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低コストでどでかい構想 [インド・トリビア]

昨夜は僕がインドで働いていた職場の元上司の方の送別会を催させていただいた。僕が赴任した最初の1年くらいまでの間に一緒に働いた方々で集まったので、その時期の苦労話には花が咲いた。幹事役としては満足。

さて、本日は最近あまり取り上げていなかったインドの週刊誌INDIA TODAYの記事を取り上げてみたい。2011年5月30日号に「高尚なアイデア、低廉なコスト(Big Ideas, Low Cost)」(Padmaparna Ghosh記者)という記事が掲載されていた。いわゆる「最底辺の人々(BOP)」を購買層として狙っている商品開発の最前線を紹介したもので、そのうちの幾つかは以前にこのブログでも紹介したことがあるものが含まれている。
*記事全文は下記URLでダウンロード可能です。
http://indiatoday.intoday.in/site/story/low-cost-innovators-make-big-money-for-smart-businesses/1/138767.html

以下はその例―――。

chotukool.jpg1)ゴドレジ社の「ゴドレジ・チョットクール」
電池式のポータブル冷蔵庫で、室外気温より20度ぐらい低い温度に冷やしてくれる。1台約3,200ルピーで、容積165リットルのレギュラー型冷蔵庫の半額。

2)ヴォルテックス・エンジニアリング社の「ヴォルテックスATM」
低電力低コストだが利便性が高い。太陽光エネルギーで駆動する農村型ATM。都市型ATMは1台20~30万ルピーはかかる。ヴォルテックス社はこのATMをインド・ステート銀行(SBI)に供給。

3)GE社の心電図検査装置「MACi」
電池式のポータブルECG(心電図)検査装置。1回の充電で500回ECG検査実施が可能。1台25,000ルピーで、農村部のプライマリーヘルスセンターをターゲットとして売込み。

4)マイクロソフト・インド研究所の「デジタル・スレート」
デジタル式のペンとパッド。農村自助グループ(SHG)活動における情報の保存、マイクロファイナンスの会計処理の保存などに利用可能。1台約4,500~9,000ルピー。SHGの女性をターゲットにして売込み。

ただ、記事の目的はこうした農村をターゲットにし最新イノベーションの数々を棚卸しすることではない。こういうイノベーションを頭に思い描く人は大勢いるが、そのうちわずか1%しか実際にその構想を実現させるに至っていない。彼らが次のステージに行けない最大のボトルネックは「資金(funding)」だという。そこで記事が先ず着目しているのがベンチャーキャピタルである。

5)アーヴィスカール(Aavishkar)
2001年に創設されたBOPビジネス向け投資ファンドで、これまでに23個の構想に出資。
http://www.aavishkaar.in/

もう1つの大きな課題は、そうしたアイデアを専門的見地から評価し、費用的に実現可能なのかどうかを判断できる眼が投資家側に不足していることだという。

6)ロック・キャピタル(Lok Capital)
資金総額40億ルピーの規模のインド最大のBOPビジネス投資ファンド。
http://www.lokcapital.com/

日本の企業でもインドのBOP市場をターゲットにして新商品を作って売り込みたいという意欲は盛んであると聞く。が、往々にしてインドの農村で長期間市場調査をしてニーズをつかむところに作業に限界があるため、なかなか具体的な商品開発に繋がっていないのが現状だと思う。それを打開するには、①現場を知っているローカルパートナーと業務提携する、②そういう商品開発をファイナンスするベンチャーキャピタルファンドに投資することで情報収集する、ことなどが考えられるだろう。人口12億人の7割――9億人弱がターゲットとなるこのお話、日本企業による成功事例が速く生まれてくることを期待したいものである。
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toshi

インドの農村は、まだ貧しい所が多いですよね。
by toshi (2011-06-09 08:07) 

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