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『クマともりとひと』 [読書日記]

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森山まり子『クマともりとひと』
日本熊森協会、2007年1月
【ツキノワグマ絶滅寸前】
1992年、1人の女生徒が、ツキノワグマが絶滅の危機に瀕していることを伝える新聞記事を持ってきました。この記事によって、日本の奥地の広大な森が大荒廃していることを、私たちは知りました。えさ場を失い、おなかをすかせて仕方なく森から人里へ出て来ては、次々と有害獣として射殺されてしまう、クマなどの大型野生動物たち。彼らを絶滅から救おうと、中学生たちは立ち上がりました。そして、豊かな森を失い滅びようとしているのは、クマだけでなく人間を含めた全生物であることに気づいたのです。
「ぼくら、寿命まで生き残りたい」
生徒たちは行動を開始し、猛勉強を始めました。(「はじめに」から)
先日NGO「チーム・ピース・チャレンジャー」主催のインド勉強会に招かれて参加した際、出席者のお一人である海老沼さんから、「よかったら読んで下さい」といって頂戴したのがこのブックレットである。内容的に小学校高学年から中学生向けだと思ったが、就寝前の子供達に読み聞かせの材料として試してみたところ、いちばん真剣に聞いてくれたのは小3のチッチーであった。
このブックレットは、日本熊森協会の会長である森山まり子さんが行った講演の内容を記録したものである。森山さんが兵庫県尼崎市立武庫東中学の理科教師だった1992年、朝日新聞に載ったクマ射殺の記事を読んだ生徒が提出してきた作文をきっかけにして、この中学校でクマの棲む広葉樹自然林の保全に向けた勉強が盛んになり、やがて兵庫県知事を動かし、協会設立にも繋がっていく。当時中学生だった生徒達は、熊森協会設立を契機にボランティアとして参加していく。

ブックレットなんで簡単に読めるが、抜粋だけ繋ぎ合せたらこんなメッセージが浮かび上がってくる。
かつて森を消した文明は全て、滅びている。今まで起きなかったこのような異常現象が起こるのは、絶滅の前触れです。こんなとき、大きい動物から滅んでいきますから、ツキノワグマから、絶滅が始まりました。その地で一度滅びたら、もう二度と取り戻せない。それが野生動物です。

正しいと思うことがあったら、たった一人でも声を上げるんだよ。

クマは本来、森の奥にひとりでひっそり棲んでおり、見かけと正反対で大変臆病。99%ベジタリアンで、肉食を1%するといっても、昆虫やサワガニぐらい。人を襲う習性など全くないということです。

「今の自然破壊見てたら、僕ら寿命まで生きられへんてはっきりわかるねん」「先生、大人って、ほんまはぼくら子供に愛情なんかないんと違うかな。自然も資源もみんな、自分たちの代で使い果たして、ぼくらに何も置いとこうとしてくれへんな」

高い志を持った瞬間から、子供というものは、勉強しろなんて言われなくても、どんどんし始めることを知りました。いじめ問題もなくなりました。
ポイントは、クマの絶滅は森林の絶滅であり、やがては我々人間の絶滅にも繋がってくるということ、そして、それを最も敏感に察知できるのは大人ではなくて子供達であること、たとえ難しいことであっても、諦めずに地道に自ら行動していくことが重要であることなどだろう。多少難しい文章でも、このメッセージは子供達には本当によく伝わる。黙って聞いていたチッチーは途中から涙目だった。読んでいた僕自身も、中学生達の頑張りを見ていて目頭が熱くなった。

1冊100円のブックレットだが、100冊以上購入だと送料無料にして下さるとのこと。文章だけではなく、写真もふんだんに盛り込まれており、無数の野生生物たちの宝庫である自然林と、生物はスギかヒノキだけという人工林を比較したイラストが、非常にわかりやすく描かれている。できるだけ多くの人、特に子供達に読んでもらいたいと思う。連絡先は以下の通り。
購入・問合せ担当:川嶋
Email:kumamoribook@docomo.ne.jp
日本熊森協会のHPはこちらから[exclamation]

サミットも北海道でやるんだから、地球温暖化というような壮大な課題を議論するのも大事だが、こうした野生動物と原生林と人の関係といったもっと身近なテーマについても考えてみてはどうかと思ってしまう。
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