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『ガール』 [奥田英朗]

ガール (講談社文庫)

ガール (講談社文庫)

  • 作者: 奥田 英朗
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/01/15
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
わたし、まだオッケーかな。ガールでいることを、そろそろやめたほうがいいのかな。滝川由紀子、32歳。仕事も順調、おしゃれも楽しい。でも、ふとした時に、ブルーになっちゃう(表題作)。ほか、働く女子の気持ちをありえないほど描き込み、話題騒然となった短編集。あなたと彼女のことが、よくわかります。

奥田作品として『マドンナ』を読んだら、次はなんとなく『ガール』かなと思って読み始めた。短編集なので時間を見つけてはこまめに読み進めることができる作品だ。

会社で働く30代女性が主人公の短編ばかりだが、状況設定はそれぞれ異なる。年上の男性の部下を抱えた女性管理職(「ヒロくん」)、同世代の友人に倣ってマンション購入を急ぐ広報ウーマン(「マンション」)、自分よりひと回り世代が下の20代OLとアラフォー世代の先輩OLとの狭間でいつまでかわいいファッションでいられるかを悩むアラサーOL(「ガール」)、子育てと仕事の両立に苦心しつつ同期の独身女性管理職と対決するバツイチ営業ウーマン(「ワーキング・マザー」)、ひと回り年下の職場のイケメン新人のモテモテぶりに心を揺さぶられる35歳の指導係(「ひと回り」)―――どれも興味深いテーマの作品ばかりだ。読者の感想としてもポジティブなものが多く、40代後半の男性作家が描いている割に、30代の働く女性の心境やファッションを見事に捉えているといった感想が多い。


だからこそなのだろうが、僕にはあまり響いてこなかった作品だった。奥田作品はかなり読んできたが、割と淡々と読み進めて特に感動もなく読み終わってしまった初めての作品といってもいい。扱うテーマが自分の立場からはあまりにもかけ離れているため、これが30代女性の気持ちをあり得ないほど描き込んでいると言われても「ああそうなの」という程度の感想しかない。こういう状況に置かれた女性が我が社にも相当数いるだろうとは思うが、だからといってこの短編集が彼女達の考え方を理解するのに役立ったかどうかはよくわからない。

主たる読者層を考えるとこのテーマを扱うのはマーケティング的には当たりだと思う。この作品を読んで奥田英朗のファンになった30代の女性読者は相当いるのではないだろうか。ただ、多分売れないだろうと思うが、40代で女性管理職をやっている人が主人公の作品というのもそのうち扱って欲しい。今僕はそういう人と一緒に仕事をしているわけではないが、昔一緒に仕事した女性の上司の中に、どうしても好きになれない人がいた。親の介護の問題、役員や部長クラスから寄せられる高い期待、エキスパートとしての自分のキャリア形成、そして自分に反抗的な中間管理職(僕のこと!)や出来の悪い部下、そうした40代女性管理職を取り巻く会社の諸相を、本人がどう感じてどう行動したのかを描いた作品があれば、僕はもう少しこの人のことを理解できるようになっていたかもしれない。でも、多分売れないだろうなこんな作品。

いずれにせよ、女性が主人公の作品というのは僕はあまり読んでないので新鮮ではあったし、逆に戸惑いも感じながらの読書ではあった。
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カオリ

こんにちは。まさにワタシはこの作品がきっかけで奥田さんの作品を読むようになりました。
当時は働く独身女子だったので、共感したりしなかったりしつつ楽しく読みました。同世代の女性作家が描く女性像には気負いや、作家の価値観などが強く出てきて意外と共感できなかったりするのですが、不思議と嫌味なく読めたのは、逆に奥田さんが性別も世代も違うから冷静に描き込めるからなのかなぁと思ったり。

by カオリ (2009-10-23 13:17) 

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