SSブログ

竹は木なのか草なのか [インド]

振り返ってみると、先週1週間は読書日記ばかりを書いていたことに気付いた。積読在庫一掃プロジェクト推進中であることを考えれば当然の成り行きだが、時々息抜きも必要かと思うので、最近読んだ雑誌記事からインドのお話をご紹介するというのもやってみたいと思う。

DTE2011-4-16.jpgSunita Narain, "The big idea for change: bamboo as grass "
Down To Earth, April 16-30, 2011
http://www.downtoearth.org.in/content/big-idea-change-bamboo-grass
Ashish Kothari, "Freeing bamboo from the state"
Down To Earth, April 16-30, 2011
http://www.downtoearth.org.in/content/freeing-bamboo-state

今年2月にデリー在住の知人が送ってくれた新聞切り抜きの中に「竹(bamboo)」という文字が躍っているものが数点あった。他の記事の紹介を優先していて書きそびれたのだが、インドでは竹が「木材」と分類されていることで様々な弊害が表面化しているという内容だった。

この問題について最近、1つの進展があった。ジェイラム・ラメッシュ環境森林相が3月21日、各州の首相宛で書簡を発出し、その中で、竹を木材(timber)ではなく副次林産物(Minor Forest Produce、MFP)として位置付け、森林権法(Forest Rights Act)の適用対象として、その利用と販売、資源管理をコミュニティの手に委ねることが明言された。

インドに生育する竹は約130種類あり、竹林面積は900万ヘクタールにも及ぶ。特に中部山間地域や北東州に多いという。森林地帯に住む何百万もの世帯は、竹を家屋の建築資材や家庭用または農業機具、手工芸品等に用い、それによって雇用機会も得ている。その利用法は1,500種類にも及び、「緑色の金(green gold)」と呼ばれている。竹が生態系を保全して野性生物に棲み処や食物を提供しており、しかも気候変動にも有効だというのが冒頭のAFP記事でも紹介されている。

元々、竹は1927年に制定されたインド森林法(Indian Forest Act 1927)の適用対象として、木材と定義されていた。それはすなわち、竹の資源管理については政府森林局が独占的にこれを行ない、自分の家の裏庭に竹を植えているような住民ですら、竹を伐ったり筍を収穫したりするには森林局の許可を得る必要があったという。多くの州では、竹を伐採するには「transit pass」と呼ばれる許可を得なければならなかった。この許可を得るためには、竹の所有者は、収入記録をとり、これを徴税官か森林局に提出せねばならない。この手続きには時として10ヵ所もの異なる政府機関・部署を訪ねる必要があったという。これでは木であっても草であってもそれを所得創出活動に活用しようというインセンティブは働かず、誰もこれを植えない。環境的には損失となる。

これに対し、多くの識者が竹は草(grass)として扱われるべきだとの主張を展開してきた。竹がMFPと定義され、2006年制定の森林権法に基づいてコミュニティに管理権限が委ねられれば、村の住民ないしはコミュニティが所有、或いは共同管理しているような竹林については、村落議会(gram sabha)がtransit passを発給する権限を持つことになる。

竹林の管理がコミュニティの手に委ねられるようになれば、竹林の過小供給状態は解消されることが期待される。そして、小規模の土地所有者やコミュニティ林の管理権を有する村人は竹材の生産量が増えることでその売上代金を直接手にすることができるようになる。本日ご紹介した編集長による巻頭言と特集記事は、いずれもこのラメッシュ大臣の書簡に見られる新解釈が先住民が多い森林住民に恩恵をもたらすものだと歓迎している。

―――以上の内容である。

インドに駐在していた頃、唯一竹林を見たのはオリッサ州の山の中、先住民の住む村に向かう途中の道すがらであった。僕が訪れた村の生活を見ていると、こんなところで村落議会がちゃんと機能しているのかどうかも首を傾げざるを得ないのだが、集落単位での共同作業の現場は見たことがあるので、森林資源を共同管理できる最低限のキャパシティは彼らは有しているのかなという気はした。

ついでに言えば、インドの竹の性質はよくわからないが、竹刀生産を行なう業者でも育成できたら、オリッサやアンドラプラデシュ州北東部の山間地の住民に委託して竹刀用の竹の生産をやってもらったら、ハイデラバードあたりで細々と「なんちゃって剣道」を展開している輩にも朗報になるに違いない。というか、こういうニュースからそういうビジネスチャンスを見出して欲しいとつとに願っている。
nice!(4)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 4

コメント 2

plant

言っても仕方のないことですが、植物学の常識として、竹は草(草本)ですよ。
専門的に言うと、維管束の構造やらリグニンを含まないとか・・・。
まあ、そもそもそういう硬直化した法律そのものが問題なのでしょう。

一方、竹は下手に植えない方が良い、という意味もあります。
あれがはびこり始めると始末に負えなくなって、本来の自然を破壊しかねません。
巨大な雑草、とも言えるわけです。
by plant (2011-05-03 16:20) 

Sanchai

plantさん、コメント&niceありがとうございます。
確かに、私に言われても仕方のないことですね。
いろいろな経緯があってインドではそうなっていたのだと思います。
竹に関する理解は私もplantさんと同意見です。
なんでCOP16で竹の効用が論じられたのか、理解に苦しむところです。
by Sanchai (2011-05-03 22:33) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0