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『アフリカと帝国』 [読書日記]

アフリカと帝国―コロニアリズム研究の新思考にむけて

アフリカと帝国―コロニアリズム研究の新思考にむけて

  • 作者: 井野瀬 久美惠
  • 出版社/メーカー: 晃洋書房
  • 発売日: 2011/03
  • メディア: 単行本
英国会議に蓄積された膨大な情報を読み直し、帝国の語りと記述を超える試み。歴史意識と現在意識を相互に照射しつつ、分割・支配されたアフリカの多様な植民地経験に切り込み、コロニアリズム研究に新境地を開く。そこに、支配の呪縛を乗り越える鍵も見えてくる。
最近、多少「藁をもすがる」感覚を持って読む本の選択を行なっているところがある。当たりもあれば、ハズレもあるし、全部読み切ったのもあれば、収録されている一部の章だけを読んだというのもある。ジャーナリストが書いた本は原文であろうと訳本であろうとわかりやすいなと感じる。逆に、研究者が書いた本は、用語が難しくてついていけないことが多い。全部がそうだとは言わないが、難しく書くのが仕事なのかと思ってしまうことが多い。概念図の1つでも付けておいてくれたら少しでも分かりやすい筈だが。まして、元々経済学とか社会学系の専門書を読むことが多かった僕としては、政治学者とか歴史学者の書いた本は同じ素材を扱っていても手も足も出ないということが多い。

申し訳ないけれど、本書はそんな本の1冊だった。これが理解できないのは僕の吸収能力の限界だ。元々特定国の事例分析にはあまり興味がなかったので割愛し、次の3章だけを読んだので記録しておく。

序章 コロニアリズム研究の新思考にむけて
第1章 アフリカ史におけるコロニアリズム研究の再中心化―記述と枠組みの新機軸にむけて
第3章 帝国の遺産―イギリスに対する帝国の余波

今さらなんで「帝国主義と植民地主義」を主題とする専門書など読もうと考えたのかはこの際置いておくとして、なんで今頃こんな本が世に出てきたのかという今日的意義について少し語っておきたい。

序章のところにあるが、「今」という時代がどのように形作られたのかを確認するためには、「過去の植民地支配」が想起されることがあるという。例えば、欧米諸国は事あるごとに「民主主義」を叫び、欧米が生みだした効率重視の経済システム、世界を理解し変革するための合理的アプローチを持ち出す。編者によれば、これらが「偽善」の衣をまとって欧米諸国が「帝国であった過去」と深く結び付いてアフガニスタンやイラクの復興にあたって台頭してきていることが、最近の植民地研究の中で明らかになってきているという。現在という時間は、過ぎ去った筈の過去という時間と絶えず対話しているというのだ。
 かつて、19世紀から20世紀前半にかけて、「帝国」であった欧米諸国は、アジアやアフリカが自力では発展できないことを科学的に立証しながら植民地化を推し進め、自分たちが志向する近代――「ヨーロッパ的近代」――を世界各地に押しつけることを「善」とみなしてきた。同じことは、冷戦体制崩壊後、唯一の超大国となったアメリカについてもいえるだろう。実際、無知ゆえに紛争が頻発する社会に自由と平等と民主主義をもたらすために「善意ある介入」は行われて然るべきであると論じる向きも少なくなかった。第2次世界大戦後、アジアやアフリカに見られた「脱植民地化」は「脱帝国化」と同義ではなかったし、もっといえば「脱植民地化の帝国主義」に基づく「帝国」も存在する。「帝国は善をなす」とする歴史解釈が重大な問題をはらんでいることは、ポストコロニアル研究のなかでつとに指摘されてきたのに、である。(p.5)


このため、「植民地化」とその後の「脱植民地化」という2つの現象についてより正確な歴史分析とそこからの展望が得られれば、僕達は「今」という時代についてよりいっそう理解できるようになり、未来がより鮮明に見通せるようになり、そして、現在の苦境とそこからの脱出を模索するために何らかの示唆が得られるのではないかという。

こう言われると、19世紀から20世紀前半にかけての欧米列強による植民地化と、おそらくその比較対象としての大日本帝国のアジア展開について、僕らはもうちょっと理解を深めた方がいいのかもしれないと思う。帝国主義とか、植民地化とか、脱植民地化とか、そういう言葉のひとつひとつに対しては心理的な抵抗も覚えるものの、僕らが生きている今この時点を表層的に眺めて何がどうだこうだと論じているだけではなく、もっと長い歴史的なパースペクティブを身につけないといけないのかもしれない。単なる歴史上の出来事のひとつひとつを点としてだけ捉えるのではなく、歴史の流れの中で見ること、そして、世界の特定の国や場所だけで捉えるのではなく、複数の土地で起きていることを繋げて考えること、そういうのを試みていくのが大人の勉強なのかもしれない。そんな境地にたどり着くには相当な時間がかかると思うが、そんな読書を今後していけたらと思う。

本書は、国立民族学博物館に所蔵されていた「京セラ文庫英国議会資料」(BPP)の研究利用促進を目的として立ち上げられた共同研究の成果である。BPPというのは、全800万頁にも及ぶ、過去200年ほどの英国の歴史、そして全世界にその有形・無形の支配を広げた英国の「帝国だった過去」を刻み込む、第一級の史料だという。そこには、議会で取り上げられた議題や法案だけではなく、それを議論するために提出された各種資料も収められているそうだ。当時英国が世界中に張り巡らせたネットワークを駆使して集めた諸地域の情報は、政治、経済、市場、文化、慣習、宗教をはじめ、ありとあらゆる分野にまたがっており、読む者を驚愕させるという。(pp.14-15)

本書はそうした膨大な史料に基づき、「20世紀初頭のアフリカと大英帝国」を共通テーマとして、イギリス帝国史とアフリカ史を語ろうとするものである。従って、英国およびアフリカ各国の事例を扱った論文が多く収録されているが、僕が目下最も気になっているケニアが扱われていなかったりして、ゆっくり読み味わっている時間が持てなかったのが残念だった。英国の植民地政策についてはもう少しいろいろな角度から照射する資料を読んでみたいと思うが、その上でもう一度本書に立ち戻った時、今僕がこれぐらいしか見えないと苦戦したものが、もっとすんなりと見えるようになっているかもしれない。その時が楽しみだったりする。

それと、どうせなら大英帝国の対インド植民地政策について描かれた本の方が僕にとっては有用かもしれないと思ったりもした。
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