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『シニアよ、ITをもって地域にもどろう』 [読書日記]

シニアよ、ITをもって地域にもどろう

シニアよ、ITをもって地域にもどろう

  • 作者: 山田 肇 編著
  • 出版社/メーカー: NTT出版
  • 発売日: 2009/01/15
  • メディア: 単行本
内容紹介
 「マルチメディアで地域を活性化」などというと、いまやすっかり死語となってしまい、一部の例外を除けば「いまさら」という感は否めない。ところが最近、会社をリタイアしUターン、Iターンしたシニアが中心となって、ITを活用した地域活性化の事例がおおく登場してきている。
 かつては地に足が着いていなかった「マルチメディア」も現在では、あたりまえのツールとしての「IT」となったことで、老若男女を問わず人々をエンパワーし、様々な問題を前向きに解決するためのツールとなりえる時代となった。
 本書は、シニアの生きがい、利活用と地域活性化の視点から、成功できる方法と事例を紹介する。
僕はまだシニアではないけれど、いずれ地域デビューをしたいと思っているので、その一環として読んでみることにした。市立図書館で立ち読みしてみて、執筆チームのメンバーに三鷹市民がおり、事例としても三鷹の取組みが頻繁に紹介されているところにも惹かれた。3年半前、僕は九州大学で行なわれた東アジアの高齢化に関するシンポジウムで発表したが、その際に事前提出したレポートの中で引用したのが徳島県上勝町の「いろどり」と三鷹市の「シニアSOHO普及サロン・三鷹」の取組みであった。農村部での取組みと大都市近郊での取組みとの比較の意味で言及したのだが、その両方が本書の中で取り上げられているのを見て、おそらく僕の問題意識が本書の執筆チームと同じだったのだろうと考えた。実際に読んでみて、その意をさらに強くした。

全体的には目新しい話ではない。本書のタイトル自体が全てを語っていると思う。「IT」といっても、そんな高度な話ではなく、シニアでも使いこなせるPCとインターネットとメール程度のものである。シニアの地域での強みとして「IT」と言われてしまうと、取り上げられる事例が元々IT企業で働いていた人ばかりになり、その点では抵抗はあった。ちなみに僕もhtml方式でHPを制作するぐらいのスキルは独学で身に付けてはいるが、売りにするほどのレベルではない。そうしたスキルの上に乗せる付加価値の部分で「売り」をどのように見つけ、伸ばしていくのかが大事なのだろう。

全体としては目新しくはないと述べたが、各論の部分では参考になる記述も幾つかあった。

第1に、会社で使っている名刺とは別に、個人の名刺を作ってみようかと考えるようになった。インドで働いている時、縁あって日本財団の笹川陽平会長から名刺をいただいたことがあるが、住所も電話番号もメルアドもなく、「私のブログを読んで下さい」とだけ書かれていた。まあブログのURLだけ記載された名刺もどうかとは思うが、3年に1回は異動して住所も電話番号も肩書も変わってしまう会社の名刺よりも、いったん配ったら10年以上はおそらく変更しないであろう情報を含んだ個人名刺であれば、賞味期限が3年程度で切れるということもないであろう。ブログのURLとメルアド、ケータイの番号あたりを書き、あとは自分のセールスポイントでも幾つか書いておけば、飲み会で配って話のネタにもできるだろう。自分が住む三鷹の町で配る名刺には、会社の名前も肩書も要らない。

第2に、本書に幾つか掲載されていた囲み記事の中で、「転勤地に根付いた夫婦が由布院を国際的に情報発信」という、大分コアラの永野美恵子さんの記事が最も印象に残った。
 住んでみると、大分にはたくさんの地域資源があることが見えてきます。由布院を始めとする素晴らしい温泉や旅館の数々、県内各地の質の高い産品、そしてそこかしこに歴史や文化の薫り高いコンテンツがありました。美恵子さんは、それを少しずつ情報発信していきます。海外生活が長かった健一さん(註:ご主人)は翻訳を担当し、英語でも情報発信を行ないました。
 そのうちに、大分に住み始めたころから手伝っていたゆふいん音楽祭の情報を、バイリンガルで流すようになります。それを見て世界各国から、ご夫妻を訪ねてお客様が訪れるようになりました。ゆふいん音楽祭の存在は、永野さんのホームページから、全世界に広まっていったのです。
 今では彼女たちのサイトが、ほぼ公式サイトのように受け取られています。観光協会からもリンクがはってあります。御夫妻でこつこつと毎日更新されてきた日記は、今ではブログになりました。由布院、別府、大分を紹介する、深く広いコンテンツになっています。(pp.191-192)
いい話じゃないでしょうか。うちの妻がここまで日本語のコンテンツを揃えられるかどうかはともかくとして、英語で三鷹の情報を発信したいというのが僕が日本に戻ってきて地域でやりたかったことの1つです。

どちらも今から始めるのに何かしら支障がある話でもない。少しずつでも始められたらと思う。本書を読んで、そういったところでは非常に勇気づけられた。

そして第3には、役所との付き合い方に関する記述である。市役所の窓口と折衝してもなかなか協働事業が始まらない。役所の職員は何年かで必ず交代してしまうし、たとえ前の担当者が経験豊富で、リスクを乗り越えてNPOと組んで何が何でもやろうという能動的な職員であったとしても、その後任の担当者が同じ熱意と行動力を持った人かどうかは限らない。
 役所では、窓口ではなく「人」と組まなければ進みません。役所の担当者はローテーションします。例え福祉のテーマであっても経済課でよく判る人がいます。ちゃんと想いが通じて、その人が然るべき人につないでくれます。企画部のあの人と話せばいいんだ、ということを教えてくれたりします。行政は組織ではなく「あの人」です。〇〇課というところに通っている間は、協働は成功しないといえるのです。(p.87)
行政と近いところで仕事している自分としては行政組織の側からするとそうじゃないんだけどと苦笑してしまうところはあるのだが、実はこの指摘はかなり当たっていると思う。行政は組織で仕事するというのは案外違っており、やっぱり個人のキャラクターで勝負なのであり、その人がその部署で培ったネットワークは、後任には引き継げず、その人がどこまでも持っていかねばならないものなのだと僕も思っている。

インドで僕が始めたことに関しては、たとえインドを離れても僕は関わっていくべきなのだろう。それを前提としたら、僕が地域で何をするべきなのかも自明だ。
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