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『インドへ馬鹿がやってきた』 [読書日記]

インドへ馬鹿がやって来た

インドへ馬鹿がやって来た

  • 作者: 山松 ゆうきち
  • 出版社/メーカー: 日本文芸社
  • 発売日: 2008/03
  • メディア: 単行本
内容(「MARC」データベースより)
ヒンディー語はおろか英語もまったくできない著者が、インドでの出版事業に何のマーケティングもせず、まさに一からたった一人で取り組んだ。その苦闘と笑いのすべてを描く海外起業ドキュメント・コミック!
amazonの内容紹介には結構イイことが書かれているが、かなりバカバカしい取組みについて描かれているコミック本である。東南アジアでよく見られる日本のコミックの海賊版訳本は未だインド市場では普及していないから、ここであの巨大市場を押さえてしまえば大きな儲けを得られるに違いない―――そう考えた山松氏が、有り金をはたいてインドに渡る。携えたコミック本は日本のサムライ物で、この辺も物好きなインド人の興味を惹きそうなものをという軽い発想である。当然、インドでの翻訳者の確保や出版業界に関する情報はほとんど持たずにデリー入りしている。

だから、翻訳者や出版会社、印刷業者の確保に関する描写についてはデリー在住者にもあまり役に立たないものが多い。確かに苦労されているのはとてもよくわかるのだが、自分達が同じ必要性にかられてこういった業者の間を走り回るという状況自体が考えにくいのである。

但し、このコミック本の楽しみ方はそれだけではない。

第1に、このコミックに登場する何人かの方とは僕も面識がある。最も身近なのは山松氏が渡航前にヒンディー語を即席で教わった際のY先生。僕は10年前にその先生の社会人向けヒンディー語の週1回の授業を約10カ月にわたって受講している。今でも細々とながら親交はあり、こちらに赴任してくる前にも少しの時間お目にかかってきた。

第2に、このコミックはブロークンでもヒンディー語を覚えるかなりいい教材となり得ると思う。加齢と共に非常に記憶力が悪くなった今の僕の頭で、ヒンディー語の新しい単語を覚えるのはかなりの至難の業であり、ヒンディー語の学習には何らかの工夫が必要だと常々感じていた。そこで最近始めたのがボリウッド映画の挿入歌の歌詞(Lyrics)をインターネットからダウンロードして、その歌をそらんじる中で単語を右脳に記憶させようという方法である。勿論単語の意味はその時はわからないが、今受けているヒンディー語の個人レッスンの中で、同じ単語が出てこればそこで音と意味がマッチングするだろうと期待をしている。

本書はその殆どが山松氏とインド人との丁々発止のやり取りなので、相手の言っていることが理解できない部分の吹き出しは意味不明の記号しか書かれていないが、山松氏が話す吹き出しの多くはヒンディー語の単語がカタカナ表記されている。ただ単語を組み合わせただけのブロークン・ヒンディーだが、僕らのレベルはそれくらいでも丁度いいのかもしれない。

ちゃんとしたヒンディー語学習の方法論を持ったY先生に指導を受けておられるので、所々に登場するデヴァナーガリー文字もかなり正しい。楽しみながら読めるヒンディー語学習書として見るのも面白いだろう。

デリー市内観光のシーンとかは、「うん、うん、自分もこんな苦労はした」と頷きたくなる。異文化での苦労話を綴った紀行文とかエッセイとかはインドを扱ったものが結構あるが、ここまで凄い滞在生活を送った方の記録をコミックとして綴ったものはほとんど聞いたことがない。そこがこの本の付加価値であり、ある読者層にはかなり売れるだろう。日本で出版されたのだからそれなりのマーケティング調査はされたのだろうと思うが、そこまで見越してインドでご苦労なさったとしたら、山松氏は恐るべきマーケティング・センスの持ち主ではないかと思う(苦笑)。
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