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独立できるかテランガナ [インド]

インド、州昇格を容認 テランガナ 他地域の運動刺激
12月12日配信 産経新聞
【ニューデリー=田北真樹子】半世紀にわたり、インド南部アンドラプラデシュ州から単独州への昇格を求めていたテランガナ地域に対し、インド政府が要求に応じて昇格を容認した。これを受け、同州は昇格をめぐる賛成・反対派が衝突、バスが焼き討ちにあうなど治安が悪化している。政府は昇格を認めることで長年の地域対立の幕引きを図ろうとしたが、対立に拍車がかかる事態になっている。また、今回の政府判断が、他地域の昇格運動を刺激するのは必至で、「パンドラの箱をあけてしまった」との指摘も出ている。
Telangana.jpg 政府が9日夜、決断に踏み切った背景には、テランガナ地域の政党代表が州昇格を求めて約10日間、断食を続け、衰弱が激しくなったことがある。地元筋によると、同州の国民会議派幹部が、断食で政党代表の生命が危険にさらされれば、問題拡大を招きかねないとして、昇格容認を決定。最終的に政府が決断したという。州都で、インドのIT(情報技術)企業の集積地ハイデラバードは外国資本の受け入れに懸命なだけに、混乱によるダメージ回避の狙いもあったようだ。
 テランガナは1950年代に、ほかの地域との合併でアンドラプラデシュ州となった。もともと反対を押し切っての合併だったことに加え、テランガナ地域の住民は、同地域にあるハイデラバードが経済発展を遂げる一方で、「その恩恵を受けていない」との思いが強く、単独の州になることが、現状打開の唯一の方法だと訴えてきた。だが、インドの歴代政権は、他でくすぶる州格上げ運動への影響を懸念し、テランガナ問題を放置してきた。
 政府の決断で同地域は歓喜にわいたが、新たな州ができれば、ハイデラバードも新州に移されかねないとして、テランガナ地域以外の州議会議員(定数294)らが猛烈に反発。11日までに120人以上の州議員が抗議して、辞職する事態に発展した。
 インドは現在、国内9カ所で単独州への昇格を求める運動を抱えている。すでに他州では州昇格運動の活発化を宣言する動きも出ており、今後これが勢いを増せば、政府を揺さぶる可能性もある。

TelanganaBandh.jpg先週末、ハイデラバードに出かけた際、まさにこの治安悪化の状況に遭遇した。5日(土)夜に到着し、ホテルにチェックインした僕らは、その日にテランガナ国民党(TRS)のK.チャンドラシェーカー・ラオ(通称KCR)代表が、それまで続けてきた断食の果てに昏睡状態に陥り、ハイデラバード市内の病院に運び込まれたという一報を耳にした。断食7日目のことだ。この間何ら手だてを講じなかった州政府と中央政府に対する抗議から、KCRの支持者が、市内オスマニア大学学生(この大学はテランガナ独立派の拠点の1つ)を中心に市内で大暴れを始め、店舗やバスへの投石、焼き討ちを始めた。僕らは実はテランガナ地方にあるカリームナガルという町を6日(日)に訪問する予定だったのだが、この日からTRSが48時間のスト(「バンダ(Bandh)」というらしい)に入り、そこら中で通行する車を止めて襲撃する恐れがあったため、カリームナガル訪問を取り止め、市内での関係機関との打合せに時間を充てた。市内では右写真のようなバイク軍団ともすれ違った。シャッターを下ろしていた店舗に投石しているシーンを実際に見るとかなり怖い。

TelanganaKCR.jpg10日(木)未明にチダンバラム内相がテランガナ州独立承認の検討に入ると発表したのを受け、KCR代表(右写真)は入院先の病院でも続けていた断食をようやく打ち切った。ただ、本日引用した記事にも「パンドラの箱」とあるように、命がけの断食をやったら州の独立が認められるのならうちもやろう発言がいろいろなところで聞かれた。実際、西ベンガル州の北部ダージリン県で「ゴルカランド州」独立運動を展開しているGJM党の支持者35人が11日から断食に入り、他にもコルカタやデリーでアジテーションを開始したという。ゴルカランド独立運動はテランガナよりも古い102年の歴史があり、テランガナを優先させた中央政府の対応には不満も多い。14日(月)から4日間のストが予定されている。ダージリン地方に旅行される方は注意された方がいいと思う。この地方は今年7月にも大きなストがあり、たまたまスト開始直前にダージリン旅行に入った僕の知人が、道路封鎖に遭って戻って来れなくなった。店舗は閉まっているので食事もままならず、6日間食い繋ぐのにかなり苦労したと聞く。

テランガナ地方は面積では116,800k㎡、人口3,100万人、アンドラプラデシュ州(AP州)23県のうち10県を占め、42選挙区のうち17選挙区を占める。州議会議員294人のうち同地方選出の議員は119人だ。仮にテランガナ州が独立するとしても、現在のインドの州構成は憲法で規定されているため、憲法改正手続きが必要となる。どの政党もテランガナ州独立においては党内での意見が二分されており、すんなり承認されるのかどうかは今のところわからない。

また、AP州が分裂するとなると州都ハイデラバードの帰属も大きな課題となる。12月11日付Hindustan Times
第1面記事「Dividing the spoils: Who gets Hyderabad?」(Vikas Pathak記者)によると、ハイデラバードは地理的にはテランガナ地方に属する。従って、テランガナ州独立となるとハイデラバードもテランガナ州に属するというのが一見当たり前に見えるし実際に独立支持者はそう主張しているが、AP州を構成している他の2地方――アンドラ地方とラヤルシーマ地方はハイデラバードはAP州のものだと強硬に主張している。ハイデラバードの今日の発展は、アンドラ地方出身者の貢献によるところが大きい(ネルー大学の歴史学者Y.チンナ・ラオ教授)からだ。ハイデラバード中央大学で政治学を教えるジョティルマヤ・シャルマ教授によると選択肢は3つあるという。

(1)ハイデラバードはテランガナ州帰属とし、AP州の新州都を沿岸部のビシャカパトナムにする。
(2)ハイデラバードは中央政府直轄地域として、テランガナ州から切り離す。
(3)ハイデラバードはテランガナ州帰属とし、これに隣接するセクンデラバードをAP州帰属とする。
*「ハイデラバード」は通常、「ハイデラバード」と「セクンデラバード」という2つの都市を総称して呼称される。
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