SSブログ

アジア5カ国高齢者政策比較研究 [インド]

全国高齢者評議会、医療制度の再編を
"Restructure National Council for Older Persons, Healthcare Facilities"
プネ発、2009年1月17日、Times of India、Swati Shinde記者
 連邦政府の委託を受けて行なわれたインドの高齢市民の生活水準改善に向けた調査の結果が発表され、政府が運営する全国高齢者評議会(National Council for Older Persons、NCOP)の抜本的再編が、高齢市民に対する医療サービス提供のための特別スキームとともに提言されている。
 21世紀半ばには、インド人の5人に1人が60歳以上の高齢者となると予想されている。この高齢者人口比率の予測を踏まえ、プネに拠点を置くインド国際長寿センター(International Longevity Centre, India、ILC-I)はインドを含めた5カ国の高齢者政策の比較研究を実施した。比較研究では、オーストラリア、日本、バングラデシュ、スリランカ、及びインドの5カ国で実施されている政策が比較の対象となった。ILC-Iに所属する4人の専門家グループによって実施されたもの。
 この調査研究の主幹を務めたILC-IのS.D.ゴカレ名誉理事長によると、「高齢者のために政府が設置した機関は何ら具体的なことをやっていません。こうした機関は再編し、当該分野で活動しているNGOを代表に加えた組織に早急にする必要があります。この委員会は、主務官庁の下部組織に留まるのではなく、当該省庁の諮問評議会とするべきです。現在存在する委員会はその活動内容やどのように機能するかについて全く説明責任を果たしていません。事実、私たちの提言はこうした委員会の報告は議会に定期的に提出され、意思決定機関というよりも実施機関として機能させるべきというものです。」
*記事後半に続く
昨年7月にプネの国際長寿センター(ILC-I)を訪問した際、ILC-Iでは表題の調査研究を実施中であると聞いていたが(ブログ記事はこちらから)、どうもそのレポートがまとまったようである。さっそくゴカレ教授に連絡してレポートを送ってもらおうっと。
 また、研究チームの1人であるアンジャリ・ラジェ研究員によれば、近い将来の高齢者人口の増加の規模を考えると、公的機関はヘルスケア面等で深刻な課題を抱えるという。「インドやバングラデシュでは、高齢者医療制度の財政的負担はかなり大きなものとなります。途上国はプライマリー・ヘルスケアでも提供することができない状況ですから、高齢者向けの特別ケアなどさらに難しい話になります。オーストラリアや日本はその政策に高齢者医療への配慮がかなりなされています。特にオーストラリアの場合は、医療サービスへのアクセスは殆どの高齢者にとって無料となっています。」
 高齢者医療政策の比較をした上で、研究報告書は医療サービスは高齢者にもアクセス可能なものとすべきで、健康に老後を迎えるという概念がもっと推進されるべきと提言する。
 ILC-Iの報告書はさらに、市民は現役世代のうちから住宅投資を行なうよう動機付けられるべきであること、居住地域のレイアウトは高齢者のライフスタイルに応えたものであるべきであることを提言している。加えて、人口高齢化と高齢者ケアへの一般の理解をもっと促進することが必要であるとも訴えている。「こうしたトピックは教育カリキュラムでもカバーされ、世代間の連帯の強化に繋げられるべきです。人々がこうした問題に可能な限り向き合えるよう、地域の中で、学校や大学、事業所等を通じて高齢化に関する情報の普及が図られる必要があります」――ラジェ研究員はこう述べる。
 この調査研究は、政府から30万ルピーの助成を受けて行なわれたもので、働きたいと思っている全ての高齢者のために雇用機会を創出し、すべての世代の人々の潜在能力と専門知識を十二分に活用すべきであるとも指摘する。
 プネ大学の文化人類学者であるラム・ガンビール教授と、同大生物情報科学センターの生体統計学者であるシャルバリ・シュクラ教授もこの調査研究に参加している。

同報告書の主な提言内容は以下の通りである。
◆全国高齢者評議会(NCOP)の組織と実施活動に関する年次評価
◆NCOPの活動に関する議会への説明責任。毎年報告を行なうことを義務化する。
◆NCOPに活動実施権限を付与する。
◆NCOPの実施活動にコンプライアンス違反があった場合には罰則規定を適用。
◆健康、住居等全ての政策を、高齢化への配慮を含め全ての世代の人々を参加を保証するものとする。
◆NCOPを再編し、社会正義エンパワーメント省から独立した組織とする。但し、同評議会の議長は同省次官とし、その他に関係政府機関とNGO全国組織の代表を委員に加える。
◆高齢者向け基金の設立
◆高齢者の利害を保護する措置に従わなかった場合の法的資金的罰則規定適用
◆高齢者施策に関する権限を分権化し、パンチャーヤトレベルにまで下げること
◆社会正義エンパワーメント省は高齢化に関する国際機関や国際NGOとの関係強化を図ること。

このタイミングでまとまったということは2月のケララでの「超高齢者の健康と介護に関する国際専門家会議」辺りに研究チームの誰かがレポートを持ってきて発表やられるかもしれないなと思う。そもそもこの会議の発起人の1人にゴカレ教授も含まれているし…。インドの政策上の課題もさることながら、日本のことがどのように評価されているのか関心がある。
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0