5.いつも頼りになる人 [S.D.Gokhale]

ある時、ある左翼グループの政治活動家が1人逮捕され、私が所長補佐を務めていた物乞い収容施設に収監されるという出来事があった。この男は自分が間違って逮捕された(確かにその通りだったのだが)と主張し、猛烈な抗議をしてきた。しかし、同法の規定では私達に彼を釈放する権限は与えられていなかった。彼は裁判所の決定まで待たなければならなかった。しかし、彼が自分の政治的コネクションがエスタブリッシュメント層に対して多くの問題を起こすだろうと威嚇して起こす騒動は、私達の大きな頭痛の種となった。
私はマハラシュトラ州社会福祉局のガテ局長にどうしたらよいかと相談した。ガテ局長は彼を解放すればいいと提案してくれた。
私は局長に、物乞い法の規定では私達はそうする権限はないがそれでも解放していいのかと念を押した。
「その男が1人施設から逃げ出したからといってどうなるものか?」とガテ局長は問うた。
局長の眼の輝きを見ながら、私は彼には何らかの解決策が頭の中にあるのだろうと思った。「局長、では私達は警察に報告書を提出し、私達が関知するところとしてはそれで終わりとします。」
「わかった。」
すぐにガテ局長は社会福祉局のスタッフに対し、この反体制政治活動家を中庭に連れて来るよう指示した。そこで活動家と会って話がしたいという。
物乞い収容施設の規則の1つは、もし施設長でもある局長が中庭にいる時には局長の中庭へのアクセスを容易にするために正門を開けておかなければならないというものだった。このため、ガテ局長とその政治活動家が中庭で会った時、正門は広く開け放たれていた。2人が話しながら中庭から正門へと向かっている時、ガテ局長は男の方を振り向き、優しく、しかししっかりとした口調で「出て行きなさい」と告げた。
「出ていけ?どういう意味だ?」――当惑した男はそう尋ねた。
なぞめいた微笑みをたたえた局長は同じセリフを繰り返した。「出て行きなさい。正門から歩いて行きなさい。それがお互いにとってよいことなのだ。」
すぐに男は事情を察した。そして急いで庭を出て行った。
実務家であるガテ局長はすぐに私に告げた。「ゴカレ先生、警察への申し立てには、局長と話している時、男は我々に紙きれを手渡し、防止措置が取られるよりも先に逃げて行ってしまったのだと書きなさい。何か質問を受けた場合は、私に尋ねるよう警察に言いなさい。」
いつものように、頼りになるガテ局長は、鋭い知性で、私達の直面する問題に解決策を見出してくれたのだった。
2011-02-19 15:00
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