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『ひかりの剣』 [海堂尊]

ひかりの剣

ひかりの剣

  • 作者: 海堂 尊
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/08/07
  • メディア: 単行本
内容紹介
『チームバチスタの栄光』の舞台でおなじみの東城大と帝華大。『ジェネラル・ルージュの凱旋』の天才外科医・速水晃一は「東城大の虎」とよばれた剣道部主将だった。かたや、「帝華大の伏龍」とよばれた清川。二人のあいだには、医鷲旗(東日本医科学生体育大会の剣道部の優勝旗)をめぐる伝説の闘いがあった。
海堂尊にハマってしまいそう―――。

最近、書店の店頭には剣道を題材にした本がよく並ぶようになったのは僕にとっては嬉しい傾向といえるが、さすがに女子高校生の剣道部員の話は読むのに抵抗もあったので、学生剣道の小説を買ってインドに持って帰ることにした。今日(20日)は日本人会夏祭りが開かれたのだが、前日から胸の痛みに悩まされていた僕は、胸の痛みは若干治まってはいたけれども念のため自宅で静養していた。末っ子との留守番であった。その間に319頁の長編小説を読み切った。

僕はちょっとあまのじゃくなところがあって、メチャメチャ売れた小説にはなかなか手を出さないことがある。海堂尊作品といえば超有名なのは『チーム・バチスタの栄光』であり、2005年に第4回『このミステリーがすごい大賞』を処女作で受賞している。『チーム・バチスタの栄光』は最近文庫化されて再び書店で平積みされているが、それには目もくれず、今回は拍子に描かれた剣士のイラストに魅かれて『ひかりの剣』の方を手にしてしまった。

海堂作品の登場人物が結構共通していること自体、これまで1冊も読んだことがない僕は知らず、『ひかりの剣』は全く別の話だと思っていた。そういうふうに期待して読んでも十分楽しめる娯楽作品だと思うが、海堂作品を何冊か読んだ人には、あの登場人物の原点はここにあったのかと頷ける作品にも仕上がっていると思う。おそらく僕はこの作品をきっかけにして、登場人物のその後というのを他の作品で堪能するということに繋がっていくのだろう。

ただ、これで完結しているストーリーとして読もうとすると、ちょっとした小言もある。

第1に、速水のように責任感の強い剣道部主将が、大学の授業をサボって雀荘に入り浸るということが本当にあり得るのだろうかという疑問。医鷲旗争奪戦の中で雀荘の描写がだんだん消えていくので、後で振り返ってみると、雀荘に当時入り浸っていた何人かの人物――島津や田口を登場させるために雀荘シーンを入れたのではないかという気がしてしまう。

第2に、ベッドサイド・ラーニングという実習について、先輩方から「授業はサボっても実習はサボるな」と速水らは言われているが、結局それがなぜなのかについてはあまりはっきと描かれていない。高階顧問が荒れていた理由についても描かれていないので、何となく消化不良感が否めなかった。なにせ終盤に近付くにつれて剣道以外の記述が全く出てこなくなるので…。勿論、これらは他の作品で扱われているのかもしれないので、海堂作品を何冊か読んでる人であれば、「ああ、あの話か…」とピンと来るかもしれないが。

第3に、剣道の試合の途中で、対戦相手とあれだけの私語を交わせるというのはちょっとあり得ないという気がしてしまう。上段使いばかりを毎年揃えたチームってのもあり得ない。医大進学する奴が上段使いが揃っているからとその大学を志望することなんで絶対ないし、高校生で上段使いというのもそんなに多くない筈なのできっと大学で入部してきた新入生を指導して上段使いに仕込んでいったのだろうと思うが、そんな杓子定規的な選手育成を行なう指導者って本当にいるのだろうか。ちょっと不思議である。

でも、こういう小説を読むと、高校卒業と同時にいったん剣道を辞め、学生時代は全く竹刀を握らなかった自分の選択に対してかなりの後悔の念を抱いてしまう。あの時、「大学は文科系のサークルに入ろう」等と考えず素直に体育会剣道部に入っていたら、今とは全く違う生き方をしていたのではないかと思う。この歳になると「あの時ああしておけばよかった」という後悔は幾つか思いつくものであるが、その中でもベスト3に確実に入る僕の後悔である。(そのうち他の2つについてもブログで紹介するかもしれないが。)

主人公の1人、速水晃一が登場する海堂作品は『ジェネラル・ルージュの凱旋』である。
ジェネラル・ルージュの凱旋

ジェネラル・ルージュの凱旋

  • 作者: 海堂 尊
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2007/04/07
  • メディア: 単行本

最近出ている剣道小説としては、こんなのもあります。
武士道シックスティーン

武士道シックスティーン

  • 作者: 誉田 哲也
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2007/07
  • メディア: 単行本
武士道セブンティーン

武士道セブンティーン

  • 作者: 誉田 哲也
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/07
  • メディア: 単行本
  
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