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『アジアの人口』 [読書日記]

このところ久しぶりにアジアの人口高齢化に関する文献をたて続けに紹介している。本来ならばこれだけの文献を紹介しておきながら、今日になっていきなり人口入門書を読むというのもなんだかなという気がするが、まあ学んだところもあったので、ご紹介はしたいと思う。

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アジアの人口―グローバル化の波の中で (アジアを見る眼)

  • 作者: 早瀬 保子
  • 出版社/メーカー: アジア経済研究所
  • 発売日: 2004/04
  • メディア: 新書
内容(「MARC」データベースより)
20世紀後半および21世紀アジアの人口問題を中心として、先進国、途上国の人口問題についても概説。51カ国・地域に及ぶアジアの中から、可能な限り多数の国の状況をまとめる。
本書は、アジア諸国の人口問題の多様性、それを引き起こす種々の要因や背景等が、用語の解説や人口分析の基礎的方法、最新情報から作成された豊富な図表などとともに、一般読者が利用しやすいように編集したものである。そういう意味では、本書を読む切り口としては、①どういう枠組みで人口問題を描いているか(目次構成)と、②分析に使っているデータはどこが出所なのか、③分析に使えるツールが何であるか、といった点が考えられる。

先ずは目次構成をご紹介しておきたい。

第1章 アジア諸国の人口変動
 1.世界とアジアの人口増加
 2.アジアの地域別人口増加
 3.国別人口動向

第2章 出生率低下とその要因
 1.出生率の推移
 2.出生の年齢パターン
 3.平均結婚年齢の国際比較
 4.避妊実行率の国際比較
 5.居住地、教育水準による出生力格差

第3章 死亡率低下とその要因
 1.死亡率の推移
 2.平均寿命と寿命の男女格差
 3.男女年齢別死亡率パターン
 4.死因構造の変化
 5.HIV/エイズと新感染症
 6.死亡率低下とその要因

第4章 人口構造の変化と高齢化
 1.男女別人口構成
 2.年齢別人口構造
 3.人口変動と高齢化
 (1)高齢化の指標と高齢化の状況
 (2)人口高齢化の要因と高齢化の速度
 4.高齢者の社会経済問題と政府の対策
 5.中国の一人っ子政策と高齢化問題

第5章 教育水準と教育制度
 1.アジアにおける教育の発展と教育制度
 2.識字率と就学率の男女格差
 3.教育の人口再生産行動への影響

第6章 労働力と就業構造
 1.経済活動人口の調査方式
 2.経済活動人口の増加と高失業率
 3.産業構造の変化と労働力率
 4.就業構造の変化と従業上の地位
 5.児童労働

第7章 都市化と国内人口移動
 1.都市化の動向
 2.都市化と人口移動
 3.都市問題

第8章 国際労働移動の新潮流
 1.アジア諸国の国際人口移動
 2.移動労働者の出身国と移動先の状況
 3.非正規労働者の増大
 4.アジア主要国の入国管理政策

第9章 アジアの人口政策
 1.人口問題をめぐる世界の動き
 2.国連調査からみられる各国の人口政策の変化
 3.アジア諸国の人口政策

次にデータの出所であるが、僕がもっぱら関心を寄せているのはインドの人口統計であるので、インド関連データの出所についてここで紹介しておく。意外と日本にいても入手可能なものが多い。
- United Nations [2003], World Population Prospects, The 2002 Revision
- The World Bank [2000], World Development Indicators 2000
- IIPS [1995], National Family Health Survey India 1992-93, Bombay
- United Nations [2002], World Urbanization Prospects, The 2001 Revision
- インド人口センサス

そして分析ツールとしてちょっと興味が湧いたのは「社会増加指数」(p.199)である。都市人口増加に与える社会増加の影響は、都市人口の社会増加率を自然増加率で除した「社会増加指数」により観察することができるが、途上国では都市、農村別の自然増加率や社会増加率の統計が利用できない国が多いので、ここでは全国と都市の人口増加率から「社会増加指数」を推計する方法を紹介している。全国の人口増加率は国際人口移動がない封鎖人口の場合は自然増加率と等しく、都市の自然増加率を全国の自然増加率と等しいと仮定して、次の式によって計算できるという。
社会増加指数=(都市人口増加率-全国人口増加率)÷全国人口増加率
この指数が1を超える場合は、都市人口増加は社会増加、つまり、移動による影響が大きく、逆に1未満の場合は、自然増加の影響が大きいことを示す。p.198には、世界とアジアの地域別社会増加指数の推移を示した表が掲載されているが、これによると、1975~2000年の期間では、都市の人口増加が移動による影響が大きい地域は東アジアと東南アジアのみで、他の地域は、自然増加による影響が大きいのがわかる。

1つ嬉しかったのは、僕が街の国際交流協会の活動を通じてお世話になった故・新津晃一先生の著書『現代アジアのスラム』(明石書店、1989年)が参考文献に掲載されていたことだ。アジアでは1960年代に人口爆発を経験したが、70年代以降、農村から押し出された過剰労働力が都市へ大量に流入し、就業機会がないままに都市周辺の鉄道や陸橋の下などを不法占拠し、スクウォッターと言われる無規制な集落を形成したという。その結果都市に大規模な貧困人口が堆積し、彼らは安定した職業に就業することができず、露天商、雑役、土木労働など不安定で雑業的就業部門、すなわちインフォーマル・セクターで就業した。彼らの生活環境は劣悪で、上水道、下水道の施設が未整備で、その不衛生な環境から健康への悪影響も危惧されている。昨日ご紹介したブルーム教授の論文でも書かれていた都市化と健康の問題とも通じる指摘である。

入門書なので各テーマについてそれほど深い分析があるわけではないが、もし自分でアジアの人口問題について語って欲しいと言われたら、こういう本の構成を参考にしつつ、個別のテーマに少しばかりハイライトして、発表案を作り上げることになるだろう。


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