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インドでも都会のお年寄りは寂しい [インド]

孤独で疎外され
Lonely and alienated
12月28日、Hindustan Times
【ニューデリー発】孤独と疎外は高齢の市民の間で大きな問題となりつつある。特にその傾向は核家族家庭で強い。
 デリー及び首都圏で人口流入等の理由により核家族の数が急速に増えるにつれ、こうした核家族家庭で住む高齢者の34.3%もの人が、孤独や家族及び社会からの疎外が自分の将来に対する憂いの最も大きな原因と訴えるようになってきている。高齢市民のために活動するNGOエイジウェル財団が行なった核家族内の高齢者の状況に関する調査の結果明らかになったもので、核家族家庭で住む高齢者の24.3%は様々な社会的問題に直面しており、それらの最大の理由が孤独感にあることがわかったという。
 その他の理由としては、家族や地域の集まりへの参加機会の減少(30.76%)、雇用機会など高齢者が自分の知見を生かす機会の減少(10.25%)等が挙げられている。調査では、肉体的精神的虐待を家族から受けていることを理由として挙げている高齢者が12.3%いたことも明らかになっている。
 その他に高齢者が直面している問題としては、保健や医療面の問題や財産絡みの問題、経済的問題等が挙げられている。
 (後半に続く)
エイジウェル財団が12月28日にリリースした調査結果は、その日のうちに新聞各紙が取り上げた。上に挙げたのはHindustan Times紙第6面にあった記事であるが、これ以外にもHindu紙が第3面で紹介している。
 また、こうした調査結果は、これらの問題を明らかにしただけではなく、高齢者が直面する問題の殆どが相互に関係していることを示している。例えば、51%もの人が孤独と関連した心理的問題に直面していると答えている。体力や健康の衰えといった老化に伴う問題は、負担することも難しいほど処方される薬品や診療によってより複雑化している。
 核家族家庭に同居する高齢者の15.5%は裁判沙汰や財産を巡る争いのために心の安寧を失ったとしている。こうした身内の争いごとには、親類が介入してくるケースや財産所有権とも絡んだ居住の安全の懸念も伴っている。 
 高齢者のための家族の支援が喫緊の課題であるとして、エイジウェル財団のヒマンシュ・ラート氏は次のように述べる。「家庭内や地域内での高齢者の役割を増やしていくにはタイムリーな行動が必要とされます。より若い世代の人々に家族制度の意義に気付かせることも必要不可欠です。」
この調査は、全国調査の一環として12月第2、3週にデリー及び首都圏にて先ず実施されたもので、1,000人の高齢者にアンケートを行なった。この1,000人の中には、退職者、年金受給者/非受給者、主婦、識字/非識字、労働者等、様々な背景を持つ高齢者が含まれている。
*記事全文は下記URLにてダウンロード可能です。
 http://www.hindustantimes.com/rssfeed/newdelhi/Lonely-and-alienated/Article1-491280.aspx

関連記事は次の通り。
*Hindu紙12月28日付
http://www.thehindu.com/2009/12/28/stories/2009122860100300.htm
エイジウェル財団のブログ記事
http://agewell-initiatives.blogspot.com/2009/12/status-of-older-persons-in-nuclear.html

実は調査結果自体は僕らにとっては想定されるものであるように思える。ダイエットも兼ねて僕は自分が住む退役軍人家庭が多く居住するエリアにある公園でよくウォーキングをやるようにしているが、そこでお目にかかるお年寄りはあまり楽しそうな表情をしていない。こういう社交の場に出てきて情報交換や意見交換をやったりできるだけこうしたお年寄りは恵まれているといえば恵まれているのだろうが、足腰も弱くなってくると宗教施設への礼拝にも行けず家の中に閉じこもりがちになってくる。そうすると周囲の人々に対する信頼がますます抱けなくなり、人間関係がスパイラル的に悪化していく。僕が以前住んでいた家の大家さんご夫妻がそんな感じだった。

それに意外と多いのは財産を巡る問題である。日本でも「土曜ワイド劇場」や「火曜サスペンス劇場」のネタに成りやすいのが財産分与を巡る遺族兄弟間の争いであるが、インドの場合は年老いた両親から財産を奪い取って自分達の勝手気ままを始める息子・娘が多い。それだけではなく、親戚が介入してくるケースも結構あるし、さらには地元の警察高官のような変な人まで登場していつの間にか居座るケースもある。

財産を巡る問題は、家族の間でも結構熾烈だと思う。インド人は高齢者のケアの問題になると、「インドはジョイントファミリー制度があるから大丈夫だ」と平気で言う人が多いが、そのジョイントファミリー制度(複数世帯同居)が仇になって財産で揉めるのだというのをちゃんと理解しているのだろうか。彼らの言う「ジョイントファミリー制度」というのはかつての日本にだって存在したのだが、高度成長期に始まった人口流動の活発化で都会での核家族化がどんどん進み、今や家族だけでは高齢者のケアはとても負担しきれなくなってきている。インド人は、「ジョイントファミリー制度だって永遠ではない」ということをちゃんと理解しているのだろうか。

この調査の想定は、「核家族(nuclear families)」というからには「両親と子供の同居」を想定しているのだろう。或いは、子供が既に外に出てしまったお年寄り夫婦だけの世帯や単身世帯もこれに含まれるのかもしれない。

なお、エイジウェル財団の発表によれば、この調査は20州の約5,000人を対象として行なった調査結果の一部であり、州による違いであるとか、都市と農村とでの違いとか、男性と女性での感じ方の違いとか、そういった分析の結果もいずれ公表されるらしい。
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