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4.僕は人間に見えますか? [S.D.Gokhale]

Gokhale1.jpg 私が監督官を務めていた物乞い収容施設にナラハリ君がやって来た頃は、彼は17歳の若者だった。鉄道事故で両足を失い、その時は膝上の基部がむき出しになっていた。

 私が当直をしていたある日、私は彼が窓際にたたずんでいるのに気付いた。涙が頬をつたっていた。「ナラハリ君、どうしたの?」私は彼の前にしゃがみ込み、両手を彼の肩の添えて尋ねてみた。

 「先生…」彼は元気なく答えた。「窓の外で道を走っている車は生きているわけではないけれど、車輪を下にしてとても速く動くことができます。外に見える小さなスズメたちも、翼を広げて素早く飛べます。でも先生、僕を見て下さい。僕はまだ若いのに、普通の人みたいに歩くことすらできません。」

 私は彼を私の方に向かせた。「ナラハリ君、約束しよう。君はすぐに歩けるようになるよ。プネ(マハラシュトラ州)には人工装具センターがあってね、そこで君の義足を作ろう。だから、泣くのはやめよう。君はすぐに変われるんだからね。」私はすぐにナラハリ君をプネに連れて行く手はずを整えた。

 数ヵ月後、身長5フィートはある背の高い若者が私のオフィスに歩いて入ってきた。明るい笑顔で、彼は「先生、僕が誰かわかりますか?」と尋ねた。

 勿論、私はすぐに気付いていた。それはナラハリ君だったのだ。身長2フィート半だった彼の身の丈は、義足を装着したことで2倍にもなっていた。私は、彼の顔に浮かんでいた新たな自信を垣間見て嬉しくなった。「先生、僕は今なら人間に見えますか?」――彼が突然そう尋ねてきた時、私は驚いた。

 彼の質問に私が驚いたのは、ハンディキャップを持っていることでナラハリ君が自分のことを人間以下だとか不完全な人間だと思い込んでいたことを私が知らないでいたことに気付いたからだ。彼は自分で作り上げた自分のイメージによって、深刻な劣等感を感じていたのだ。だから、新しい義足は単に身体上の補綴であるだけでなく、心理的な補綴でもあった。私のお墨付きを受けて、ナラハリ君は今や、感情的にも心理的にも十分自信を得た1人の人間となった。

 ナラハリ君を巡る私の経験から、私は、ソーシャルワークにおいてはその人の精神面を理解することが極めて重要だということを学んだ。個々人の尊厳を感情面からも心理面からも取り戻すことは、少なくとも身体機能や社会経済面でのリハビリと同じくらい重要なのだ。
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duke

頭が下がりますm(_ _)m
by duke (2011-02-12 13:52) 

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