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『あの歌がきこえる』 [重松清]

あの歌がきこえる (新潮文庫 し 43-14)

あの歌がきこえる (新潮文庫 し 43-14)

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/06/27
  • メディア: 文庫
意地っ張りだけどマジメなシュウ、お調子者で優しいヤスオ、クールで苦労人のコウジは、中学からの友だち同士。コウジの母親が家出したときも、シュウがカノジョに振られたときも、互いの道を歩きはじめた卒業の日にも、三人の胸にはいつも、同じメロディーが響いていた。サザン、RC、かぐや姫、ジョン・レノン……色あせない名曲たちに託し、カッコ悪くも懐かしい日々を描く青春小説

人間、人生の折り返しを過ぎて老いを意識し始める頃から、なんだか無性に昔のことが懐かしく思えてくる。特に中学校から高校、さらには大学時代のことである。以前、奥田英朗著『東京物語』がツボにはまってしまい、その頃の思い出を題材にブログの記事を書いたことがあるが、僕達と同じ世代の作家がこの頃のことを描いた作品というのはどうにも捨て難いものがあり、つい手にしてしまう。ましてや本日紹介する1冊は、僕と同い年の重松清の新刊本である。

物語は12編の短編から成るが、そこで常に登場するのは主人公のシュウと、親友であるヤスオとコウジの3人である。同じ町にある進学校に揃って進めるという状況はともかくとして、シュウのような真面目男は中学・高校時代には必ずいたし、フォークギターにはまって卒業式の季節になるとやたらと目立っていたヤスオのような奴も必ずいたし、コウジのように家庭に特殊な事情を抱えている奴も必ずいた。そして、早ければ中学校卒業、遅くても高校卒業と同時に、同じ学校の同級生は全く違う道を歩み始めるのである。シュウは早稲田に合格して上京、ヤスオは三流大学ばかりを受験して博多の大学への進学を選び、コウジは一足先に社会人となり広島での生活をスタートさせる。そしてこの12編の短編をそれぞれ彩るのがその時々に彼らが耳にし、口にした歌の数々である。 

「戦争を知らない子供たち」(ジローズ)、「好きだった人」(風)、「いなせなロコモーション」(サザンオールスターズ)、「さよなら」(オフコース)、そして僕は覚えてないが、故・忌野清志郎率いたRCサクセションの「トランジスタ・ラジオ」―――そんな曲が作品の主題として出てくる。必ずしもその時期その時期にヒットしていた作品ではない。例えば中学時代の卒業式の頃になると必ず僕らが送別会や謝恩会でよく選曲していたのが「岬めぐり」(山本コータローとウィークエンド)や「ささやかなこの人生」(風)、「青春時代」(森田公一とトップギャラン)だった。かぐや姫は僕達の中学校時代には既に解散していた筈で、南こうせつも伊勢正三も山田パンダも既にソロ活動ないしは別のバンドを組んでの活動を始めていた。僕らが1979年、中学卒業する頃にリアルタイムでヒットしていた曲は、「あんたのバラード」(世良公則&ツイスト)、「チャンピオン」(アリス)、「君のひとみは10000ボルト」(堀内孝雄)、「夢一夜」(南こうせつ)等だったと記憶する。

ちなみに、本書の中で最も共感を覚えた短編作品は中学卒業式直前の彼らを描いた「好きだった人」である。実は謝恩会でにわかバンド演奏というのを僕らもやろうとしたことがあり(その辺のことは「30年前の「あの日」」で述べた)、憧れていた彼女に対して結局は自分の気持ちを伝えられなかった(伝えなかったとも言える)経験が僕にもあるからだ。そこで関わっていた曲が彼女の思い出とは必ずしもリンクしないのだけれど。

もう1つは松任谷由美の曲から取ってきた「DESTINY」である。これはシュウ高校2年の冬に2歳年上の東京出身で山口大学に進学してきた純子さんと一時的に付き合ったエピソードを描いた作品である。状況や背景は全く違うが同じように2年先輩の女性に憧れた経験が僕にはある。僕が1年生の時の3年生で、卒業したら東京の大学に進学することがほぼ決まっていた高校の先輩で、ルーテル教会の日曜英会話クラスに冬場に1、2度来られて夜一緒の方向に自転車で帰ったことがある。たった2歳年上というだけだったが、大学進学を目前に控えた女性はすごく大人に見えた。学校での接点など殆どなかったので、この英会話クラスに相手が来てくれた時だけの付き合いだった。でも、「今日は来てないかな」という期待に胸をふくらませて英会話クラスに通っていたこの頃の自分があったからこそ、今の自分にも繋がってきているようにも思える。何しろ、高校1年の夏から通い始めたこの英会話クラスは、冬場になるまでは通うこと自体が苦痛で、2週行ったら2週休むというサイクルをダラダラ繰り返していたから。2年生になってからなんだか英会話が楽になってきてそれから卒業まではほぼ皆勤だったが、その前の苦しい時期を乗り越えられたのはこの先輩と出会ったお陰だと思う。但し、本作品もそうだが、この頃に年上の女性に憧れてもその恋は決して成就しない。

正直ここで述べた2作品ではかなり胸がキュンとなった。なんだかとても情景が想像できてしまうから。

また、本作品では短編のタイトルには取り上げられていないが、昔のフォークファンには懐かしい曲名が幾つか出てくる。「22歳の別れ」「置手紙」「海岸通」「翼をください」「あの素晴らしい愛をもう一度」等。これもたまらない。同じような曲を著者と同じ頃に聴いていたからだ。

またまたちなみにであるが、僕は自分の持っているウォークマン携帯に1970年代フォークを30曲以上保存していて、時々聴いている。こんなのがフォークギターで弾けるようになったらいいなと今でも思う。中学時代に挑戦して失敗しているから。駅伝やったり、生徒会やったり、BCLやったり、ラジオの深夜放送を聴いていたり…。そんなことやってるから成績も下がって志望校も危なくなったり…。そんな中で、ギターに関しては中途半端に終わってしまった。ちょいと後悔もある中学時代だった。

そして今、僕はこんな本もインドに持って来ている。

NHK趣味悠々 石川鷹彦のもう一度はじめよう! フォークギター再入門 2009年 4月~5月 (NHK趣味悠々)

NHK趣味悠々 石川鷹彦のもう一度はじめよう! フォークギター再入門 2009年 4月~5月 (NHK趣味悠々)

  • 作者: 日本放送協会
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 2009/03/21
  • メディア: 大型本


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