草の根起業家に直接小口貸付 [インド]
インドで働いていた頃、僕はウェブ版経済社会開発関連ニュースサイトOneWorld South Asia(OWSA)のラーマン編集長と懇意にさせていただいていた。デリー在住当時から僕は勝手に「OWSAサポーター」を自称し、その記事を幾つか勝手に日本語に訳してこのブログで掲載してきた。そのことはラーマン編集長もご存知だ。逆に、僕の方から売り込んで記事にしてもらったものもある。日本に帰ってきてしまった今でも、僕は時々OWSAのウェブサイトを覗き、面白そうな記事がないかと物色している。
そこで見つけたのが8月31日付の「貧困撲滅のためのオンライン社会投資(Online social investments to knock out poverty)」(Smita Deodhar記者)である。インド初のオンライン社会開発目的融資プラットフォーム「Rang De(ラング・デ)」を紹介するもので、ウェブサイト上で草の根の低所得起業家への融資資金を募集する。借手の事業計画に基づき貸手が借手を選んで貸付金を最低100ルピーからプレッジできるという仕組みになっている。
*記事全文は下記URLからダウンロード可能です。
http://southasia.oneworld.net/fromthegrassroots/online-social-investments-to-knock-out-poverty
Rang Deは2008年にチェンナイで立ち上げられた。貸付金のプレッジは小切手や振込でもいいし、クレジットカードによる支払いでもよい。彼らのウェブサイトを調べてみると、現在の借入希望者はジャルカンド、ケララ、マハラシュトラ、オリッサ、西ベンガルの5州に及ぶ。過去に借り入れた人は12州にも及び、チェンナイ拠点だからといって決して南インドだけで行なわれているわけではないらしい。借入希望金額は1,700~7,000ルピーの範囲で、4,000~5,000ルピー程度が特に多いようだ。これを、貸出プレッジ額が借入希望金額まで積み上がったところで貸付実行され、12ヵ月かかって返済が行なわれる。借入希望者は、野菜の集配や洋裁、茶店といった事業を始めるのに借入金を活用する。
Rang Deに登録した投資家は、登録時に4,000ルピーを払い込む。その上で、ウェブ上で紹介されている借入希望者の事業計画と必要資金額とプレッジの積み上がり状況を見ながら、「Aさんに〇〇ルピー、Bさんに〇〇ルピー…」といった感じで分散投資していく。こうして、投資家と借入人との直接的なマッチメイクを行ない、顔の見える関係を作るのがRang Deである。必要なら、投資家は自分が資金を貸し付けた相手を訪ねて行って実際の活動状況をモニタリングすることも可能である。
8月30日現在登録されている投資家は1,839人、Rang Deプラットフォームで調達された資金は2,266万ルピーにも達する。借入人は4,447人に達し、その90%以上が女性である。返済率は99%だ。
元々この構想は英国で働いていたN.K.ラムさんと妻のスミータさんが思い付いたもので、低所得者の自立を促進してインドの貧困削減に貢献することを目指している。しかもその資金源として既にインドで成功を収めている中高所得者をターゲットに定め、彼らが直接受益者が目に見える形での具体的な社会貢献手段を提供しようとしている。
資金調達はウェブ上でできるにせよ、借入希望者の受付や査定、融資実行と返済金徴収はどのようにやっているのだろうか。Rang Deは各州に1、2のパートナー団体があり、そこが代行しているのだという。パートナー団体というのは、現地NGOかマイクロファイナンス金融機関である。こうしたパートナー期間が融資実行する場合、貸付金利は8.5%の固定レートで、年利では16%と決められている。利息収入の5%は現地パートナーに、2%は投資家に(但し、利息受取りを辞退することは可能)、残りはRang Deが留保する。初回の借入限度額は5,000ルピーに決められ、その後の事業と返済の実績を見つつ借入限度額が引き上げられる。
Rang Deは2010年末までに借入人の数を5,000人にまで拡大することを目指している。
