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『こちらの事情』 [森浩美]

こちらの事情

こちらの事情

  • 作者: 森 浩美
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2007/04
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
『荷物の順番』―「老人介護施設に預けることにしたから、母を送り届けてほしい」。兄に頼まれ、正文は辛い役目を任される。割り切れず、思い悩む正文に、母は諭すように言う。「正文、人の手はふたつしかないからね。もっと大事なものができれば、先に持ってたものは手放さなきゃならない。世の中は順番なんだから」それでいいんだよと。当日、施設の車寄せに着き、いよいよ万感胸に迫った正文は―自分の中の「いい人」にきっと出会える作品集。
先週末、市立図書館で4冊本をまとめ借りした。うち3冊は専門書。週末からずっと格闘している分厚い専門書が手元にあるため、この3冊のうち1冊にでも手をつけるというところには現在も行けていないが、期限延長してでも読み切るつもりではいる。順番待ちで並んでいるような人もいなさそうだし。

それで専門書ばかりじゃ堅苦しいからというので1冊だけサラッと読める清涼剤の短編小説集を1冊だけ加えた。僕もそんなに小説を読んでいられる状況にあるわけではないので小説の方が過半を占めるとちょっと心苦しい。1冊ぐらいならまあいいかと思うし、短編集はある意味必要だ。僕は最近夜22時就寝で朝3時30分起床という朝型の生活パターンを作ろうとしている。でも朝がスッキリ目が覚めないことが多く、3時30分に起きてもその後二度寝してしまい、5時台になって目覚めて自己嫌悪に陥るということがたまにある。コーヒーもいいけれど、お湯を沸かしてドリップやってる待ち時間のもどかしさってのもある。朝型一発目でブログの記事を書くってのもいいけれど、最近僕は記事を週末に書きためておいて、平日に小出しにするというパターンなので、平日の朝それほど作業することもない。

何でもいいが、起きてすぐに始められる「目覚めの一服」が必要である。ということで、朝20分ほどで読めてしまう短編が幾つか収録されているのがいいなということになるのである。

森浩美の作品にはこの手の、家族を扱った短編が多い。重松清とどうしても比較してしまうが、重松作品も長年読んでいるとある種のパターンを感じてしまっている。森作品は同じ家族を扱っていても、もう少し状況設定の幅の広さを感じる。離婚とか、年少時代の貧困とか、老いた母と娘とか…。本書に関しては主人公が50代と思しき作品が目立つ。子供は成人して家から出て行っていて、逆に故郷に住む親はどんどん小さくなっていく、そんな立場の主人公が多い。(そうでないのもあるけれど。)

また空間の広さも感じる。熊谷(埼玉)だったり勝沼(山梨)だったり軽井沢(長野)とか、「荷物の順番」の舞台は栃木県か群馬県、栃木市あたりをイメージしながら読んだ。しかも、日常生活の場は東京都内であり、その上でそことは違う非日常的な舞台を準備している。ちょっと家族小説にマンネリを感じていたところに、「ああまだこの手があったか!」と気付かされる、そんな作品が森浩美には多い。

そこで本書に収録されている作品について。

おそらく、8編の中で最も心にしみる1編は「荷物の順番」であろう。
それ以外では、「靴ひもの結び方」と「短い通知表」も個人的には良かった。

ただ、その一方で読んでいてざらつくものも感じ始めている。1つは妻の不寛容。「福は内」で登場する妻も、南房総育ちで上州のからっ風や寒さが合わないというので夫の実家に行きたがらないし、「荷物の順番」で登場する妻も、夫が母親を特養ホームに入居させるためにしたお盆の帰省に、付き合わされるのを露骨に嫌がる。世の中それが普通なのだろうか。そうだとしたら、僕の故郷に行くのを苦としないうちの妻などすごく人ができていると見直さざるを得ない。(いやいや、見直さなくてもとてもいい妻だと思うけれど…)

もう1つは、主人公の年少時代の回想シーンの描かれ方。自分の性格がこうなったのは年少時代にこんな出来事があったからだというので描かれるのだが、それがかなり露骨、というか、要はとても貧しくてズック靴を買ってもらえなかったとか、そのせいでいじめられたとか、そんな話が時々出てくる。過去の出来事や境遇が現在の状況を形作っているというのを言うためにはどうしても必要なのだと思うが、そこで貧困とか手のつけられない不良とかを扱われるのは読んでいてつらさも多少感じた。

まあ人間誰でも多かれ少なかれ何らかの事情はあるもので、きれいごとだけで語れないところはあるのだろうけれど、読みながら人生を普通に生きていくのもけっこう大変なのだと感じました。
タグ:森浩美
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shopno

一般に、夫は自分の実家より妻の実家に行きたがるものですかね?
そうでないとしたら、お互い様な気もします。
by shopno (2011-05-26 15:03) 

Sanchai

shopnoさん、お久しぶりです。コメントありがとうございます。納得いかない書き方をしてしまったかもしれませんが、そこはよろしければ本書を読んだ上でご判断下さい。
by Sanchai (2011-05-27 06:03) 

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