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『食糧テロリズム』(1) [ヴァンダナ・シヴァ]


1つ質問です。遺伝子組み換えされたサケが食卓に出された時、あなたは健康被害のリスクなど全く考えずにサケの切り身を口に運ぶことができますか?そこまでしてあなたはサケを食べたいと考えますか?僕はそうは思わない。また、自分の家族にそこまでしてサケを食べさせるのも認めたいとは思わない。遺伝子組み換えが行なわれた魚介類を食べることで人体がこうむる影響については誰もわからない。

食糧テロリズム

食糧テロリズム

  • 作者: ヴァンダナ シヴァ
  • 出版社/メーカー: 明石書店
  • 発売日: 2006/12/07
  • メディア: 単行本
内容(「MARC」データベースより)
インドを標的にした西側資本の国際アグリビジネスが、インドの食糧生産体制をどのように破壊し植民地化しようとしているのかを、農業、漁業、牧畜を例にとって具体的に批判。インドの伝統的な農業や漁業の優れた点も論証している。
本日紹介するヴァンダナ・シヴァの著作第4弾、読みながら僕が考えたことは、著者の言うような「食糧テロリズム」に、僕達先進国の消費者は加担しているのではないかということだった。言い換えるなら、巷間取り沙汰されている生物多様性保全に本気で取り組むなら、僕達は自分達の食生活を見直すところから始めなければいけないということだ。本書のサブタイトルには「多国籍企業はいかにして第三世界を飢えさせているか」と書かれているが、そうした多国籍企業から食糧を購入しているのは結局のところ先進国の消費者である僕達なのである。

それは単に遺伝子組み換え種子や食用生物のことだけではない。僕らが食べている魚について、捕獲するのに海底の泥を巻き上げて他の海洋生物が棲みにくい環境を作ってしまうトロール漁が行なわれていないだろうか。僕らが食べるエビについて、マングローブ林を潰してできた沿岸海域の養殖池で生産されていないだろうか。こうした養殖池周辺では、地下水の塩水化が進んで、飲料用には使えなくなった井戸が多いとの報告もあるようだ。本書はこれらに限らず、様々な側面から我々の食生活が途上国の農村社会に与える影響に関する考察が行なわれている。舞台はどうしてもインドになるが、そのお陰で綿花農業が農民の自殺に繋がっていくプロセスや、インドで論争の的となってきた遺伝子組み換え(GM)種子の争点についても、改めて理解を深めるのには非常に役立つ1冊だと思う。

そして、何故著者がウッタラーカンド州デラドゥンで「ナブダニヤ」と呼ばれる運動を起こしているのか、その運動とはどのような目的で、何が行なわれているのかについても説明がなされている。また、インドでNGOが取り組む農村開発事業ではミミズ堆肥(Vermicomposting)が非常に頻繁に行なわれるが、その背景に何があるのか、どのようなメリットがあるのかについても学ぶことができる。有機農業も然りだ。いずれも、地域の種子や生態系の多様性を保全し、域内での資源の循環のメカニズムを作り、化学肥料や農薬、灌漑用水、種子といった外部からの投入による費用とリスクを極力抑えることを狙ったものだと考えられる。グローバル化に対抗した内発的発展の模索だ。

本書を読めば、僕らの日常生活の中でどんな便利を諦める必要があるのかが見えてくる。かく言う僕も、本書を読んだ後は、肉を食べることに対する罪悪感をどうしても感じざるを得なかった。エビや肉を食べるのは控えようと思った。最近は廉価販売がエスカレートして、客がレジで注文した品を揃えることよりも、注文した客は横で待たせて次の客からどんどん注文を取り、客としての尊厳などお構いなしで客に餌を与えているかの如き接客をレジ係がしている某ハンバーガーチェーンなど、商業主義の最たるものだろう。

次回は、主だった記述の引用をご紹介していきたい―――。

Stolen Harvest: The Hijacking of the Global Food Supply

Stolen Harvest: The Hijacking of the Global Food Supply

  • 作者: Vandana Shiva
  • 出版社/メーカー: South End Pr
  • 発売日: 1999/10/15
  • メディア: ハードカバー


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