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世界の高齢化と2020年代の危機 [少子高齢化]

Neil Howe and Richard Jackson
"Global Aging and the Crisis of the 2020s"
Current History, January 2011, pp.20-25
http://csis.org/files/publication/110104_gai_jackson.pdf

米国の研究機関CSISの2人の研究者が、雑誌『Current History』の1月号に、世界的な人口高齢化が世界の安全保障に及ぼすインパクトについて述べた記事を発表した。「世界の高齢化と2020年代に訪れる危機(Global Aging and the Crisis of the 2020s)」と題したこの記事では、これまで数十年にわたって世界の安全保障に大きな役割を果たしてきた大国では人口の多くが高齢者で占められるようになり、経済力を失い、それによって世界の不安定性が今後高まっていくであろうと指摘している。発展途上国の人口構成も、そうした国々を抱える地域の不安定性を高めることに繋がると見られている。記事ではまた、多くの予測に反して、米国は今後数十年にわたり、世界の安全保障にさらに大きな役割を果たしていくだろうと述べている。

著者は先ず多くの先進国が世界の安全保障に役割を果たす能力が低下していくと予想する。「人口規模と経済規模は国の力を示す2つのエンジンを成す。人口が多ければ戦争で従軍し、占領、平和維持活動に従事できる若年成人人口も多くなる。経済規模が大きければ、国防のようなハードパワーや対外援助のようなセミ・ハードパワーに割ける予算も多い。」日本やドイツ、フランス、イタリア、その他の先進諸国の高い高齢化率を勘案すると、世界的人口高齢化は先進世界の地政学的地位を減退させると予想される。

記事はまた、先進国の高齢化はより若い途上国の平和的な台頭と対をなすものとはならないと予想する。高齢化に直面するのは先進国だけではなく、途上国でも同様に高齢化が進むからだ。開発や近代化が進むにつれ、高死亡率・高出生率から低死亡率・低出生率へのシフトが進む。記事では、人口転換がしばしば暴力を伴うものになり、人口がもとで暴力を伴うトラブルが発生しやすい世界のホットスポットがどこか特定を試みている。こうした予測には、中国も含まれる。中国は2030年までに米国より年老いた国になると見られている。こうした予想から、従来我々が依拠してきた、GDPの高成長と社会の安定という現体制の正当性を説明する二本柱が今後弱体化し、中国が社会崩壊に陥るリスクも指摘されている。

ロシアについては、2050年までに総人口で世界第16位にまで後退する。1950年には第4位だったことと比べて、大幅な地位後退である。このことは、ロシアが今後、「核を保有する破綻国家」に転落するか「人口学的運命を受け入れるよりも怒りに燃えて暴れ狂う手負いの熊」に変貌する可能性を示唆するものである。同様なホットスポットは中東やアフリカ、ラテンアメリカでも特定される。

最後に、記事は高齢化の深刻な影響を受けない唯一の大国は米国であるとみている。「米国も高齢化は進む。しかしその程度は小さいだろう。イスラエルやアイスランドを別にすれば、米国は合計特殊出生率が人口置換水準2.1を下回らない唯一の先進国となろう。2030年までに、その中心年齢は、現在の37歳からわずか39歳に上昇するだけで済むだろう。就労年齢人口は、米国人口統計局と国連の予測によれば、2020年代以降も増加する。出生率が高い上に、相当数の移民流入が続くからであり、他の先進国と異なり、米国は今後も今の姿があまり変わらない。」このため、結論として、米国は今世紀中も世界秩序の形成・維持に重要な役割を果たし、米国にとっての最大の課題は、他の先進国が多くの支援を行なう能力を欠くなかで、先進世界をリードしていくことができるのかどうかである。
タグ:高齢化 CSIS
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