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『面白いほどよくわかる浄土真宗』 [読書日記]

面白いほどよくわかる浄土真宗―宗祖・親鸞聖人の教え、真宗各派の歴史と仏事作法がよくわかる (学校で教えない教科書)

面白いほどよくわかる浄土真宗―宗祖・親鸞聖人の教え、真宗各派の歴史と仏事作法がよくわかる (学校で教えない教科書)

  • 作者:菊村紀彦監修 田中治郎著
  • 出版社/メーカー: 日本文芸社
  • 発売日: 2008/09
  • メディア: 単行本

正月休みに読んでいた浄土真宗の本紹介の第二弾である。取りあえず読み終わったけれど、後で必要に応じて何度か読み直したりしたい箇所が幾つかあった。真宗各派がどのようにして興ってきたのか(そもそも浄土真宗に本願寺派と大谷派以外の宗派があったということすら僕は知らなかった)、なぜ本願寺は西と東に分かれたのか、そもそも織田信長の頃には摂津の石山にあった本願寺がいつ京都市内に建立されたのか、仏壇の荘厳にある各仏具の名称は何と呼ぶのか、浄土宗と浄土真宗はどう違うのか―――漠然と疑問に思っていたことの幾つかについて易しい解説をしてくれている1冊である。また、親鸞が浄土思想を大成するにあたってその教えを踏まえたという七高僧がそれぞれどのような功績をあげているのかについても解説があり、僕のような入門者にはとてもわかりやすいと思った。「正信念仏偈」を読む機会がまたあればその時の参考にしたいと思う。

ところで、年明けからの1週間、東京新聞(中日新聞)1面で、「座標変換」という特集記事が掲載されていた。経済成長とは別のところで豊かさや幸せを見出している人、それを説いている人等を紹介しているもので、結構面白くて毎日読んでいた。その第3回(1月5日)は「心のコーチ」と題し、迷う会社員にエールを送る2人の僧侶が紹介されている。

1人は「ヘッドハンター」が本業という僧侶。2000年に大手銀行を退職後に今の職業に就き、以後通信教育で浄土真宗の僧侶になったという人。人の心理に興味があり、得度も「自分探し」が目的だったらしい。還暦を迎えたら仏道に専念し、お寺を中核にしてサラリーマンが駆け込める「心の道場」を開きたいとしている。

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もう1人は超宗派仏教徒によるインターネット寺院「彼岸寺」の発起人の1人である浄土真宗の僧侶。国民が仏教に親しめるようにと宗派を超えて集まった有志が作るウェブサイトである。この方の場合、籍を置く東京・神谷町の寺の境内をオープンテラスとして開放し、昼食後のサラリーマンが気楽に僧侶と親交できるよう工夫をされている。

今の日本社会が抱える様々な問題について、仏教界は有効な解決の道を示すことができずにきた。その間に、自由市場経済重視に日本の政治も経済も舵を切ってしまい、その一方で心の安らぎを求める人々に新興宗教が手を伸ばそうとしている。スピリチュアル関連やパワースポット紹介番組がテレビで再三放映されるのもそうした傾向を具体的に示す1つの例だろう。こういう状況下にある日本において、既存の仏教界はその存在意義を問われ、存亡の危機を痛切に感じておられるというのを聞いたことがある。

東京新聞(中日新聞)が年初からこういう特集を組み、さらにその記事の中でも浄土真宗の僧侶を取り上げたのは、年頭から同紙で連載開始された五木寛之『親鸞-激動篇』があるのは間違いない。中日新聞社は名古屋で親鸞展も開催している。そうしたことがあったとは思うが、国民ひとりひとりが豊かさや幸せを感じられるには、やはり個人の救いを説いた浄土真宗が果たすべき役割が大きいのではないかと思う。

とは言っても、こうした危機感や使命感が仏教界でどの程度共有されているのかも正直よくわからない。僕の自宅や職場の近くにも真宗大谷派のお寺はないわけではないのだが、門前を通りがかっても、気軽に門をくぐれる雰囲気は全くといってないし、ましてやウェブサイトなど作っているお寺は少ない。記事で紹介されているような取組みは、仏教界の中でもまだまだ少数派なのだろう。

本の紹介なのか新聞記事の紹介なのかわからなくなってしまったが、そもそも僕が急に仏教をブログで取り上げるようになったのは、1つはインド駐在経験があり、もう1つは父がやっていることを少しでも知っておきたいと思ったからであり、あまり自分自身の心の安らぎとかは現時点で考えていないけれど、書店に仏教関連書籍が増えたと感じるのも、新聞で紹介されたような取組みが目立つようになってきているのも、その背景に何があるのかはわかる気がする。

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コメント 2

yukikaze

葬式仏教と化して、最近では職業僧侶が増えました。宗教家といえる人はほんの少しですね。これでは仏教が廃れていくのも致し方ないと思っています。新たな動きがどのように結実するのか気にはなりますが。
by yukikaze (2011-01-11 18:01) 

Sanchai

☆yukikazeさん☆
コメント&nice!ありがとうございました。ブログで紹介した記事を読んだ印象をあえて申し上げると、僧侶が職業人として他人にコーチング的なことをやったり、在家信者への説教で政治や社会の批判をしたりするのも、私には違和感があります。信心みたいなものともちょっと違いますが、朝の澄んだ空気の中でお経をあげたり、お寺の御堂の畳に正座してお経を上げたりするのは、気持ちを落ち着けるのにはとてもいいと感じました。
by Sanchai (2011-01-11 19:43) 

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