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『空飛ぶタイヤ』(上・下) [池井戸潤]

空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)

空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)

  • 作者: 池井戸 潤
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/09/15
  • メディア: 文庫

空飛ぶタイヤ(下) (講談社文庫)

空飛ぶタイヤ(下) (講談社文庫)

  • 作者: 池井戸 潤
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/09/15
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
走行中のトレーラーのタイヤが外れて歩行者の母子を直撃した。ホープ自動車が出した「運送会社の整備不良」の結論に納得できない運送会社社長の赤松徳郎。真相を追及する赤松の前を塞ぐ大企業の論理。家族も周囲から孤立し、会社の経営も危機的状況下、絶望しかけた赤松に記者・榎本が驚愕の事実をもたらす。 事故原因の核心に関わる衝撃の事実を知り、組織ぐるみのリコール隠しの疑いを抱いた赤松。だが、決定的な証拠はない―。激しさを増すホープグループの妨害。赤松は真実を証明できるのか。社員、そして家族を守るために巨大企業相手に闘う男の姿を描いた、感動の傑作エンターテインメント小説。
今回の長旅のお供にとわざわざ新規で購入し、持ってきた小説は池井戸潤の『空飛ぶタイヤ』と『下町ロケット』だった。既に『下町ロケット』は読了し、早々にブログでもご紹介したが、今回の旅では意外と夜に本を読んだりして過ごす時間が少なく、このままではインドにいる間に読了し、インド駐在中の知人の誰かに押し付けて帰ろうという魂胆の実現に支障を来すのではないかと危惧される時期にさしかかってきた。そこで、タミル・ナドゥ州のゴビチェットパラヤムという町に滞在して周辺の養蚕農家の訪問調査をして過ごしている3泊4日の間に、『空飛ぶタイヤ』も読み終えてしまおうと考え、実行した。

素直に面白かった。それは認める。文庫本だと合計900頁にもなろうかという超大作で、どん底にまで落とし込まれた主人公に「一発逆転」という転機はなく、一進一退のうちに運が巡ってくるという展開は、とても受け入れやすいものだと思う。ハラハラワクワクしながら頁をめくっていく手がなかなかとまらない。かなり面白い長編で、ストーリーも分かりやすくて読みやすい。これまで読んだ池井戸作品といったら、銀行を悪玉としてしか描いていないものが多かった。本書で出てくる「東京ホープ銀行」も、少なくとも支店レベルの対応についてはそんな嫌味な銀行として描かれているが、「はるな銀行」という大手銀行から落ちこぼれかかっている銀行が善玉として描かれていて、これまで読んだ作品とはちょっとだけ違った味わいはあった。

ただ、問題はこの作品を『下町ロケット』読了からあまり間を開けずに読んでしまったことにある。この2作品、業界は違うが、中小企業対大企業、中小企業対大手銀行、中小企業の二代目オーナー社長とそれを取り巻くスタッフ群像、一枚岩でない大企業の縦割り組織など、ストーリーの展開の仕方が非常によく似ている。違いらしい違いといったら、『空飛ぶタイヤ』はオーナー社長が子供の学校のPTA会長も務めていて、家族も含めて私生活の部分がかなり出てくることぐらいではないかと思える。

同じような作品ばかりを読んでいると、作品から得られる効用が低下していくのではないかと思う。少なくともこの2つの池井戸作品は、間髪入れずに読むより、ある程度間を開けて読んだ方が面白さが味わえるのではないだろうか。
タグ:池井戸潤
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