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『チーム・バチスタの栄光』(上・下) [海堂尊]

チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 599) (宝島社文庫 599)

チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 599) (宝島社文庫 599)

  • 作者: 海堂 尊
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2007/11/10
  • メディア: 文庫
チーム・バチスタの栄光(下) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 600) (宝島社文庫 (600))

チーム・バチスタの栄光(下) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 600) (宝島社文庫 (600))

  • 作者: 海堂 尊
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2007/11/10
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
東城大学医学部付属病院は、米国の心臓専門病院から心臓移植の権威、桐生恭一を臓器制御外科助教授として招聘した。彼が構築した外科チームは、心臓移植の代替手術であるバチスタ手術の専門の、通称“チーム・バチスタ”として、成功率100%を誇り、その勇名を轟かせている。ところが、3例立て続けに術中死が発生。原因不明の術中死と、メディアの注目を集める手術が重なる事態に危機感を抱いた病院長・高階は、神経内科教室の万年講師で、不定愁訴外来責任者・田口公平に内部調査を依頼しようと動いていた。壊滅寸前の大学病院の現状。医療現場の危機的状況。そしてチーム・バチスタ・メンバーの相克と因縁。医療過誤か、殺人か。遺体は何を語るのか…。栄光のチーム・バチスタの裏側に隠されたもう一つの顔とは。第4回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。
今日9月28日は「世界ハートの日(World Heart Day)」
――ということでそれにちなんで本日紹介する本は海堂尊処女作にして当ブログで紹介する海堂作品第2弾、『チーム・バチスタの栄光』である。先週紹介した『ひかりの剣』が最新刊であるのに対して、『チーム・バチスタ…』は処女作である。『ひかりの剣』を読んだ後、「海堂尊にハマりそう」とブログに書いたが、偶然だか意図的だかどちらかわからないが、職場で席を並べている同僚から「こんなの読まれますか?」と言って見せられたのがこの上下巻の文庫版。当然お借りすることにした。

今回の主人公は不定愁訴外来の万年医師・田口先生である。このお方、『ひかりの剣』では東城大学医学部生にして授業をサボっては雀荘に籠っていた。そして、病院実習で外科医が執刀するオペを見学して血を見て卒倒してしまったお方、華麗なメスさばきとは別に患者を救う方法がある筈だと別の外科医に反論しておられたお方である。今回タヌキおやじぶりをいかんなく発揮している高階病院長も、『ひかりの剣』では帝華大学から東城大学に助教授として招聘されて東城大学医学部剣道部顧問に就任し、両大剣道部主将とのやり取りの中で既にタヌキおやじの片鱗を見せていた。その他には、『ひかりの剣』の主人公の1人だった速水が、『チーム・バチスタ…』では名前だけではあるが要職に就いているとの言及がある。

こうやって各々のキャラを光らせる作風は恐るべしである。おそらく本作品を読んだ読者の殆どが、登場人物一人ひとりをよく描いていること、配置に無駄が殆どないことに驚かれるだろう。藤原看護師なんてのもさりげないキャラのつもりが結構大物だったりして、読み進めるにつれて良い意味で期待をひっくり返してくれる。伏線をやたらと張っておきながら最後まで登場人物の配置を生かせない作家もいる中で、ここまで一人ひとりのキャラを光らせるのは凄いことである。確かに面白い。題材が剣道でなくても面白かった。ただ、厚生労働省大臣官房付の白鳥室長はやり過ぎかも。田口をワトソン、白鳥をホームズに見立てたミステリー物であるが、いかにホームズでもここまでワトソンを馬鹿にすることはなかったように思う。

白鳥は、田口の聞き取り調査を「パッシブ・フェーズ調査」と呼び、自身は「アクティブ・フェーズ調査」「オフェンシブ・ヒアリング」を行なうと整理をしているが、こうしたインタビュー調査の方法論はどこかで確立したものがあるのだろうか、ちょっと気になる。まあ、田口が不定愁訴外来で外来患者相手にやっていた方法論はインタビュー型ファシリテーションそのものだったし、そういうところは田口によるチーム・バチスタのメンバーへの聞き取りでも随所に見られた。こうした手法は潜在的に相手が言いたいと思っている本音を引き出すには有効かもしれないが、逆に相手が包み隠しておきたいと思っている本音を引き出すには必ずしも有効とは言えない。そこを突いたのが白鳥の「オフェンシブ・ヒアリング」なんだろうなと思う。わざと相手の自尊心を傷つけてみたり、他者が見ている前で敢えて貶める発言をしてみたり、そうした中で聞かれている方は抑えつけていた本音が炸裂することがあるかもしれないし、逆に目の前で他者が貶められているのを見れば、見た者の自尊心が逆に上がり、いい気持になってつい本音をチラつかせるということもあるかもしれない。このへんは心理学の領域であり、以前学んだインタビュー型ファシリテーションの根底にはそうした人の心理を巧みに突く手法が取り入れられていたように思う。

あまり書くとネタばらし(30万部も売れてるベストセラーにネタばらしもクソもないが)になってしまうので、これくらいにしておきたいと思うが、上下巻合わせて500頁以上という大作も、面白くて今回は1日で読み切った。

週末土曜日の深夜から日曜早朝にかけては、ヤフーを見ながら全米学生フットボールの対抗戦の途中経過を時々チェックするのが日課となっているが、この週末は、1位の南カリフォルニア大学(USC)がランク外のオレゴン州立大学に惜敗し、3位のジョージア大学は8位のアラバマ大学に、4位のフロリダ大学もランク外のミシシッピー大学に敗れ、番狂わせが続いた。そんな中、APランク5位のLSUはミシシッピー州立大学に34-24で順当勝ちし、週明けのAPランキングでは2位に上昇する見込みだ。先週主戦QBに昇格したジャレット・リーはこの日は27投中18回パス成功でパス総獲得ヤード261ヤードと好成績を収めた。面白い小説を読みながらチェックしてたカレッジ・フットボールの結果も良く、終わってないけどオイシイ週末だと思った。
『世界ハートの日(World Heart Day)』は、世界心臓連合(World Heart Federation)が2000年に提唱した地球規模の心血管病予防キャンペーンです。心血管病(心臓病や脳卒中)は全世界で最も重大な死因となっており、この2つの原因で毎年1750万人の命が失われています。 世界ハートの日は、一般の人たちに、健康的な食生活や運動、禁煙による心血管病の予防を奨励することが目的です。
(財団法人日本心臓財団HPより)
今月に入って胸が痛いと思う日が時々ある。僕もバチスタ手術のお世話になる日が来ないとも限らない。
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コメント 1

うっしい

はじめまして。nice!ありがとうございました。
by うっしい (2008-10-01 22:56) 

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