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農業労働者賃金の急騰 [インド]

6月29日(水)にバンガロール市内のホテルをチェックアウトする際、ホテルに置いてあった同日付のTimes of India紙を失敬して移動の車中で読んでいた。そこで、とっても気になる記事を見つけたのでご紹介しよう。

農場賃金は最大43%上昇
Farm wages rise up to 43%
カルナタカ、タミル・ナドゥは25%の賃金上昇を記録
2011年6月29日、Surejit Gupta & Sidhartha(TNN)
【ニューデリー発】 賃金の上昇で深刻な打撃を受けているセクターが1つあるとすれば、それは農業である。最新の政府データによれば、農場労働者の賃金は最大で43%上昇したという。オリッサのような州では、平均上昇率は低い。しかし、あまり経済的に繁栄しているとは思えないウッタル・プラデシュ州から、より裕福なカルナタカ州、タミル・ナドゥ州に至る多くの州では、耕耘、植付、雑草除去、田植え、収穫といった農場での活動にかかる1日当たりの賃金は、25%近い上昇を記録している。
 労働局データによると、最も賃金上昇率が低かったのはヒマーチャル・プラデシュ州で、2009年12月から2010年12月にかけて、8.21%の上昇にとどまった。これに続くのはグジャラート州で、ここ数年間最も高い農場収入増加率を記録してきた。グジャラート州の賃金上昇率は、2010年12月時点で10.4%だった。
 労働賃金の上昇は、農場生産物の価格を上昇圧力にさらす。肥料価格や軽油価格の上昇は既に農産品価格に影響を与えている。
 農場労働者の賃金上昇はまた工業部門に難しい課題を突き付けている。農村人口の相当な割合が以前は都市の工場で働いてよりよい賃金を得ようと流入してきていたが、今では農村部に居残って農場で働くのをむしろ希望しているからである。
 農場労働者の賃金上昇の原因は何か。エコノミストはその原因を全国農村雇用保証制度(NREGS)のような政策がもたらす上昇圧力に求めている。NREGSは貧困ライン以下(BPL)の人口に100日間の雇用を保証するというもので、貧困人口の相当数が、雇用機会を求めてパンジャブやケララを訪ねるのに代わり、自分の村にとどまるケースが増えている。
 もう1つの要因は、工場や道路工事、その他建設事業などとの競合である。こうした経済部門からの競合が激化することによって、カルナタカ州やアンドラ・プラデシュ州といった州の土地所有者は、さらに賃金を積み上げるか、さもなくばこうした部門からの競合に敗れるかしかなくなってきている。
実は、南インドに滞在している期間中、NREGSへの批判の声をかなり頻繁に耳にした。農場で労働者を雇っている農家だけではない。政府を退職した人でもNREGSが労働者をスポイルしていると指摘する人がいた。カルナタカ州コラール県のある農家で聞いた話によると、彼は農場労働者を1日80ルピーで働かせているが、これで結構みっちり働かせるらしい。ところが、NREGSでやる公共事業は作業が楽なものが多いのに1日100ルピーが保証される。これでは労働者が真面目に働こうとは思わないという。ある人は、「NREGSで個人農園での作業もカバーしてくれたらいいのに」と嘆いていたが、この意見には一理ある。

それだけではない。記事では指摘されていないが、PDS(公共配給制度)が貧困層労働者のやる気をそいでいるという批判の声も二度ほど耳にした。「我々が30ルピー出して買わなければいけない食料を彼らは3ルピーで購入できる。これでは労働者がわざわざ働いてお金を稼いで食料をちゃんとした価格で購入しようというインセンティブがなくなる」という彼らの主張も、これまた一理ある。

こういう話は、デリーでNREGSの記事を読んでいたらなかなかわからなかったことだ。

ただ、いろいろな農家に聞き取りしたが、農場労働者の賃金は男性の場合は1日200ルピー、女性の場合は120~150ルピーあたりが相場のようだったので、80ルピーでみっちり働かせるというのはちょっと虫の良すぎる話であるようには思えた。中には自身で畑に出ていろいろ作業を自分でやっている農家の人もいたが、労働力不足が問題だ、何とかしろと声を張り上げている人は、実は自分ではあまり働かず、もっぱら他の労働者の作業を監督しているだけということが多い。問題は問題だが、いろいろな工夫をして労働依存を抑制しようとしている農家の人々もいるのだ。

農場労働者の賃金が上がっているのなら、より労働節約的な生産方式に転換していく必要があるということだ。それにはできるだけ安価な農機が必要だろうし、機具の工夫も必要だ。こういう農場経営者が貧困層だというわけではないので、これをBOPビジネスというつもりはないけれど、もしこういう報道を聞いた日本の農機具のメーカーの方は、こういうところにビジネスチャンスを見出していただけるととても嬉しい。
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