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『果つる底なき』 [池井戸潤]

果つる底なき

果つる底なき

  • 作者: 池井戸 潤
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1998/09
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
債権回収を担当していた同僚が死んだ。謎の言葉と、不正の疑惑を残して。彼の妻は、かつて「私」の恋人だった…。先端企業への融資をめぐる大銀行の闇に、私は一人、挑む。第44回江戸川乱歩賞受賞作。
来週から3週間にもわたって職場を留守にするため、今週はその準備をやる一方でその前に片付けておかなければいけない仕事も多くて、最近の僕としては珍しく夜残業やったり、朝7時30分に出勤したりしてなんとか働いてきた。自分が幹事をやっていた飲み会もあったし、千葉や茨城方面での外勤が半日がかりになったりもした。移動の電車の中では座席で居眠りすることも多く、疲れているなと実感する。

南インドの農村に入り、農家の方々の暮らしぶりを調査できるのは楽しみだが、一方でその前に片付けなければならない仕事は正直非常に気が重い。元々自分がこれまで関わってきたこともなかったようなテーマで、それでも成果を求められるというのはちょっと…。気が乗らないながらも勉強はしたし、それで週末も土日ともに自室に籠って資料を読み込んだ。でもいくらやっても自信が湧いて来ないし、そうするとそれまで普通にやれていた日課を普通にこなすことにも煩わしさを感じてしまう。朝の素振りもやってないし、帰宅時に駅から30分の距離を歩く余裕も今はなく、駅まで妻に迎えに来てもらっている。天候だけが理由ではない。

だから、今週はあまり本も読んでおりません。ただ、図書館への返却期限が迫っている本については拾い読みしてなんとか片付けているし、本日ご紹介の池井戸潤作品はイッキに読んでしまった。

最近、同い年の岐阜県出身作家である池井戸潤作品にハマり始めている。以前銀行に勤めていたという点でも親近感は覚える。勤めていた銀行はまったく違うけれど、彼の作品によく登場する銀行営業店内のシーンは、自分も営業店勤めをしたことがあるので非常にリアルに頭に思い描くことができる。

今から22年前のちょうど今頃は、僕も某銀行に就職して最初に配属された営業店で、2ヵ月の預金係での修業を終えて、融資係に移ったところだった。銀行業務の基礎の基礎の勉強を終えて、手形・小切手法の勉強を少し深掘りし始めていた時期であり、本書でも登場した「融通手形」なんて、それが違法じゃないけど道義上問題があるというのも学んだ覚えがある。懐かしい言葉だなと思った。

ただ、不正操作がどう行なわれたのかという仕組みは理解するのが大変だった。融通手形の話は、座学としては学んだけれども実務の中で実際に事態に直面した経験がないので、やはりすっと頭の中に入って来なかった。

僕は結局3年10ヵ月働いて銀行を辞めてしまったけれど、最近、高校の同窓会で地元の金融機関に就職して今も働いている元クラスメートと会ったり、当時の職場の先輩からメールをいただいたりしていて、もし自分が銀行員を辞めずにずっと働き続けていたとしたら、今頃どんなに違った人生を送っていたことだろうかと考えることがよくある。本書を読んでいると、支店勤務の中で培ってきた人のネットワークを主人公が相当駆使しているし、担当企業の属する業界の情報、得意先企業の取引先の業況などまで調査していくシーンも登場する。そういうことを僕もやっていたのかもしれないなと思う。

それにしても、主人公モテモテですね。金融ミステリーというジャンルなんだろうと思うが、ハードボイルドっぽくてとても面白い1冊でした。金融機関の内幕を暴いているだけではなく、本書の場合は半導体、『鉄の骨』の場合はゼネコンと、銀行の取引相手の業界の情報にも相当通じていないと書けない、経済小説のような要素もかなりあると思う。僕は江戸川乱歩賞受賞作品といったら藤原伊織『テロリストのパラソル』ぐらいしか読んだことがないが、あれにも通じる主人公のシブいカッコよさだった。
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