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デリーのスラムで頑張る女性リーダー [インド]

ディワリ前の話題になるが、デリー市内ニザムディン鉄道駅とバスターミナルに挟まれたサライ・カレ・カーンというスラム居住区に事務所を構えるSave The Children India(STCI)を訪問した。ここのニーラム代表とは今年3月頃に知り合いになり、その後ニーラム女史とも親交のある日本のNGOのインド支部の事務局長からも「ニーラムの活動は一度見ておくといいわよ」と勧められたので、職場の同僚を何人か連れて見学に出かけたのである。ニーラム女史は、今年2月に社会福祉分野の研修で日本の石川県小松市を訪問したことがある。

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《学校落第した女性向けの補完教育教室とニーラム女史》

STCIはムンバイに本部を置き主にマハラシュトラ州で子供と母親の支援を展開している。デリーではここサライ・カレ・カーンでの活動があるだけだ。STCIデリー支部は1994年開設。サライ・カレ・カーンは400年前から存在するコミュニティで、今でも約60,000人の人々が住む。ここの住民は、他州から汽車や長距離バスに乗ってデリーにやって来た出稼ぎ労働者とその家族である。

出稼ぎで上がってくる他州からの労働者は、デリーに着いていきなり職を得られるわけではない。取りあえずはこの地区で家を探し、ここを拠点にして職探しを行なう。首尾よく仕事が見つかれば、ここから通うか或いは別の居住区に移って行く。人の出入りは当然激しい。また、この地区にそのまま居を構えた世帯でも、夫が外に働きに出かけるといっても、せいぜい日雇い労働かプライベート運転手等、得られる職は限られている。実入りは少ないし、ストレスも多い仕事だから、1日が終わるとお金が酒に化ける。或いはストレスが家の中で爆発して家庭内暴力にエスカレートしていくこともある。

元々低所得世帯が多いだけに、生活環境は劣悪だ。学校就学率は低いし、子供の栄養摂取も不十分だし、人身売買も問題になっている。そこで、STCIはムンバイで行なっている活動と同様に活動をこの地域でも展開している。

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その1つがBalwadisと呼ばれる、就学前の児童(2歳半~5歳)を預かる幼稚園だ。こういう幼稚園を運営することで、地域の女性が日中働きに出ることもできるようになるかもしれないし、また就学年齢になった時の子供達のドロップアウト(落第)のリスク軽減に繋がることも期待されるだろう。

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面白かったのはこの幼稚園で使われていた教材である。ラミネート加工した数字や文字、野菜・果物のイラスト等のカードの裏に小さなマグネット(紙状になっていて方眼目盛に沿ってハサミで切り取って使えるもの)を貼り付け、それをホワイトボードに張って使われていた。こうすると単純に厚紙を加工して使うのに比べて摩耗も少ないから長持ちする。また、手前に置いてあるのは、ペットボトル2本に水ときらきら光るスパンコールを入れて口を塞いだ手作り玩具である。ニーラム女史が日本での研修に参加した際、訪問先で見かけた様々な教材を参考にし、必要な材料を日本で買い込んで帰ってきて作ったものなのだという。

こういうちょっとした工夫を日本での研修の間に思い付いて持ち帰って来たというのを聞くととても嬉しいですね。

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上の写真は思春期女性向けの裁縫研修の風景である。こうした裁縫の殆どは家の中での衣服の維持に使われることが多いが、ちょうど僕達が見学した時には、新聞紙を型紙として使い、布から衣服を作ってみるという研修が行なわれていた。

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この写真は、成人女性向け識字教室の風景だ。すぐ横にPCのディスプレイが置かれている。ここはコンピュータ研修にも使われる部屋らしいが、僕達が訪問した時には識字教室として使用されており、しかもこのディスプレイを使って識字の学習が行なわれていた。TCS(TATA Consulting Services)が開発した識字学習用プログラムを利用した授業だったが、このプログラム、わかりやすかった。

デジカメが壊れていて仕方なくケータイの内蔵カメラで撮ったのでいい写真が少なくてごめんなさい。画素が荒いのでサイズをできるだけ落として写真掲載させてもらいました。

さて、この日はSTCIの事務所兼教育施設を中心にご紹介したが、ここの活動は事務所で行なわれているだけではない。この地区の住民の半数はムスリムであるため、女性が遠出できないのだ。従って、逆にSTCIの側から出向き、各世帯を戸別訪問して女性の悩みを聞き、相談に乗ったりする活動が行なわれている。また、単に教育的な色彩ばかりの強い活動だけではなく、単なるレクリエーションも必要かもしれない。ニーラム女史によると、毎週土曜日はこの地区の広場に集まってピクニックをやっているという。「ヒンディー語のテキストを持って行って参加者に教えてもらってもいいか」と尋ねたら、ニーラム女史は「いつでもウェルカムよ!」と言っていた。ニザムディンだったら僕の住まいからバスで1本だから、そのうちまた訪ねてみたいと思う。

STCIと日本との繋がりは、ニーラム女史が今年2月に小松での研修に参加したそれ1回しかない。折角できた繋がりを、もっと太くしていくお手伝いが少しでもできたらと思った訪問であった。
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