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『日本のシルクロード』 [シルク・コットン]

この記事は、予約投稿機能を使って掲載しました。
日本人の1人として、計画停電と節電には積極的に協力していきたいと思います。

本日ご紹介する本は、実は東日本大震災の直前から読みはじめようとしていたものです。ただ、新書なのに、読了したのは3月15日と時間だけはかかってしまいました。テレビやラジオの報道に耳を傾け、何かあれば即時対応という状況で過ごしていると、とても読書に集中することもできず、かえって読むことに対する罪悪感も覚えてしまう始末。とはいえ、職場の方で在宅勤務の方針が明確になった14、15日は、参考文献を読むのも仕事と思い、少しだけ復活してきた集中力を頼りに、なんとか読み切りました。

日本のシルクロード―富岡製糸場と絹産業遺産群 (中公新書ラクレ)

日本のシルクロード―富岡製糸場と絹産業遺産群 (中公新書ラクレ)

  • 作者: 佐滝 剛弘
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2007/10
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
日本にも、本家に負けない「シルクロード」が存在する。斬新なデザインの富岡製糸場、機能美溢れる養蚕農家群など、見るべき遺産は数限りない。「絹の道」を歩くための最適ガイドブック。
著者はNHKの人らしい。世界遺産登録の推進運動には関わられたことがあるとはいえ、蚕糸業については本人も認めているように素人であり、そのおかげで、素人にもわかるように養蚕、製糸の工程について解説をしてくれている。一見するとわかりづらい蚕種製造についても、わかりやすく書かれていると思う。

日本の養蚕について考えるにあたり、そもそも日本で今生糸生産がどれくらい行なわれているのか、養蚕農家が何世帯ぐらい現存しているのか、どこで今も行なわれているのかといったことは基本中の基本だと自分でもわかっていながら、実はあまりよく知らなかった。それくらいの包括的な情報がどこかにアクセスしたら手に入らないかなと虫のいいことを期待して探してみたりもしたが、なかなかないということを痛感させられた。理由は簡単である。衰退の一途を辿っているような産業について、1冊に情報をまとめた本を出したところでまず売れないからだ。

本書がうまいところは、そもそも現存する日本の蚕糸業とその歴史について全体像を示す内容になっていながら、読者受けする「世界遺産」という衣をまとっている点である。今は暫定リスト入りしているに過ぎない富岡製糸場が本登録されるようなことになれば、本書はいずれまた売れる時期が来ると思う。1粒で二度オイシイという内容だ。

ただですね、本書は「富岡」をPRしたいという意欲が前面に出過ぎていると感じられる記述が非常に目立ち、時々うざいと感じるところがあった。全ての流れは富岡に繋がり、そこから下流に流れ出している、歴史も全ての養蚕の歴史が富岡に繋がり、そこから近代日本の国づくりが始まる、全てが富岡中心だという描き方はどうなんだろうかという気がする。実際そうなのかもしれないが、それは本の構成の工夫を通じて読者にそう気付かせればいいだけの話で、書き手の側から「でしょ?でしょ?」と押しつけるようなものではない。書き手としては、事実を淡々と描けばいいのではないかと思う。

ジャムシェトジー・タタが渋沢栄一の紹介で1893年に富岡製糸場を視察に訪れたなんて記述でもあればラッキー、ジャムシェトジーがバンガロールの実験農場に招聘した日本人技師の名前に言及があればなおよろしと期待しつつ読んだが、残念ながらそういった記述は出てこなかった。残念。

*富岡製糸場世界遺産推進ホームページは下記URLからどうぞ!
 http://www2.city.tomioka.lg.jp/worldheritage/index.shtml

*富岡製糸場を愛する会ホームページ「世界遺産へのみちのり」は下記URLからどうぞ!
 http://www.silkey.e-arc.jp/

“世界遺産”につめ跡 富岡製糸場 ガラス割れ散乱
2011年3月13日、東京新聞群馬県版
 世界遺産の暫定リストに載る富岡市の富岡製糸場では、国重要文化財の「繰糸場」でガラスが6枚割れ、内部に散乱した。
 繰糸場は創業時の1872(明治5)年に建設。関東大震災などで過去に2回ガラスが割れた記録が残る。修復には文化庁への届け出が必要だが、割れた場所は見学コース外で、安全に支障はない。
 市世界遺産推進課の長谷川直純課長補佐は「製糸場を象徴する繭倉庫のレンガは異常なく、良かった」とホッとした表情だった。
 一方、高崎市の高崎城跡に建つ県重文の乾櫓(やぐら)では、2階部分の狭間(さま)(窓)の近くに長さ数十センチずつのひびが10カ所程度入った。
 櫓は18世紀の前半に建ち、隣接する東門とともに県内で唯一現存する城郭建築という。

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