最初の直感として、このタイプの融資であれば日本に住んでいる僕らでも直接的にマイクロファイナンスでインドの農村起業家に貸付実行できるというので、かなり面白いイニシアチブだと思った。資金拠出する側から見れば、自分のお金がどこの誰の生活をどのように改善するのかが把握しやすい。しかも、拠出額としては大した金額ではない。形としては融資(マイクロクレジット)だが、どちらかというと直接投資(マイクロベンチャー)に近い手法と言えるだろう。因みにインド国外の投資家が参加しているのかどうかも調べてみたが、米国やシンガポールから参加している人もいるようだ。
ただ、融資対象先に開拓や融資・返済手続を現地パートナーに依存しているということは、現地パートナーの活動の地理的カバレッジに相当部分制約を受けることも間違いないだろう。例えば、オリッサ州ではPragatiとGram Utthanという2つのNGOが現地パートナーとして登録されているが、前者はプリー、後者はヌアパダを主な活動地域としており、オリッサ州の借入希望者はこの2つの地域に限定されている。即ち、僕が仮に「いや、僕はオリッサはオリッサでもムニグダやカラハンディの女性起業家に投資したい」と思ったとしても、現時点ではやりようがないわけだ。
結局、こういうプログラムはその主催者がどれだけのネットワークを全国各地と構築できるのかにかかっていると思う。僕が自分が訪問してお世話になった現地NGOの方々と連携して作ってみたいと思っていたのがRang Deのようなオンライン・プラットフォームである。既に日本国内でも取り組まれているサイトは存在するようであるが、どこもやはり国と地域が限定されており、サイトへの参加者のネットワークの広さに制約を受けるところは変わりない。ただ、今後ネットワーク同士がもっともっと繋がっていけば、相当広範な選択肢を提供できそうな取組みではあると思う。
Rang Deで試しにやってみようかなとすら思っている。
そこで見つけたのが8月31日付の「貧困撲滅のためのオンライン社会投資(Online social investments to knock out poverty)」(Smita Deodhar記者)である。インド初のオンライン社会開発目的融資プラットフォーム「Rang De(ラング・デ)」を紹介するもので、ウェブサイト上で草の根の低所得起業家への融資資金を募集する。借手の事業計画に基づき貸手が借手を選んで貸付金を最低100ルピーからプレッジできるという仕組みになっている。
*記事全文は下記URLからダウンロード可能です。
http://southasia.oneworld.net/fromthegrassroots/online-social-investments-to-knock-out-poverty
Rang Deは2008年にチェンナイで立ち上げられた。貸付金のプレッジは小切手や振込でもいいし、クレジットカードによる支払いでもよい。彼らのウェブサイトを調べてみると、現在の借入希望者はジャルカンド、ケララ、マハラシュトラ、オリッサ、西ベンガルの5州に及ぶ。過去に借り入れた人は12州にも及び、チェンナイ拠点だからといって決して南インドだけで行なわれているわけではないらしい。借入希望金額は1,700~7,000ルピーの範囲で、4,000~5,000ルピー程度が特に多いようだ。これを、貸出プレッジ額が借入希望金額まで積み上がったところで貸付実行され、12ヵ月かかって返済が行なわれる。借入希望者は、野菜の集配や洋裁、茶店といった事業を始めるのに借入金を活用する。
Rang Deに登録した投資家は、登録時に4,000ルピーを払い込む。その上で、ウェブ上で紹介されている借入希望者の事業計画と必要資金額とプレッジの積み上がり状況を見ながら、「Aさんに〇〇ルピー、Bさんに〇〇ルピー…」といった感じで分散投資していく。こうして、投資家と借入人との直接的なマッチメイクを行ない、顔の見える関係を作るのがRang Deである。必要なら、投資家は自分が資金を貸し付けた相手を訪ねて行って実際の活動状況をモニタリングすることも可能である。
8月30日現在登録されている投資家は1,839人、Rang Deプラットフォームで調達された資金は2,266万ルピーにも達する。借入人は4,447人に達し、その90%以上が女性である。返済率は99%だ。
