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『母なる農村に生きて』 [読書日記]

母なる農村に生きて

母なる農村に生きて

  • 作者: 若月 俊一
  • 出版社/メーカー: 家の光協会
  • 発売日: 2000/05
  • メディア: 単行本
内容(「MARC」データベースより)
東京の大学から信州へ移り、都会から来た一人の医者として、当時の貧しく不潔な農村の生活改善に尽力して半世紀。卒寿を迎えるにあたって書き下ろす、次世代への熱いメッセージ。
1ヵ月ぐらい前にバブさんにふと会いたいと思い、SMSを打っておいた。デリーでWHOのお仕事をされているけれど、1ヵ月の半分ぐらいはインドではなく同じ地域の他の国を出張で回られているそうで、お返事を下さったのは3月1日のことだった。今週ヤマ場を迎えていた大きな仕事がひと段落したら、バブさんに連絡を取ろうと思った。だから、そのバブさんが師と仰ぐ佐久総合病院の故・若月俊一院長の著作を読んでおこうと考えた。僕の手元にある若月先生と佐久病院の関係の本で未だ読み切ってないのは2冊あった。今回のはそのうちの1冊。そろそろ本帰国する日のことも考えて、我が家の蔵書のうち、職場の関係者に再活用してもらえそうな価値のあるものは読み切っておきたいと思っている。

「書き下ろし」と紹介されているが、本当にそうなのかどうかはわからない。僕はむしろ、本書は何かのニューズレターか雑誌に連載されていたか寄稿されたかした原稿を纏めた1冊であるような印象を受けた。章と章の繋がりがあまりなかったからだ。僕も若月院長が佐久に赴任して来られた当時のエピソードは他の本で幾つか読んでいるので、本書で書かれていることで目新しいなという話はそれほど多くはなかった。

ただ、赴任された当時の佐久地方の農村医療と現代の農村部が直面している問題は当然異なり、若月先生が本書で農村の看護問題や老人の愛の性の問題を取り上げ、老人のこころへの理解、お年寄りの人格を認めること、要介護老人は弱者であるが自分たち自身もいずれは弱者になるという認識が必要であること、すなわち、困った時はお互い様であるということなどを強調しておられる。

その他に印象に残った記述としては次の2つを挙げておきたいと思う。

第1に、インドの農村で医療と関わる際の心得として示唆に富んでいる以下の記述。
 わたしはまだ戦時中に、遅れていた農村に入って、農村医療のレベルを上げるためにいろいろなことをしてきました。しかし、医療のレベルだけを上げる、ということはできないのです。同時に農村の生活レベル――これには生活意識も含まれますが――自体を挙げなければだめです。そしてこれはもちろん、医者だけでできるものではありません。地域全体の「向上」が必要なのです。(pp.187-188)
言われてみると当たり前のことなのだが、ややもすると課題やセクターの縦割りで物事を捉えていて逆に見えなくなる可能性もあるので敢えて書きとどめておく。村で起きている健康問題はそこでの生活と密接に繋がっている。今の医療は患者の健康状態だけを見て処方箋を考えることが多いが、村で患者を診る場合には何故そのような健康状態に至ったのか、その患者の生活習慣の中から原因を見つけ出していくという努力が必要となる。

第2に、これは最近の僕の健康状態に関する示唆。若月先生は農村の冷え性に関する研究をされていた。戦後の佐久地方では冬になると農家の家屋内でも非常に寒く、冷えでからだをこわす人が相当数いたらしい。心臓や血行が悪くなり、脳卒中が多くなった。部屋を暖めるという発想が農村にはなかったという。当時、囲炉裏はやめてこたつにしようという運動があった。多分生活改良普及員が燃料の節約を考えて進めておられた運動だろうと推測するが、囲炉裏がなくなると部屋が暖まらなくなり、特に炊事をする女性はもっと寒い環境の中で働かなければならなくなった。若月先生は囲炉裏の廃止には反対の立場で、部屋全体を暖めて家族が仲良く話をする団欒の場を作ることも大事だとして、実証研究に当たられることになった。
 「冷え」の研究――冬季におけるストーブ生活が農民の健康に及ぼす影響についての実験――は昭和36(1961)年に行いました。厳冬期の2ヵ月間ほどの実験だったので、血圧や心電図のデータに大きな差は出なかったものの、しかしストーブを入れることによって、長時間部屋全体を暖める方法をとった家庭のほうに、頭痛やめまい、不眠、などの「神経症状」の改善率が高いという結果が出たり、「感冒をひく率が減った」などという効果があったのは、注目すべきことでした。
 面接調査では「仕事がはかどるようになった」「炊事が楽になった」というような、かあちゃんたちのうれしい答えや、「食事が楽しくなった」という声も聞くことができました。(後略)(pp.75-76)
そうか、僕が1月に感じていた夜に眠れなくて2時か3時頃に必ず1回目が覚めてしまうというのは、部屋の寒さが原因だったのだ。そして、冷えによる血行障害が頭痛を引き起こすということもあり得るのだ。実を言うと今週はずっと偏頭痛に悩まされ続けている。既にデリーの気候は夏に近付いてきており、日中は30℃近くまで気温が上がるし、夜もTシャツ1枚でいても平気であり、これまで2ヵ月欠かさず愛用してきていたヒートテックのアンダータイツも履かなくなってきていた。でも、本書を読んで、偏頭痛と血行の関係がなんとなく気になり、僕は週半ばから再びアンダータイツを履くようになった。

それで頭痛がすぐに改善されたというわけではないが、週末を気楽に過ごせばもう少し回復するだろうと期待しているところだ。
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leo_kung

ご訪問、コメントありがとうございます。
お互いに花粉症何とかすっきり出来ないもんでしょうかね。
フィリピンも毎日日中は暑いんですが夜は少し冷えます。
扇風機を一晩中使っているわけですから体も冷えます。
薄物を1枚はかけてるんですが朝起きるとどっかに蹴飛ばしてます。
そこで私は、少し寒いなーと感じたら靴下を履いて寝ることにしています。
それでだいぶ違いますから。
by leo_kung (2010-03-06 14:49) 

Sanchai

☆leo_kungさん☆
nice!&コメントをありがとうございます。
私も寝る時は今でもヒートテックの靴下を履いています。
ヒートテックを開発した人に感謝したい気分です。
by Sanchai (2010-03-06 17:00) 

色平哲郎

「母なる農村に生きて」についてお書きいただき感謝です

バブさんによろしくお伝えくださいますよう

JA長野厚生連 佐久総合病院 内科医 色平哲郎 いろひら拝
by 色平哲郎 (2010-03-12 14:12) 

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