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『変革期の地域産業』 [読書日記]

変革期の地域産業―モノづくり・まちおこしの「現場」から時代を読む

変革期の地域産業―モノづくり・まちおこしの「現場」から時代を読む

  • 作者: 関 満博
  • 出版社/メーカー: 有斐閣
  • 発売日: 2006/09
  • メディア: 単行本
内容(「MARC」データベースより)
地域を愛する人の必死の取り組みが、「希望」と「勇気」を生み、大きなうねりを創り出している-。日本と中国におけるそのたくさんの実例を、「歩く経営学者」が現場からレポート。地域産業の未来を展望する。
本書はまちおこしに全国各地で携わってきた著者の関わった案件の棚卸しのような本で、第5章の「東京都三鷹市―SOHOシティみたかの挑戦」だけが読みたくて図書館で借りたものである。SOHOシティみたかは2003年に転入してきた僕にとっては既にそこにあった存在であり、むしろどのような経緯でそれが形成されてきたのかの方に興味があった。本章に登場する女性の方のお話は数年前に職場の勉強会に講師でいらした際にうかがった記憶があるが、その時におっしゃっていた問題意識が本書の中でも明確に述べられている。

 当時(1990年頃)、三鷹市の統計をみると、人口はほぼ16万人で横ばいだが(最近はやや増加している)、人口の移動も非常に少ないことが注目された。約70%の人は動かないのである。そして、この層が高額所得のサラリーマン所帯であり、担税能力の高いことがわかった。だが、移動がないということは、年々平均年齢の上昇を促し、近い将来には大半が年金生活者になることが予想された。そうした事態が到来するならば、現在レベルの福祉を提供することも難しい。1990年当時、すでに、たいへんな事態の到来が予見されたのである。
 これに対し、私は「今後、必要となる支出は予想できる。自立の時代には、その支出に見なった収入を地域が独自に確保していかなくてはならない。それが『地域経営』」と語り続けたのである。経済的な自立のためには地域が「産業」を育てなくてはならない。高額所得のサラリーマンによる住宅都市を形成してできた三鷹市は、ここで初めて「産業政策」の必要性に気づく。(p.50)

SOHOシティみたかに加えて、若干ながらシニアSOHO普及サロン三鷹についても言及がある。地域に帰還してきたシニアたちが、自分達のキャリアを活かす場として集結し、SOHO支援などに深く関わっている。「高齢社会を迎える現在、三鷹は日本ばかりではなく、世界の最先端を走って」(p.54)いると著者は高く評価している三鷹の取組みだ。

10日(金)、都内の某大学で行なわれたシンポジウムで、僕は自分のインドでの活動について発表させていただく貴重な機会をいただいたのだが、その後行なわれたレセプションで、その大学に昨年博士論文を提出されたという方とお話しさせていただく機会があった。この方はフィリピンのまちづくりについて博論は書かれ、某学会から年間優秀論文賞を受けられた方なのだけれど、その一方でご自身が住んでおられる群馬県の某自治体の住民活動にも直接関わって地域振興に取り組んでおられるとのことだった。話がお上手でとても魅力的な方であった。だから、本書の中で、著者が「近年、「地域産業振興」の「現場」で若い女性が目立つものになってきた。全体的な傾向として、年齢が若くなるほど、男性よりも女性の方がエネルギーがあり、志も高い」(p.54)というのがとてもよくわかる。(決して20代のお若い方ではないけど。)

ただ、その方がこうも仰っていた。自分が地域振興に取り組んでいるこの自治体は、私鉄の駅を誘致し、マンションが建ち、転入が増えて人口が6000人ぐらい増えた。そりゃ人が増えて地域の活性化にも繋がったことでしょうと僕が申し上げたところ、こうして外から転入してきた人は前から住んでおられる地域の人々との交流には消極的で、ほっといて欲しいという感じなのだとこぼしておられた。どこの地域でも昔から住んでいて隣り近所をよく知っていて盛り上がっておられる人々の輪の中に、新たに移り住んできた人々を引っ張り込むのは大変なのだと改めて思い知らされた。

「人に行動を起こさせるきっかけというのはどうやって作ったらいいんでしょうね」――その方はいみじくも仰っていた。転入者を地域に引っ張り出すためにいろいろな工夫を考えられている方ではあったが。

本章末で著者が挙げた論点の一つがこの点でもある。エネルギーにあふれるまちづくりの人材は初期は多く出てくる。しかし、その後に続く人材を継続して輩出していくことが困難なのが三鷹の課題であり、その群馬の自治体の課題でもある。まちづくりに参加してきた人々のそもそも参加しようと思ったきっかけって何だったのだろうか。
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yukikaze

三鷹・・・。衛星都市ですね。しかも、都内への通勤が便利ということで発展した町。。。小さなむらしかなかったところに多くの人が同時期に移住してきて、同世代が多かったニュータウン・・・それが徐々に高齢化。。。団塊の世代が完全にリタイアすれば、そういう街は税収がガタ落ちになり、年金支給や介護関連の支出が増大することになるのは自明。

その対応を早くからしてきたことは先見の明があったと思いますが、産業育成は。。。遅れているような気がします。また、人口の年齢バランスがわるいこともあり、また、次世代を担う人材が市外に住んでいるケースも多いと聞いています。団塊ジュニア世代などが戻ってきて、そして、新しい人たちが移住してくる環境をどのようにやって育てるか・・・これは難しい問題だと思います。

ただ、それはここ、そこの市町村の問題ではなく、少子高齢化が進み日本全体の問題でもあると感じます。私が住む町でも同じ問題を抱えています。しかし、現状は対処療法のようなものしかなく、抜本的に解決する施策は市町村のレベルでは困難であると思います。また、財源、権限の問題も解決しないとこれらの問題は解決できないのではないかと考えます。
by yukikaze (2010-12-13 10:12) 

Sanchai

yukikazeさん、コメント&nice!をどうもありがとうございます。

これからご紹介する本の中に、民俗学者宮本常一の言葉が引用されています。

「地域は、そこに住む人びとが自らつくっていかない限り、決してよくはならないもんなんじゃ」(佐野眞一『大往生の島』、p.127)

「近代化によって忘れられた土地をくまなく歩き、そこに否定的要素ではなく、あえて肯定的要素を見出し、人々を明るく励まして歩いた宮本民俗学」(同上、p.270)

甚だ情緒的ではありますが、行政に期待し過ぎず、民間活動に期待したいと思います。いえ、期待するのではなく、自分から飛び込んでいきたいと思います。
by Sanchai (2010-12-13 22:50) 

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