元々この構想は英国で働いていたN.K.ラムさんと妻のスミータさんが思い付いたもので、低所得者の自立を促進してインドの貧困削減に貢献することを目指している。しかもその資金源として既にインドで成功を収めている中高所得者をターゲットに定め、彼らが直接受益者が目に見える形での具体的な社会貢献手段を提供しようとしている。
資金調達はウェブ上でできるにせよ、借入希望者の受付や査定、融資実行と返済金徴収はどのようにやっているのだろうか。Rang Deは各州に1、2のパートナー団体があり、そこが代行しているのだという。パートナー団体というのは、現地NGOかマイクロファイナンス金融機関である。こうしたパートナー期間が融資実行する場合、貸付金利は8.5%の固定レートで、年利では16%と決められている。利息収入の5%は現地パートナーに、2%は投資家に(但し、利息受取りを辞退することは可能)、残りはRang Deが留保する。初回の借入限度額は5,000ルピーに決められ、その後の事業と返済の実績を見つつ借入限度額が引き上げられる。
Rang Deは2010年末までに借入人の数を5,000人にまで拡大することを目指している。
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最初の直感として、このタイプの融資であれば日本に住んでいる僕らでも直接的にマイクロファイナンスでインドの農村起業家に貸付実行できるというので、かなり面白いイニシアチブだと思った。資金拠出する側から見れば、自分のお金がどこの誰の生活をどのように改善するのかが把握しやすい。しかも、拠出額としては大した金額ではない。形としては融資(マイクロクレジット)だが、どちらかというと直接投資(マイクロベンチャー)に近い手法と言えるだろう。因みにインド国外の投資家が参加しているのかどうかも調べてみたが、米国やシンガポールから参加している人もいるようだ。
ただ、融資対象先に開拓や融資・返済手続を現地パートナーに依存しているということは、現地パートナーの活動の地理的カバレッジに相当部分制約を受けることも間違いないだろう。例えば、オリッサ州ではPragatiとGram Utthanという2つのNGOが現地パートナーとして登録されているが、前者はプリー、後者はヌアパダを主な活動地域としており、オリッサ州の借入希望者はこの2つの地域に限定されている。即ち、僕が仮に「いや、僕はオリッサはオリッサでもムニグダやカラハンディの女性起業家に投資したい」と思ったとしても、現時点ではやりようがないわけだ。
結局、こういうプログラムはその主催者がどれだけのネットワークを全国各地と構築できるのかにかかっていると思う。僕が自分が訪問してお世話になった現地NGOの方々と連携して作ってみたいと思っていたのがRang Deのようなオンライン・プラットフォームである。既に日本国内でも取り組まれているサイトは存在するようであるが、どこもやはり国と地域が限定されており、サイトへの参加者のネットワークの広さに制約を受けるところは変わりない。ただ、今後ネットワーク同士がもっともっと繋がっていけば、相当広範な選択肢を提供できそうな取組みではあると思う。
Rang Deで試しにやってみようかなとすら思っている。
☆Yujiさん☆
コメントありがとうございます。あなたのブログに行きましたが、メッセージを送るのにアメブロのIDとパスワードを聞かれたので挫折しました。
ブログを拝見していて、到着1週間少々で大変ご苦労されている様子が伝わってまいりました。インドールには仕事上接点のあった知り合いはおりますが、私的な物事を頼めるほどの間柄ではありませんし、そもそも私自身がYujiさんのことを存じ上げない中で紹介するのはリスクを負います。(スミマセン、厳しい書き方で)
それに、私はインドール市内のNGO活動をあまり知りませんので、むしろYujiさんの体験されていることの方が興味があります。
突き放した言い方になってしまいましたが、地道に周囲の人に聞いて見聞を広げられてはいかがかと思います。期待しております。
by Sanchai (2010-09-06 15:01)
☆Yujiさん☆
ご要望がありましたのでコメントは削除しますが、インドールでの滞在が有意義なものになりますことを心からお祈り申し上げます。
誤解があるといけないのですが、私のインドールの知り合いは日本人ではありませんので念のため申し添えます。
by Sanchai (2010-09-06 21:41)