SSブログ

インドの「南南協力」(遠隔医療編) [インド]

AIIMS医師、オンライン上でアフリカ患者治療へ
AIIMS docs to treat patients in Africa, online
2009年9月23日、Hindustan Times第5面、Rhythma Kaul記者
【ニューデリー発】全インド医科学大学(All India Institute of Medical Science、AIIMS)のテレメディシン(遠隔医療)が10月から国際化に踏み出す。AIIMSの医師がデリーの研究室から、アフリカ54ヵ国の患者を診療・治療できるようになる。
AIIMS.jpg このプロジェクトはアブドゥル・カラム前大統領が2005年にアフリカ諸国に対して行なった医療協力公約の一環である。AIIMSは、このプロジェクトに必要なあらゆる技術援助を提供するため、8ヶ月前にTelecommunication Consultants of India (TCI) Ltd.と覚書(MOU)を結んだ。この覚書によれば、AIIMSは医療技術の専門ノウハウを提供する一方、TCIはハードウェアと中継衛星へのリンクの整備を進めることになっている。 「このプロジェクトは長い間準備中の状態でしたが、ようやく実現に至りました」――こう述べるのは、AIIMSのスポークスマンであるY.K.グプタ医師である。
 この協力枠組みの中で、AIIMSの専門医は患者を診察し、患者の問題を特定し、治療法について指示を行なうことになっているが、これらは全てオンライン上で行なわれる。デジタル技術の進歩により、患者の健康状態はオンライン上で簡単に情報のやり取りができる。
 「あるアフリカの国の医師が聴診器を用いて患者を診た場合、デリーで勤務する私達の専門医はその診察結果をここでモニター上で見ることができ、それに基づいて次の手を打つことができます」――グプタ医師はこう述べる。こうした取組みは、診察対象となる患者が増えることになる。このため、AIIMSでは、プロジェクトをオンライン分析とオフライン分析の2つの部門に分けて考えている。先ず、患者と医師のコミュニケーションはその場で発生するが、オフライン分析では、AIIMSの専門医に患者の詳細な医療履歴が電子メールを使って送付され、専門医は自分の都合の良い時間を使って症例分析を行なうことができる。
 時差を埋めるため、医師達はアフリカの患者とのコミュニケーションを早朝か或いは夜遅くに行なうことなる。

インドとアフリカの協力に関するネタを、先日の太陽光発電に次いで1つご紹介したい。

個人的な見解を言うと、僕はAIIMSのやっていることがあまり好きではない。僕が時々訪問させていただいているみかんママさんのブログで、心臓逸脱症の赤ちゃんの治療をAIIMSが無料で行なった記事が紹介されていたが、その直前にAIIMSはもっと一般的な症状の貧しい子供の患者の治療を「治療費が払えない」という理由で門前払いにしている。医学研究上取り扱うメリットがある患者は無料でも受け入れるが、そうでない患者は治療代を支払えないなら治療も行なわないというのは、インドの医学研究の最高峰にある大学だから医学研究の発展への寄与が求められているのだから当然でもある。しかし、それだったら報道する側もAIIMSが当然の如く期待されていることを当然の如くやっただけの話をあまり大きく取り上げないで欲しいなと思うのである。むしろ、治療費が払えないという理由で門前払いを食らう貧しい患者が依然多いというところにこの国の医療ケアの問題があるのだから。

そんなわけで、AIIMSがインドのアフリカ向け医療協力を担っていくというのも、まあインドの最高峰なんだから当たり前のことではないかと思う。ただ、気になるのは、AIIMSが衛星回線を繋ぐ相手方のアフリカ諸国の病院というのがどういう位置付けにあるのかということだ。ここも医学研究の拠点だったりすると、通える患者がかなり限定されるのではないかと思うのだ。

もっと割り切って、「インドはアフリカの医学研究の進展に協力します」と目標を明確に絞り込んだらいいのかもしれない。漠然とアフリカの患者治療に貢献するというだけなら、それよりも先にインドの国内をなんとかしろよと思わずにはおれない。
nice!(1)  コメント(3)  トラックバック(1) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 1

コメント 3

duke

え!アフリカ!?インドは?インドの田舎はーー!?
と、叫んでみましたが、まず田舎とオンラインでつながないといけないのですよね。。。
超田舎じゃなくていいぁら、普通に国内、お願いしますよ、って感じですねT_T
by duke (2009-10-07 14:17) 

Sanchai

☆dukeさん☆
nice&コメントありがとうございます。

>え!アフリカ!?インドは?インドの田舎はーー!?
そうですよね。普通はそういう反応です。私もそうです。田舎とオンラインで繋いで遠隔医療というのはインドでは未だとてもできないので、結局医療従事者が田舎にいなきゃなんともならないわけですが、これが難しい。優秀な人ほど都市の勤務環境も充実している医療施設に行っちゃうでしょうから。
by Sanchai (2009-10-08 07:20) 

遠隔医療

日本でも最近頻繁に見かける言葉となりましたが、実際の普及はありえるのでしょうかね?
インドの場合、こういうことをしないと、国内医師の海外流出が避けられないとか言う事情があるのかもしれませんよ。私は今イギリスに住んでいるのですが、過去5回GP(主治医)を変わりましたが、内3人がインド人でした。まあ、もともとインド・パキスタン系移民の多い国なので一概に何とも言えませんが…
by 遠隔医療 (2011-12-12 23:36) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 1