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『その名にちなんで』 [インド]


その名にちなんで (特別編)

その名にちなんで (特別編)

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: DVD
<ストーリー>
1974年、インド・コルカタ(カルカッタ)の学生アショク(イルファン・カーン)は、列車での旅の途中、親しくなった老人から“海外に出て経験を積め”とアドバイスされる。その直後、列車は転覆、アショクは手にしていたゴーゴリの『外套』が目印となり、奇跡的に救出される。3年後、アメリカの大学で工学を学んでいたアショクは、見合いのためコルコタに戻りアシマ(タブー)と結婚すると、彼女を連れてニューヨークで新婚生活をスタートさせる。慣れないアメリカでの生活に戸惑うアシマだったが、やがて夫婦の間に元気な男の子が生まれる。ちょっとした行き違いもあって、その子の名前はゴーゴリに決まる。しかし、ゴーゴリ(カル・ペン)は成長するに従って自分の名前を嫌がるようになり、大学生になるとニキルと改名してしまう。
この映画の原題は『The Namesake』という。2007年のインドのフィルムアワードでタブー(女優さんの名前です)がやたらと登場していたが、その理由は彼女が出演したこの映画にある。興行収入のことはよくわからないが、よく名前を聞いたことのある映画である。米国で公開されただけあり、舞台の半分はニューヨークであり、残る半分はインド・西ベンガル州である。途中で登場するタージ・マハルの風景も美しい。

実はこの映画、僕は昨夜のStar Goldというチャンネルの夜11時からの映画として初めて見た。ベンガル文字が幾つも表れては消えるという印象的なオープニングタイトルで、この映画をちゃんとご覧になった方はお気付きだと思うが、タイトルクレジットに日本人の名前が何人か登場する。タブーの代表作の1つであることは承知していたので、ついつい夜更かしして映画に見入った。僕はベンガル語は勿論わからないが、英語の字幕が登場するし、多くの会話は英語で行なわれていたのでさほどストレスを感じることなくみることができた。
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西ベンガルの田園風景、ニューヨークアッパーステートの静かな秋の紅葉、映像としてどれも非常に美しい。タブーが演じたアシマという女性も、結婚する前から、夫が突然亡くなり、息子が結婚し、また1人西ベンガルの大地に戻って行くまでの約30年が描かれているが、これをタブーが見事に1人で演じている。(タブーは元々ハイデラバード出身なのでテルグ語が母語であり、ベンガル語を話す映画に出演というのはちょっと意外だ。しかも、彼女は170cm近い長身なので、夫役のイルファン・カーンと並ぶとどうしても目立つ。それにデビューから15年近く経つので年齢は30代後半であり、結婚前の若き娘を演じるにはちょっとツライなと感じたことも付け加えておこう。)
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結婚して夫に連れられて米国に渡ったベンガル人女性の初期の当惑、滞米生活が長くなるにつれて英語は上達していくもののインドで長年培った生活習慣はいつまでも維持し続けるインド系移民第一世代の生き方と、2人の子供達が米国の普通の若者として育ち、古い世代のインドの習慣に馴染めないでいる姿のコントラストが見事だと思う。息子ゴーゴリが両親の故郷カルカッタの街の中で米国チックにジョギングを始めるシーンなどでは特にそれが印象的だった。ゴーゴリはニキル(ニック)と改名してしまうが、父親から自分の名前の由来を聞き、その父の急逝を契機に自分のベンガル人としてのアイデンティティに目覚め、再びゴーゴリを名乗るようになる。タブーの演技もさることながら、ゴーゴリを演じたカル・ペンの演技も良かった。さしてセリフが多い役ではないが、心の葛藤がよく伝わってくる豊かな表情だった。
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こうして2つの土地、2つの文化を対比させて描いていくことで、インドの風俗習慣、日常生活、街の風景等がはっきりと浮き上がってくる。結婚相手はどのように決まるのか、どのように相手との見合いをするのかから始まり、冠婚葬祭がどのように行なわれるのか、二等客車の汽車の旅では車内でどのような乗客同士のやり取りが繰り広げられるのか、興味深いシーンがいくつも描かれている。インドを少し知りたい人にはお薦めしたい作品である。

因みにこの映画は下記の小説を題材にしている。邦訳も既に文庫化されているようなので、原作を読んだ上で映画を見ると非常にわかりやすいのではないだろうか。
その名にちなんで (新潮文庫 ラ 16-2)

その名にちなんで (新潮文庫 ラ 16-2)

  • 作者: ジュンパ・ラヒリ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/10
  • メディア: 文庫
The Namesake

The Namesake

  • 作者: Jhumpa Lahiri
  • 出版社/メーカー: Mariner Books
  • 発売日: 2007/01
  • メディア: ペーパーバック
なお、この映画の監督はミーラ・ナイール氏。『モンスーン・ウェディング』の監督さんですね。
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