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修復不能な親子の仲 [インド]

インドの高齢者問題を主に扱おうと思いつつこの話題をご無沙汰にして随分と時間も経過してしまったが、さすがに新聞の1面で取り上げられた記事は紹介しないといけないだろう。10月21日付The Hindu紙の記事で、「裁判所、高齢者夫妻の息子とその妻に退去命令(Tribunal orders elderly couple's son, daughter-in-law to vacate parents' flat)」(Gaurav Vivek Bhatnagar記者)というものだ。

記事全文は下記URLから。
http://www.hindu.com/2009/10/21/stories/2009102158660100.htm

記事のポイントを挙げてみよう。

1)デリー中央地方裁判所(Maintenance Tribunal of the Central District of Delhi)は20日(火)、市内プラサド・ナガル在住の70代の男性の息子とその妻に対し、父親の住む住宅から退去するよう命令を下した。この70代男性の訴えによる措置で、訴状によると、この息子夫妻はその両親に対し、様々な嫌がらせ行為を行なったという。

2)この裁判所命令は、10月1日の国際高齢市民デー(International Senior Citizen's Day)に施行された「2007年親と高齢者の生活維持と福祉に関する法律(Maintenance and Welfare of Parents and Senior Citizen's Act 2007)」の最初の適用例となった。同法では最大1万ルピーの罰金と最大3ヵ月の懲役も規定されている。

3)息子夫妻は2003年11月に結婚したが、その際に1ヵ月だけの予定で70代男性の自宅に間借りすることを許された。しかし、それ以降息子夫妻は男性宅を退去するどころか、直接的間接的にこの申立人に対する嫌がらせを行なった。また、男性の妻(66歳)も、心臓病と糖尿の持病を持つにもかかわらず、息子夫妻による介護は極めて劣悪なものだったという。

4)訴状の内容について裁判所はカロルバーグ地区行政官(Sub-Divisional Magistrate)を通じて事情調査を行ない、申立人には身の安全上の懸念があり、かつ息子夫妻から脅迫を受けている状況であることを確認。「(申立人は)責任ある父親としてただ1人の息子を育て、二度の結婚も認め、息子の将来設計にできる限りの支援を行なった。そしてその妻とともに家庭内の問題を穏便に収拾しようと努力もした。そのためには、息子とその妻の側からの歩み寄りも必要だったが、それを息子夫妻は行なっていない。」とし、両者の和解や関係修復は困難との判断を下した。

5)息子夫妻はこの命令から1週間以内に退去せねばならない。また、この退去が確実に行なわれるようにするため、裁判所はプラサド・ナガル警察に対し、10月28日までに退去確認報告書を提出するよう指示した。

なんだかとても切ない思いがするニュースである。法的手段に訴えなければならなくなるほど親子の関係が破綻しているというのはちょっと…。でも、施行された法律の執行能力が問題だと言われるインドにおいて、同法に基づく司法措置が発動されたというのは喜ぶべきことでもあるかもしれない。

ただ、強制退去を余儀なくされた息子夫妻が逆ギレして老夫婦に対して何らかの報復行為を行なうリスクをどのように回避できるのか、本来の法の執行能力はその部分でも問われてくるのではないかと思う。また、こういう事態に陥ってしまった老夫婦のご近所も、息子夫妻が二度と近付けぬよう、何らかの監視網を敷かないといけないのではないかと思う。司法と地域の能力が問われる話である。
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