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『奇跡のリンゴ』 [読書日記]

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録

  • 作者: 石川 拓治
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2008/07
  • メディア: 単行本
内容紹介
 人が生きていくために、経験や知識は欠かせない。何かをなすためには、経験や知識を積み重ねる必要がある。だから経験や知識のない人を、世の中ではバカと言う。けれど人が真に新しい何かに挑むとき、最大の壁になるのはしばしばその経験や知識なのだ。木村はひとつ失敗をするたびに、ひとつの常識を捨てた。そうして無垢の心でリンゴの木を眺めることが出来るようになったのだ。
 ひとつのものに狂えば、いつか必ず答えに巡り合う。
 ニュートンよりも、ライト兄弟よりも、偉大な奇跡を成し遂げた男の物語。
読んでみたい本は図書館で借りて最優先で読め―――。その考え方の下で、残り1週間の日本滞在の中で最優先で借りた3冊の中の最初の1冊である。発刊日を見ると結構前に発刊になっていたのがわかるが、書店店頭で平積みされているのを頻繁に見かけたのは昨年6月に一時帰国した時で、以来気になっていたけれども読む機会がないままで今日に至っていた。

本書は石川拓治著となっているが、NHK「プロフェッショナル―仕事の流儀」政策班監修でもある。日本に住んでいる人であればこの番組で青森・岩木のリンゴ農家・木村秋則さんが紹介されたのを番組でご覧になった方もいるかもしれない。絶対不可能と言われていたリンゴの無農薬栽培を成功させた農家ということで番組で取り上げられ、放送直後から大変な反響を呼んだ農家さんらしい。残念ながら、僕はこの番組は見たことがない。

多くの人がテレビ番組を通じて木村秋則氏の奮闘を知っているだろうから、改めてブログで経緯を紹介するまでもないだろう。感動するようなお話である。僕はインドで仕事するようになってから「オーガニック栽培」について多少勉強する機会があったが、オーガニック栽培は確かに無農薬栽培であることは間違いないが、雑草ぼうぼうで土壌に地力をつけさせてその中で強いリンゴ果樹を育てるという発想とは基本的に違う。オーガニック栽培の多くは、オーガニック肥料を用い、農薬ではないけれども害虫駆除のために何らかの方策を採っている。害虫の嫌うにおいを放つ何かの溶液を葉や茎に塗っておくとか、逆に害虫が好きなフェロモンを発する溶液を持っておびき寄せるとか、害虫駆除のために新たな益虫を導入するとか、そういったことである。

「何もやらない」という発想はオーガニック栽培とは基本的に異なる。勿論、無農薬だからといって、遺伝子組換え種子を導入したというわけではない。だから、インドで自分が知っている無農薬栽培と、本書が紹介している無農薬栽培はかなり違うという印象だ。

既に木村氏の取り組みを紹介した本はこれ以外にも2冊ほど出版されており、書評にはいろいろと書かれているが、個人的には、こういう本は今後我が長男にも読んでみて欲しいと強く思った。僕なりに本書を読んで得られた示唆を幾つか挙げるとすると、こんなことが考えられる。

 ①偶然の出会い
  (書店でリンゴ栽培の本を物色していて偶然福岡正信氏の自然農法の著書を見つけた)
 ②あくなき実験マインド
  (好奇心旺盛で、こうしたらどうなるか、ああしたらどうなるか、絶えず実験を試みてきた)
 ③折れない意志の力
  (挫けそうになりながら、漠然とでも畑での実践を繰り返した)
 ④人から好かれるキャラクターとそれに基づくネットワーク
  (周囲の多くの人々が陽になり陰になり木村氏を支えた)
 ⑤相手をよく理解すること
  (リンゴの木を理解し、病気を理解し、害虫の種類とその生態を理解し、土を理解することが必要)
 ⑥家族の理解と協力

本書に特に惹かれたのは、木村秋則氏が中学生時代にどんな子供だったのかが描かれていたことである。別に農業の途を目指してくれと我が子に期待するわけではないが、大事なのはこういう人が中学生時代をどのように過ごしていたかであって、親の立場からすれば我が子をどのように仕向けていったらいいのかを考えさせられるいいきっかけになったと思う。機械を分解したり組み立てたりというスキルは、中学時代から身につけておいてくれたらと我が子には期待している。プラモデルではなく、ちょっとした装置の設計と材料確保して装置を組み立てる作業を自分自身でやってくれるぐらいになってくれたら嬉しい。

文章も割と読みやすく好感持てる。我が子に限らず、中学生には読んでみて欲しいと思う1冊である。
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