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『夢見る黄金地球儀』 [海堂尊]

夢見る黄金地球儀 (創元推理文庫)

夢見る黄金地球儀 (創元推理文庫)

  • 作者: 海堂 尊
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2009/10/30
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
1988年、桜宮市に舞い込んだ「ふるさと創生一億円」は、迷走の末『黄金地球儀』となった。四半世紀の後、投げやりに水族館に転がされたその地球儀を強奪せんとする不届き者が現れわる。物理学者の夢をあきらめ家業の町工場を手伝う俺と、8年ぶりに現われた悪友・ガラスのジョー。二転三転する計画の行方は?新世紀ベストセラー作家による、爽快なジェットコースター・ノベル。
巷の発明家の話、米国有名ミステリー作家のご逝去と来て、次の話題は本日ご紹介する1冊、海堂尊のミステリー・コメディである。最近は読んだ本を紹介するのはせいぜい週1回のペースになっている。集中力が欠けていることもさることながら、もっと大きいのは読んでいる時間がなかったことだった。どのような本でも立ち上がりはなかなか頁が進まないということはあるが、本書の場合は中盤から終盤にさしかかってもペースが上がらず、1日10頁程度、せいぜい寝る前に少し読む(読んでいて寝こけてしまう)という日々が続いている。そうした散漫な読み方が、謎解きの鍵となる伏線を見落とすという事態を招き、読み終わった後も幾つか満たされない疑問が残った。だからといって読み返したいとは思わない。他にやることはいっぱいあるからだ。

本書は知人からお借りして読んだものだ。海堂作品も随分と読んできたが、医師が一人も出てこない作品は初めてだった。勿論、海堂作品は他の作品と人物が繋がっていることが多く、本書にも元看護婦と元患者というのが登場する。『ナイチンゲールの孤独』を思い出して下さい。誰かは想像できると思う。元看護婦がどうやって「出所」してきているのか、その辺の経緯はわからないが、その元看護婦と元患者が一種の諜報活動を請け負う会社をやっているという展開が僕には理解できない。この2人と平沼父子がどこでどう絡んでいたのか、思い出すこともできない。

バーテンダー「殿村アイ」も、どこか別の作品で登場していたような気がしたが、思い出せない。アイについては結局のところ並介に本当に惚れてたのか何か別の目的でスパイ活動でもやっていたのか、その辺は全くわからない。「ガラスのジョー」については、名前は出てこないが厚生労働省の白鳥の知り合いであったということだけはわかった。

以前から感じていたのだが、なんだかざらっとした文体だなと思う。プロットは面白いのだけれど、並介とガラスのジョーの掛け合いのズレとかは、面白いと感じられる人には面白いのだろうけれど、最短距離で目的地に辿り着きたいという効率性重視の僕のような読者には、ちょっとつらいものがある。終盤のクライマックスシーンのしっちゃかめっちゃかなど、ドタバタが極端過ぎて正直描かれている情景がイメージしづらかった。テレビのレポーターの演出がここまでドギツイのかと思うと嫌になる。そうした、主人公にとっては絶体絶命のシーンから、誰かしら救世主が登場して意外なブレークスルーがあるという展開は、何だか奥田英朗の伊良部一郎シリーズを思い出させる。

さて、この「黄金地球儀」事件を契機にして研究者の道を再び歩み始めた並介のその後の展開を反芻しながら、僕も今この時の身の振り方を考えた。正直仕事と研究の両立がとてもできず、向こう数カ月も研究に時間を割いたりできる環境にないこともわかっている。短時間でも集中して論文を書かなければいけない自分の立場もわかっているつもりだが、それがプレッシャーになっていて余計に自分を精神的に追い詰めているというのが自己分析だ。こんなはずではなかったのに、そう思うと今の状況がとても悔しい。

「一時撤退」という選択肢も結構ありかもしれないと思う。
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