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『海賊の掟』 [読書日記]

海賊の掟 (新潮新書)

海賊の掟 (新潮新書)

  • 作者: 山田 吉彦
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/08/17
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
ギリシア神話の昔から、大航海時代のキッド、ドレーク、あるいはカリブの海賊たち、日本でも藤原純友、倭寇、水軍、そして今日のマラッカ海峡に出没する略奪者に至るまで―古今東西、海のあるところ常に存在した海賊。国家や法律などの枠組みから抜け落ちた成らず者集団であったが、一方で必ず独自の掟を設け、驚くほど民主的な共同体を作り上げていた。映画やアニメの世界などでは窺えぬ、本当の“奴ら”の実態。
著者の『海のテロリズム』がかなり面白かったので続けて読んでみた。『海賊の掟』の方は昨年TBSラジオの番組で紹介されていたこともあり、かなり期待して本書も読み始めた。が、現代の海賊事情、特にマラッカ海峡域に出没する海賊の実態に関する記述は、『海のテロリズム』の方が数段に良かった気がする。海上の安全といった国境をまたぐ課題、ないしは非伝統的安全保障に少しでも興味のある人には、発刊年次は古くても『海のテロリズム』の方を読むことをお薦めする。

逆に、世界と日本の海賊の歴史は、そういうのに関心がある人には面白いと思う。僕は日本史が好きだから、藤原純友の乱とか、元寇の頃の松浦党とか、南北朝の頃の村上・河野水軍とか、織田信長家臣の九鬼嘉隆率いる九鬼水軍とか、それなりに予備知識もあって面白く読むことはできた。でも、なんとなく今の僕のニーズから言って、寄り道をした感が拭えず、読後感はイマイチだった。

日本財団(旧・日本船舶振興会)の広報誌かと見間違えるような『海のテロリズム』とは違うが、確かにマラッカ海域における海賊襲撃事件は件数が減ってきているかもしれないが、その東に広がる南シナ海では中国のプレゼンスだけではなく、中国に拠点を置くと見られるシンジケート型海賊の活動が顕著に増えてきている現状を考えると、あまり海賊史のような記述にスペースを取られるよりも、むしろ海の安全保障への日本の関与の必要性について、NGOの立場からもっと声高に主張を展開しても良かったのではないかと僕には思える。


余談ながら、先週末に参加した剣道の稽古で、右わきの下の防具で覆われてない部位に思い切りドウを喰らい、暫く息ができなくなった。その時は呼吸が楽になってすぐに稽古に復帰したが、週が明けて以降胸の痛みが治まらずにいる。どうやらまた肋骨を折ったかひびでも入れたかもしれない。骨折なら自然治癒を待つしか方法がない。
日本船、海賊被害が拡大 乗っ取られ「海賊船」に仕立てられるケースも
2011年1月17日 産経新聞
 日本関係船舶が昨年、海賊の被害にあったケースは過去10年間で2番目に多い計15件にのぼったことが16日、国土交通省への取材で分かった。船内に積んでいる備品や金品が略奪されるケースのほか、船ごと奪われて海賊船として「再利用」される事件も発生。日本人が誘拐される事態は起きていないが、関係当局は「いつ被害にあってもおかしくない状況」と注意を呼びかけている。
 国交省によると、日本船籍や日本の船会社が運航する船舶の海賊被害は、統計を取り始めた平成11年の39件をピークに年々減少傾向にあったが、昨年中は前年比10件増の15件で、過去10年間では14年の16件に次ぐ多さとなった。
 発生場所は、マレー半島西側のマラッカ海峡付近を含む東南アジア周辺が10件、内戦で事実上の無政府状態が続くアフリカ東部・ソマリアの沖合やアデン湾、インド洋沖が5件となっている。
 ただ、両地域では手口が全く異なる。東南アジアの海賊は夜間に停泊している船に忍び込んで刃物などで脅し、現金や船のケーブルなどの備品を奪うことが多いが、近年増加しているアデン湾などに出没するソマリアの海賊はマシンガンなどの重火器で攻撃し、大型船を船ごと乗っ取るなど、より過激だ。
 外務省の担当者は「乗っ取った船の乗組員を人質にとり、日本円で億単位の身代金を請求する。東南アジアが窃盗、強盗ならソマリアは誘拐だ」と指摘する。
 国際海事局(IMB)の調査によると、一昨年に全世界で発生した海賊被害は計406件で、うちソマリア沖・アデン湾での被害が半数以上。対策として各国は軍艦を派遣し、アデン湾を航行する商船の護衛に当てており、日本の海上自衛隊も参加している。
 ただ、ソマリアの海賊は最近、アデン湾に加え、インド洋沖やケニア沖まで行動範囲を拡大している。
 昨年10月には日之出郵船(東京)が運航する貨物船がケニアのモンバサ沖合で海賊に乗っ取られる事件が発生。貨物船はその後、他の船舶への襲撃に使用された。乗組員のフィリピン人20人は襲撃時に人質として乗せられていたという。
 外務省は船会社に対し、不審船を見つけたら止まらずにジグザグ航行で振り切るようにするほか、甲板の手すりに鉄条網を巻き付けるなど、対策の徹底を呼びかけている。


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コメント 2

toshi

コメントありがとうございました。
ラジャマンドリーは、一泊しかしていませんので
町の実情は、わかりません。
記事で公開した遺跡以外、観光スポットもなく
観光地から観光地に移動するために立ち寄ったのです。
by toshi (2011-01-14 09:42) 

冬嫌い

この本私も読みました。2年位前だったと思います。
確かに海賊の歴史みたい記述が多く、読んでいても少し退屈でした。
私は伊賀の出なので、実は海のことを知らなかったです。

マラッカ海峡の海賊の話では、アチェでの地震と津波で多くの方がなく
なりましたが、皮肉にも地震の後に海賊・海上強盗の事案数がほとんど
ゼロになったのも事実です。

ちなみに海賊と海上強盗の定義なんかもあり、インドネシアでは公式には
海賊はいないということになっています。マラッカよりも最近は南シナ海のほうが事件は起こっています。また、中国との関係とか近隣国道視での係争海域の問題とか2年半ジャカルタにいて、ありました。


by 冬嫌い (2011-01-15 00:02) 

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