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Environmentalist という仕事 [ヴァンダナ・シヴァ]

Environmentalist
環境問題専門家、環境保護論者。環境保護のために活動している人。
出所:http://ja.wiktionary.org/wiki/environmentalist

僕は毎朝Hindustan Times紙を購読しているが、毎週水曜日に折り込みで入っている若者向け就職特集「HT Horizons - Education for a Better Career」は殆ど読んだことがなかった。駐在員の立場ではあまり関係ない記事だと思っていたからだが、表紙に「おや?」というのがあって一度だけ読んだことがあるのが社会派ジャーナリズムへの就職に関する記事で、扱っていたのが同業他紙でコラムを度々書いているP.サイナート(P. Sainath)氏であったことに驚いたからであった。(サイナート氏を紹介する記事についてはいずれまたブログでも紹介してみたい。)

さて、今週12日(水)の「HT Horizons」の第1面に「Home Safe」と題した環境保護活動家の仕事の紹介記事が出ていた。12月のコペンハーゲンサミット(COP 15)が不調に終わってから日も浅い段階での特集であり、またCOP 15に向けて気候変動について重点的に記事を取り上げていたHindustan Timesだけに、ちょっと興味もあって目を通して見ることにした。
*記事全文は下記のURLからダウンロード可能です。
http://www.hindustantimes.com/HTHorizons/hthorizonssectionpage-greatcareers/Home-safe/SP-Article1-496481.aspx

環境保護活動家として紹介されていた人物は2人。日本でもその著書が数冊紹介されているヴァンダナ・シヴァ女史と科学環境センター(CSE)のジャグディープ・グプタGMである。CSEで言えばグプタGMよりもスニータ・ナライン代表の方が超有名なので、本日の記事では主にヴァンダナ・シヴァ女史の方の記述を中心に紹介する。

VandanaShiva.jpg 「丁度、プーリーとコナーラクの間に「地球大学(Earth University)」を設立したところです。」と彼女は言う。設立の目的は、何人かのグループによって行なわれた1万エーカーの肥沃な土地と河川、そして原生林や美しい海岸の買収に対する抗議だという。「私はコペンハーゲンで行進出発を控えた10万人近い聴衆の前で演説をしましたが、シアトル(1999年のシアトルWTO会合)のスピリットはコペンハーゲンにも引き継がれていると感じました。人々は変化を起こすことができます。」
 物理学者であり環境保全活動家でもあるヴァンダナ・シヴァ博士は伝統的な農耕法の提唱者である。彼女は森林保全官であった父親とともに森林で育ち、森林を愛するようになった。父親は1970年代のチプコ運動(インド農村の女性が木を取り巻き、伐採から守ろうとした運動)の中で銃で撃たれて命を落としている。バスマティ米やニーム、ナプ・ハル(小麦の品種)の特許権を巡る闘いは彼女を有名にした。
 「環境保護活動家に必要なのは自然を愛する心です」とシヴァ博士は言う。「環境保護活動家になるためには、環境に関するあらゆる側面について関わる能力が求められます。様々な学問領域に精通し、関与していくことが必要です。地質学者も植物学者もその特定の学問領域の中でのみ活動していますが、より大きな視野の中でそうした個々の領域を見ることが役立ちます。」
 シヴァ博士はナヴダニヤ(Navdanya)というNGOを設立し、種子の保存と有機農業の普及を行なっている。さらにはデラドゥン(ウッタルカンド州)郊外のナブダニヤの農地の一部を利用してビジャ・ヴィディヤピート(Bija Vidyapeeth、「種子大学」という意味)を設立し、教育カリキュラムの実施に加えて環境にやさしい一貫性のある生活がどういったものであるか、対話が繰り広げられている。知性が行動に裏付けらた好例だ。彼女は、カナダ・オンタリオ州のゲルフ大学で修士号を取り、西オンタリオ大学で博士号を取得した。
 「自分のフィールドを狭めることを私は削減主義的知識(reductionist knowledge)と呼びます。そうした知識はどんどん分断され、あなたは些細な数値と仕事で忙しくなるでしょう。環境に関連する各々の領域を理解し、そして環境保全に取り組んでみて下さい。」
 科学の理解は必要なのだろうか。「必ずしもそうとはいえません。環境保全に対する情熱があなたを必要なところに導いていってくれる筈です。」

有名人なんだからさぞかし忙しいのだろうと思ったら、この記事に添えられていた彼女の普段のスケジュールを見ていると、結構余裕があるので驚いた。とにかく対話が多い。地元住民とか、有識者とか、学生とか、世銀関係者とか、ジャーナリストとか。空いている時間で読書や情報収集は行なっておられるのだろうが、それにしてもすごくアバウトなスケジュールだなと思った。僕達の方がよっぽどあくせく働いているが、その割にはメディアのスポットライトを浴びることなどない。きっとこういう人々との対話を通じて、問題の所在を確認し、そして本質を理解しようと努めておられるのだろう。僕らがよく使う「現場主義」という言葉を真の意味で実践しておられる。

しかし、こうした環境保護活動家という仕事は収入もあまりない。環境保護活動に取り組むNGOであれば、初任給は月Rs.10,000程度だという。NGOで中堅からシニアレベルのスタッフや研究者であると、年Rs.50,000からRs.100,000の間ぐらいから採用になるらしい。勿論、環境分野での起業家やコンサルタントであれば、ベンチャー事業が当たれば大きな収入は得られるが。(こうした数字は、今後現地スタッフの採用を考える上では参考になるかもしれない。)

ただ、最後にこんな記述も。
◆地球とそこで暮らす人々のためにあなたができる最良の仕事であり、大きな充実感が得られる。

◆活動家であることは簡単なことではない。あなたの生活の多くの部分をそれに捧げることになるため、あなた自身とあなたの家族の時間がそれに奪われることにもなる。



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