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『開発と国家―アフリカ政治経済論序説』 [読書日記]

開発と国家 アフリカ政治経済論序説(開発経済学の挑戦3)

開発と国家 アフリカ政治経済論序説(開発経済学の挑戦3)

  • 作者: 高橋 基樹
  • 出版社/メーカー: 勁草書房
  • 発売日: 2010/01/29
  • メディア: 単行本
内容紹介
本書は、アフリカという、現実世界ばかりではなく社会科学の学問世界においても、最も片隅に追いやられてきた地域の現実から、社会科学の保守本流ともいうべき方法論的個人主義に立つ「普遍的」諸理論を問い直そうとするものである。アフリカにおける開発と国家を語ることによって、欧米をも、アジアをも、日本をも、そして世界をも語ることが、本書が負わなければならない責任である。
本書は、本文だけで412頁もある専門書である。4,300円もするので、最初は図書館で借りて済まそうと考えたのだが、マーカーで線が引けないのは不自由だと途中で思い直し、第2章を読み切ったところで書店で購入しようと決心した。購入したのは先週金曜日。その後、日曜日にコミセン図書室にこもってひたすら読み、月曜日もさらにコメダ珈琲店で粘って読み、取りあえず全章読み切った。

読もうと思った動機は、仕事とも関係している。インドから帰国して以来、仕事の上ではインドと関係のあるようなことは全くする機会がない。代わりに関わらなければいけなくなったことの1つがアフリカ絡みの仕事だった。しかも、「民族多様性」などというテーマである。アフリカの民族は、元々は移動を頻繁に繰り返していた。そこに植民地支配を持ち込んだ欧州諸国が、自分達の都合に合わせて国境画定した。だから、国境をまたがって同じエスニックグループが住んでいるし、1つの国に複数のエスニックグループが存在する。そうして出来上がった国では、政治指導者は国全体の利益が何であるか明白である場合にもそういう行動選択をしないケースがあるという。特定民族のさらに特定グループの利害を優先させるということである。そうした事態が何故起きるのか、それを解き明かそうと取り組んだのが本書である。

現在、民族多様性が経済成長や経済不安定性に対してどのような影響を与えているのかを考察する英語の論文を何篇か読まされている。ただでもアフリカに関する予備知識が皆無な上に、民族問題というのも不勉強で、論文を読んでも何が書いてあるのかさっぱりわからない。英語の論文を読む前に日本語の論文を読んである程度キャッチアップを図ろうと僕は考えた。350頁ぐらいまで読み進めた状態で月曜朝を迎えたが、先週は何が書かれているのかさっぱりわからなかった英語の論文も、なんとなくこんなことではないかと多少は理解できるようになった気がする。

とりわけ参考になったのはケニアの政治史に関する記述だった。そもそも今の大統領が誰か、首相と大統領が別に存在していることすら僕は知らなかったので、そんなことでも整理して書かれている日本語の書籍は非常に有難かった。

4,300円もする高額書籍である。1回読んでおしまいということではなく、多分今後も何度か部分的に読み直したりする機会もあるだろうと思う。なにしろ、僕が取り組んでいる論文の執筆者の多くは著名なアフリカ地域研究者で、本書の中でも何人かはその思想と発表論文が紹介されている。参考書としては非常に助かるのだ。

本書を読みながら、同じ民族多様性といってもインドとは随分と事情が異なるのだなというのが印象だった。こうした論文を読みながら、いずれインドの民族多様性と経済の不安定性についても考えてみたいと思ったりもしたのだが、インドの場合は、山間地や僻地に住む先住民は別としても同一言語を使用するグループで州境が画定されており、かつ州の権限も強い。独立直後のケニアでケニヤッタ大統領が行なったようなキクユ人のリフトバレー州への入植支援のようなことはインドでは中央政府主導で行なわれたとはあまり聞かない(独立時のムスリム強制移住のようなのは別として)。インド中央政府は特定のエスニックグループを露骨に利するような政策をあまり取れないのではないかと思う。(BJPの政権がヒンドゥー優先主義の政策を取ったというのは確かにあったけれども…)


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