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『四十回のまばたき』 [重松清]


四十回のまばたき (幻冬舎文庫)

四十回のまばたき (幻冬舎文庫)

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2000/08
  • メディア: 文庫

内容(「BOOK」データベースより)
結婚七年目の売れない翻訳家圭司は、交通事故で妻玲子を亡くし、寒くなると「冬眠」する奇病を持つ義妹耀子と冬を越すことになる。多数の男と関係してきた彼女は妊娠していて、圭司を父親に指名する。妻の不貞も知り彼は混乱するが粗野なアメリカ人作家と出会い、その乱暴だが温かい言動に解き放たれてゆく。欠落感を抱えて生きる全ての人へ贈る感動長編。
今日14日はデリーでは"Ram Naomi"という祭日だった。祝い方はひっそりしているものの、暦の上では新年に当たる。だから、うちの会社も休みであった。バンコク旅行では家族と異なり僕自身はかなり疲れたので、ここで3連休が入ったのは正直言ってすごく助かったような気もしている。

祭日ということもあったので、少し息抜きでもしたいと思い、バンコクの紀伊国屋書店で購入していた重松作品の文庫本を1冊読むことにした。年明けから、『ビフォア・ラン』、『見張り塔から、ずっと』、『幼な子われらに生まれ』と、初期の重松作品を続けて読んできたが、『四十回のまばたき』は初期に角川書店が力を入れていた重松作品の単行本が幻冬舎文庫として復刻された第3弾である。最近の作品が、小中学生ものや、死に直面して過去を振り返る作品が目立つのに対し、初期の重松作品はニュータウンを生活のベースとする登場人物という点では共通点もあるが(デビュー作『ビフォア・ラン』は例外)、扱い方にもう少し自由度があったのだなと読みながら感じる。

外国人の登場人物というのも、英語での会話が出てくるのも、重松作品としては唯一となる。幻冬舎文庫で扱っている3作品はいずれも長編であるが、デビュー作は別としても、それ以降の2作品『四十回のまばたき』と『幼な子われらに生まれ』は一見それほど多くない境遇の家族が一つ屋根の下で暮らしているニュータウンが舞台となっており、「家族」の定義自体を問うている。本書の場合は、妻の6歳下の妹と父親が誰なのかがわからない赤ん坊が、妻亡き後の我が家にて「家族」としてやっていけるのかを問うているのである。

著者が29歳から30歳になるまでの間に書かれた作品であり、古き良き時代へのノスタルジーとか、リストラとかガンとの闘いといったものが、著者の頭の中で大きな位置を占める前の作品ということになる。それなりに面白かったのだが、今44歳の自分が読むとしたら44歳の重松清が今描いている作品の方が共感するであろうということが何となくわかってきた。勿論、小説家として洗練されてきたということもあるだろうし。(勿論、過去の重松作品はあらかた読みきってしまったため、今後読む作品は自ずと新刊本ということになってくることは間違いない。)
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