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『エコ論争の真贋』 [読書日記]

エコ論争の真贋 (新潮新書)

エコ論争の真贋 (新潮新書)

  • 作者: 藤倉 良
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/02
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
エコを巡る論争は百家争鳴です。「温暖化は人間のせいではない」「そもそも地球は温暖化していない」という懐疑論は後を絶ちません。「リサイクルなど無意味」「レジ袋はどんどん使い捨てろ」など、エコ活動を嘲笑する論調も目立ちます。生物多様性の問題でも、先進国と発展途上国の言い分は相容れぬまま…。現在進行形の様々な論争を、科学者のフェアな視点から紹介・解説。
人から借りた本。次の方に回覧で回さなければいけないため、連休前にケリをつけたいと考え、週末にかなり読み進めた。僕の読書選択の傾向からはあまり自分からは読まなさそうな本であることは間違いない。特に、ゴミと地球温暖化の部分はそうだ。無関心というわけではなく、取り組むべきことは普通に取り組んでいるけれど、正直言ってゴミの分別は結構面倒だと思っている自分がここにいる。勿論、ズルをしているわけではない。

本書は、通説と言われていることをバッサリ斬っているわけではなく、肯定するところは肯定し、否定するところは反証している先行研究の成果を持ち出してやんわりと否定している。エコ急進派にとっても、反エコ派にとっても、反論はされていてもわりと抵抗感なく受け容れられそうなソフトな書きぶりの本である。既存研究を幾つか持ち出してきて是々非々で論点の整理をしている点では好感が持てるが、どちらかのサイドに極端に傾いた書きぶりではないので、ロジカルではあるけれどもモヤモヤ感を感じながらの読書にはなるだろうと思う。

ただ、次の1点においては著者の主張は非常にはっきりしている。それは、本気でエコをやったら高くつくということを我々は覚悟すべきだということだ。
 とうしたら環境を守れるか。ゴミ、地球温暖化、生物多様性について、それぞれみました。いずれも難しい問題ですが、最後はお金の話に行きつきます。環境問題はきれいごととして語られがちですが、突き詰めて考えればカネの問題だということです。
 地球環境がかつてなく悪化しつつある最大の原因は、人間の欲望、すなわち大量消費を促す経済活動にあります。そして大量に消費できるのは、安いからです。安いから必要以上に買いすぎる、必要以上に買うから使いきれない、使いきれないほど持っているのに次がほしくなる。売れるから大量に生産され、大量に廃棄される―――。(中略)
 ものを買うときには本当に必要かどうか考え、買ったら最後まで大切に使うということが、「環境にやさしい」生活の基本です。ただし、ものを大切に使うかどうかは、心の問題であると同時に、多分に価格の問題です。特別な思いがこもったものであれば、経済価値がゼロでも人は大切に使います。けれども、安値で衝動買いしたものはどうでしょうか。(pp.203-205)
これはあとがきの冒頭に書かれていることであるが、本書で扱っているゴミ問題、地球温暖化、生物多様性を横串で刺すとそんな主張が見えてくる。環境に対する負荷がかかり過ぎているのが、その環境を消費することにかかる価格が安過ぎるからだというのは、とてもしっくり理解できる主張だと思う。

環境問題の入門書としてはお薦めの1冊だと思います。


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Panda

私の恩師の著書を紹介していただいてありがとうございます!わりと過激な先生だと思っていましたので、モヤモヤ感の残る本を書かれるとは意外です。早速読んでみたいと思います。
by Panda (2011-05-09 13:24) 

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