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マンゴー植林と女児保護 [インド]

マンゴー保険
Mango tree insurance
Down To Earth, 2010年7月1-15日号、Alok Kumar Gupta通信員
 ビハール州バガルプール(Bhagalpur)県ダルハラ(Dharhara)村のマンゴー果樹園に茂る葉の間からはどの家も見ることはできない。女子に対する偏見もここでは全く存在していない。
 ビハール州の殆どの地域では女の子が生まれることは通常溜息を伴うものだが、ダルハラ村の家族はこうした傾向とは異なり、女の子が生まれることを祝う。女の子が生まれるや、家族はその裏庭に向かい、マンゴーの苗木を少なくとも10本は植えるという。
 その子供が10歳を迎える頃までには、苗木は木に成長し、果実がなるようになる。マンゴーの収穫は1年あたり5万から10万ルピーの現金収入に繋がる。その女の子が成長して結婚適齢期になった時には、その結婚式のための資金が貯金されていることになる。時折、成長した木々は伐採され売られてしまう。10本のマンゴーは20万ルピーの収入に繋がる。
 森の木という形で保持する定期預金は、女の子が金融負債として扱われるのを補償する。「私たちは結婚のための借入は行ないません。勘定を支払うために私達はマンゴーの木を所有しているのです」―――73歳になる住民であるシャム・スンダル・シンさんはこう述べる。娘のためにマンゴーの苗木を植える儀式がいつ頃から始まったのか、ダルハラの住民は誰も知らない。あだ、それは世代を超えて実践されてきた。今日、このマンゴーに絡めた経済活動はダルハラの女の子達にとって最大のサポートとなっている。
*後半に続く。
4月後半からこの時期にかけて、インドではマンゴーが食べ放題である。品種によって市場に出回る時期が違うので、今デリーで食べられるマンゴーは4月の頃とは果肉の色も果実の形も味も全く違う。ただ、全体的には非常に美味しく、離任前の2ヵ月、僕が訪問した先々でマンゴーを食べまくった話をすると、家族は非常に悔しがる。去年8月に一足先に帰国していた家族に言わせると、「早期帰国自体は後悔してないけど、マンゴーが食べられなくなったのは残念」だという。

そんなマンゴーの植林が女児の新生児の保険として機能している村がビハール州にはあるという。一般的には男子が選好され、出産前に性別判定ができてしまう技術が普及したことにより1990年代以降「間引き」が横行して新生児の男女比が男子に極端に偏っている地域もあるこの国で、「間引き」とは別の形での環境適応が何世代にもわたって行なわれてきた村があるというのは興味深い。
 村民の1人で農業を営むスバシュ・シンさんは収穫されたマンゴーの値段交渉や自分の果樹園をリースにする手続きで忙しかった。19歳になる娘のニーカー・クマリが6月に結婚するため、その費用を捻出せねばならなかったからだ。少なくとも700名の来客が見込まれ、夫とその家族への贈呈品を購入せねばならなかった。
 シンさんはしかしあまり心配していない。マンゴーの木の下で休憩しながら、彼は笑ってこう述べた。「私は娘が生まれた日にマンゴーを25本植えました。見て下さい。自分の娘の結婚だというのに、私はビハールの他の地域の父親のように、娘の結婚資金の調達のために東奔西走するようなことはありません。」
 ダルハラ村の世帯数は約5,000、マンゴーの樹の数は15万本にも及ぶ。南はガンジス河、北東にはコシ河が流れるこの村の土地は肥沃だ。村人はこれまで何世代もかけて自分たちの畑の土壌に合ったマンゴーの品種を特定して苗木を植えることを実践してきた。
 今では25種類のマンゴーが村の果樹園では育てられている。中には高プレミアムのついたジャルダルー(Jardalu)という品種もある。村人は通常この果樹園を園芸事業者にリースして、収穫されたマンゴーは事業者が市場で販売するというシステムをとってきた。事業者は果樹園の園主に結婚費用やダウリー(結婚持参金)に充てられる資金を纏めて支払う。
 村人によると、新郎に支払われる総額は新郎の職業によって相場がだいたい決まっているという。銀行員なら60~80万ルピー、窓口係なら30~40万ルピー、教師なら20万ルピー程度だという。「公務員をやっているような新郎への支払いは不可能です。持参金が高すぎるのです。」結婚式には通常500人以上の客が訪れるため、式を行なうだけで更に20万ルピーの出費が発生する。
 85歳になるシャトルガン・プラサドさんは、10ヘクタールの農地に500本のマンゴーを育てている。2人の孫娘、ニシとルチ(下写真)が社会的地位の高い花婿を連れてきた場合でも負担できるようにと考えてのことだ。2人の孫娘はまだ学校に通っている。プラサドさんは言う。「私達の村では貧しくて栄養状態が悪いという人は誰もいません。」

Mango.jpg

 だからといって、村人はまだ自分の娘に対して学校卒業後も勉強するよう勧奨するようなことはない。彼らの多くは家事に従事するようになる。地元に大学がないからだ。バガルプール県は過去15年間、犯罪の巣窟であった。「最近4年間は犯罪件数は減っています、しかし未だここには道路もありません。時が来れば女の子にも教育機会をもっと与えようという機運が高まっていくでしょう」――ある村人はこう語った。
*記事全文は下記URLからダウンロード可能です。
 http://www.downtoearth.org.in/node/1475
記事を読んでると記述の意味がよくわからないところがある。上の記事の紫色でカラーリングした箇所は、記事原文を訳すとこうなるのだけれど、果樹園主と園芸事業者の関係性がかなり理解しにくい。

それと、これが全国的に見てグッドプラクティスかというとそうでもない気はする。ダウリー制度自体の弱体化を意図したものではなく、制度の存続を与件とした環境適応戦略に過ぎない。勿論、男児選好の結果として女児を間引きしてしまうような行為を回避する適応策としては意味があるだろう。

こういうストーリーを知ると、日本でもインドからマンゴーの輸入ができたらいいと単純に思ってしまう。我が家の家族はハッピーだし、それで社会的には救われる命もあるかもしれない。



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