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『適応の条件』 [読書日記]

適応の条件 (講談社現代新書 300)

適応の条件 (講談社現代新書 300)

  • 作者: 中根 千枝
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1972/11/20
  • メディア: 新書
出版社/著者からの内容紹介
異なる文化に接した場合の〈カルチュア・ショック〉は、日本人において特に大きい。そこには、日本社会の〈タテ〉の原理による人間関係と、ウチからソトへの〈連続〉の思考が作用している。本書は、欧米・インド・東南アジアなど、ソトの場での日本人の適応と、そこに投影された〈ウチ〉意識の構造を分析し、〈強制〉と〈逃避〉という2つの顕著な傾きを指摘する。著者のゆたかなフィールド・ワークをもとに、国際化時代の日本人の適応条件を考察する本書は、ベストセラー『タテ社会の人間関係』につづく必読の好著である。
この夏に読んでいる中根千枝の著作紹介シリーズ第2号をお送りしたい。

最近、「国際化」や「国際人」という言葉をまたぞろ耳にする機会があった。「国際化の時代にはむしろ日本史こをしっかり勉強すべき」だとか、「国際化」と逆の流れとして、今どきの若者は内向き志向になった(のはよくない)とか。今の時代も国際性というのが志向はされているのだというのがよくわかる。

ご察しの通り、「国際化」や「国際人」という言葉は大阪万博の頃から既にあったようだし、もっとさかのぼれば中根が本書を書くきっかけというのは1965年に発足した青年海外協力隊(以下、JOCV)があったと聞いている。現在と比べても若者の総人口に占める割合が多かった時代、特にベビーブーマー世代が多かったこの時代のJOCVが、ほとんど初めて訪れた外国で直面したカルチャーショックは相当大きかったようだし、それを自分個人の資質の問題なのか、日本人の共通問題なのかの捉え方の違いによって、現地での過ごし方にも大きな差がついたものと思われる。言うまでもなく、中根の主張は後者である。

そう考えていくと、未だに「国際化」「国際性」「国際人」が明確な言葉として提唱され続けているということ自体に虚しさも感じざるを得ない。本書を読んだ人は、中根が1972年に既に論じていた日本人の前に立ちはだかる異文化コミュニケーションの壁が、現在も存在していること、中根の議論が今でも有効であることに驚かされるに違いない。40年も経ってるのに今も問題が変わっていないということは、これまで散々強調されてそれなりに議論がなされてきたにもかかわらず、何の方策も講じられてこなかったか、講じられてきた方策が有効でなかったということを示しているのではないか。今でも「国際化」「国際性」「国際人」という言葉を振りかざす人には特に言いたい、何をどうすればその目標は達成できるというのかと。有効な方法論を持たないのに軽々に言うなと。

ただ、1つだけ「ひょっとしたら…」と思えることを述べておこう。それは、当時ベビーブーマーを対象として中根が論じていた点は、もしその時点でカルチャーギャップに苦しみながらも「世界」を垣間見た人々がその子供たちに同じ苦しみを味わせたくないという思いから自分たちの経験に基づく方法論で何かを伝えていたら、次の世代の人々は少しは変わっているのではないかと。学生時代に出会った「帰国子女」と呼ばれる人々の思考と行動はやっぱり国内で純粋培養の人々とは違っていたし、それでも努力して海外留学の機会を勝ち取ってそれなりに経験を積んできた今でも、その差が埋まったとはとても思えない。

中根が調査対象とした40年前のベビーブーマーと、僕が論じているベビーブーマーの子供の世代とは、思考も行動も異なる可能性はあるということだ。但し、同じベビーブーマー世代でも海外に渡ってカルチャーショックを味わうこともなく国内でずっと生きてこられた人々の子供の世代は、親の世代と同じ問題点を抱えることにはなるのかもしれないなとは思う。

とは書きつつも、僕はこの仮説を信じているわけではない。うちの長男は4歳から6歳まで米国に住んでいる間に近所の同世代の子供たちと相当遊び、僕らが信じられないくらいに普通のコミュニケーションをしていた。我が子に引っ張られる形で僕や妻もコミュニティに出て行けたぐらいである。しかし、それから帰国して日本の小学校に入った長男は、英語の発音はともかく、受け答えはあまりできなくなったし、内向き志向にもなった。親の世代が苦労して外の世界を見せても、それはすぐに忘れ去られるものなのだ。

本書も市立図書館で借りた。借りた本なのでマーカーで線を引くわけにもいかず、付箋をペタペタ貼って有用な箇所をマークしたが、その枚数が結構多くなってしまった。中古でもいいからこの本は手元にずっと置いておきたい。そのうちにまた本書についてはブログでも取り上げ、僕なりに印象に残った記述の引用だけで1つの記事を書き残しておければと思っている。
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