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『ほのかなひかり』 [森浩美]

ほのかなひかり

ほのかなひかり

  • 作者: 森 浩美
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2010/11
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
大切な家族や仲間が、そっと手を差し伸べてくれる。夫を事故で亡くした綾子は、小学生の息子をひとりで育てながら、傷心の日々を送っていた。寂しく迎えたクリスマスイブの夜、解約せずにいた夫の携帯電話からメールが送られてきて…(『聖夜のメール』より)。バレンタインデーに結婚式を控えた茜だったが、婚約者に対する父親のそっけない態度が気になっていた。しかし、挙式一週間前、父が思わぬ行動に出て…(『想い出バトン』より)。心あたたまる、8つの物語。
今週は、火曜日から娘が小学校の「自然教室」とやらで3泊4日の旅に出ている。5人家族の我が家で、子供が4日間も家を留守にするのは僕にとっては初めての経験で、家族って全員いると我が家もうるさくてたまらないが、1人でも欠けると静かになってしまうものなのだなというのをしみじみと感じている。子供達が大きくなってこれば狭い我が家はますます窮屈になるが、それでも長く家を空けるような機会が増えてくると、余計に寂しさを感じたりもするのだろう。妻と2人、そういうのに徐々に慣れていかないといけないのかなと思いはじめている。

今週も、8編収録の短編集を1日1話のペースで読んだ。朝のお目覚め用の小説で、多くの場合、朝3時30分起床で最初の30分はこれを読むのに充てている感じだ。森作品も読み慣れてきたからかと思うが、「家族」を扱う作品ばかりでは必ずしもない短編集には少しばかり居心地の悪さも感じた。「噛み合わせ」や「褒め屋」はそんな作品で、会社の第一線でバリバリ働いている女性を主人公とした作品は、僕には合わない。同じく、専業主婦を主人公にしている「ワイシャツの裏表」もちょっと違う。完全に「家族」を主題としていない「じゃあまたな」も違うし、一応家族は描いてはいるが、子供達が既に成人して働き始めていたり、結婚して家を出てしまっているような時代を迎えている50代の父親の目線でのお話(「リリーフはいらない」、「トイレットペーパーの芯」)もピンと来ない。

そうして消去法で見ていくと、前半の2作品を除いて後の作品は僕にはあまり印象に残らなかった。

残る2作品も、夫を急に亡くした妻の目線だったり(「聖夜のメール」)、結婚直前の娘から映る父親の姿であったり(「想い出バトン」)だったりと、少なくとも僕にも合う目線で書かれたものではないのだが、それでも物語の終盤に向けてヤマ場があり、スイッチが入ったらきっと泣いちゃう読者もいるだろうと思えるいい作品だった。(それがわかっていてそれでもそうなるというのだから…。)

前半にそういういい作品を並べているから、後半に行けば行くほど感動的な作品が少なくなってくる印象を受けてしまった。

ただ、最後の「トイレットペーパーの芯」は、別の意味で興味深かった。舞台は三鷹駅から徒歩10分のエリアで一戸建ての家に住む男性で、2人の子供は既に結婚して家を出てしまい、妻と2人暮らしが再び始まっている。40年住んだ家にもかなりガタが来ていて、そろそろリフォームをと妻に迫られている。そして、会社勤めも終盤で、関連会社に社長として天下れとの打診を受けているような状況。年齢的には僕より少し上の世代だ。僕は間違っても社長としてどこかに天下るようなチャンスはないと思うが、今三鷹で戸建てに住んであと10年か15年でも経てば、この作品で描かれている主人公の心境がよく理解できるようになるのだろうかとふと考えた。
タグ:森浩美 三鷹
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