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インドのPh.D [自己啓発]

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4月30日(木)、先約のあった上司に代わり、ACORD(Asian Centre for Organisation Research and Development)というNGO兼民間シンクタンクのイベントに参加してきた。ACORDに所属するキロン・ワデーラさんという研究者がACORDが独自財源を使ってラジャスタン州バラットプール県で行なってきた農村女性の起業に関する8年間にもわたるアクションリサーチで博士号(Ph.D)取得が決まったので、それを記念した報告会を所属先として企画したというものだった。場所はIndia International Centre。

ワデーラさんの博論テーマは「農村女性起業家の社会経済的背景と動機に関する考察(Socio-Economic Background and Motivation of Rural Women Micro-entrepreneurs)」というもの。内容については詳述しない。途中ヒンディー語が何度も入ったので、あまり理解できなかったというのが正直なところ。

この報告会に出てみて感じたことが幾つかある。

第1に、Ph.Dに挑戦するのに歳をとり過ぎているということはないということ。僕は今45歳で、もう大学院に籍を置いて勉強云々言っている時ではないのではないかと時々不安になることがあるが(研究の進捗が捗捗しくないという焦りもあり…)、ワデーラさんがどう見ても40代後半か50代のグレイヘアーの女性であったという点で少し勇気付けられた。

第2に、仕事と研究のマッチングのさせ方、言いかえれば、自分の研究のために仕事を利用するのもありなんだなということ。もともと自分が出張に行った時には時間を設けて高齢者団体の方と会ってみたり、調査の項目に高齢者にまつわるものを紛れ込ませたりはしてきたが、普段デスクワークに追われてなかなか現場に出れないところを他の要員を活用して現場でデータ収集させるという手もありかもしれないと、ワデーラさんの発表を聴いていて思った。

第3に、博論というのはそうそう簡単に書けるものではないということ。なんとか3年間で取りたいという焦りをこの1年ずっと感じていたのだが、ワデーラさんの研究が対象村と8年も向き合ってその間に黒髪がグレイに変わったというぐらいだというのを聞くと、何が何でも3年でというので必ずしもなくていいのだと勇気付けられた。

第4に、先行研究をどの程度把握しているのかがすごく大切だということ。

最後に1つわかったことも述べておこう。

ワデーラさんのプレゼンの中に、対象となった農村女性起業家の殆どが40歳以下だったという言及があった。僕は以前からマイクロクレジットでは借入人の年齢によって借りにくさはないのかという疑問を持っていた。歳をとればとるほど余命は短いし、教育も受けていない可能性が高いから、返済リスクは高く、起業しても収益性は低いと思っていたからだ。

参加者100名程度の小規模の会場で、しかも誰かが司会として会場からの質問・コメントをある程度仕切らないと、インド人の口は塞がらず、しゃべりたがる人がすごく多い。だから慎ましく挙手してしゃべろうと試みた僕は全然相手にされず、仕方なく報告会後にワデーラさんを捉まえて先ほどの質問を投げかけてみた。(以前出た会議で、あるインド人研究者から、「しゃべりたければ立ち上がるといい」と言われたことがあるが、僕もそこまで大胆にはなかなかなれない。)

するとワデーラさんの説明は単純明快だった。「ラジャスタンの農村では40歳を過ぎると孫がいるのよ。だから自分が働かなくても自分の娘か嫁に働いてもらっているのよ。」―――いやはやごもっとも(苦笑)。うちの妻は40歳の時点で最も上の息子でも10歳だったわけだが、そういう日本人の常識的感覚でインドの農村女性を見ててはいけないのだというのがわかった。

インドで研究論文を書いてPh.Dを取るというのがどういうイメージなのかがわかり、参考になる報告会だった。

ACORDのHPはこちらから
http://www.acordasia.com/
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