いていた。

僕は「地域おこし協力隊」という事業ぐらいは聞いたことがある。とりあえずそのあたりからスタートしようかなと思いながら市立図書館で検索していたら、全然別のプログラムを見つけてしまった。

先ず、「緑のふるさと協力隊」とは、本書によると、「農山村に関心をもつ若者を、1年間、全国各地に派遣するプログラム」なのだそうだ。特定非営利活動法人・地球緑化センターが1994年に開始したこのプログラムは、若者に農山村という魅力あふれるフィールドがあることを知ってもらう一方、農山村に暮らす人々には、若者の目で地域に魅力を再発見してもらうことを目指しているのだという。参加資格に技術や経験は問わない。農山村で、1年間、懸命に生きている地域の人々とともに働き、語り、生活する。「こんな大人になりたいと思う人に初めて出会えた。ものすごいパワーを持った人たちが山村にはたくさんいる」――1年後、若者がそう語るように、生きていくうえで大切なことを、若者は農山村の人々から学ぶのだという。

16年間で465人ということは、そんなに大きな事業ではない。とはいえ、協力隊員を受け入れている自治体を見ていると、「いろどり」事業で有名な徳島県上勝町が既に10人も受入実績があったりして、村おこしにそれなりに取り組んできている自治体が若者の受入れをこの制度を利用して行っているのかなという印象もある。また、65歳以上の高齢者人口が自治体人口に占める割合が50%を超え日本で最も高齢化が進んでいる自治体の1つである群馬県南牧村とか福島県金山町とかが含まれていて、きっと派遣される若者の活躍の余地が相当あるのだろうなと思われるところもある。

ただ、福島県の方を見ていくと、受入先の農山村に川俣町や飯館村が含まれていて、ちょっといたたまれない気もしてしまう。せっかくこうやって都市の若者を過疎化と高齢化が進む農山村に送り込んで交流する場を作ろうというプログラムが立ち上がっても、肝心の農山村が原発事故のせいで離散を余儀なくされてしまうのは本当に忍びない。

この白書は読んでいて結構面白い。そもそも派遣実績が少ないこともあるが、各々の隊員と受入自治体をよくフォローしていて、事例が多くて詳しい。こういうのを読んだら、自分も行ってみようかなと思うような都会の若者もいるに違いない。白書の構成も、受け入れた自治体、派遣されて農山村での暮らしを実践中の隊員、村に残った元隊員、村を去った元隊員といった視点から事例が紹介されている。

そして、政府や地方自治体が設けている類似の制度についても紹介している。(残念ながら、青年海外協力隊は含まれていないけど。)自治体の研修生受入制度はおそらく本書で紹介されているよりもずっと数が多いと思うので割愛して、政府が創設したいくつかの制度・事業を以下に挙げておこう。

◆農村活性化人材育成派遣支援モデル事業『田舎で働き隊!』(農林水産省農村振興局、2008年度~)
◆集落支援員(総務省自治行政局過疎対策室、2008年度~)
◆地域おこし協力隊(総務省地域力創造グループ地域自立応援課、2008年度~)
◆農商工連携等促進人材創出事業「村おこしに燃える若者等創出事業」(経済産業省地域経済産業グループ)

なんだかいろいろありますね。それぞれ制度も少しずつ異なるので、うまくやれば緑の協力隊で派遣された若者が利用できる助成制度とか、あるいは受け入れる自治体がその先の展開を独自で考えていくときに使える制度もあって、組み合わせて活用していけばいいような気がするものの、揃いも揃って2008年度から制度がスタートしているというのが面白い。この頃国内では何かあったっけ?面白いことに、この頃から青年海外協力隊への応募者数が低迷し始めたような印象があるが…。

内向き志向が強まっているという今の日本の若者に、国内とはいえ自分が住む世界の外に目を向け、地域の人々との新たな繋がりを築くきっかけを与えるという意味ではこうした事業はとても重要だと思うが、一方で世界に目を向けるきっかけを与えようと取り組んでいる事業が低迷するというのもどうかなぁ。いっそのこと、人口稠密な途上国の若者を日本に招へいして、農山村で交流してもらうという制度でも拡充したら、日本びいきも増えるし、地域住民に別の新たな刺激を与えることにもなるような気がするが…。
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yukikaze

世界に親日派を増やす活動も立派な外交戦略だと思います。ぜひ、進めてもらいたいものです。
by yukikaze (2011-09-28 12:25) 

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