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『ハイ・コンセプト』 [読書日記]


ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代

ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代

  • 作者: ダニエル・ピンク
  • 出版社/メーカー: 三笠書房
  • 発売日: 2006/05/08
  • メディア: 単行本

内容(「BOOK」データベースより)
21世紀にまともな給料をもらって、良い生活をしようと思った時に何をしなければならないか―この「100万ドルの価値がある質問」に初めて真っ正面から答えを示した、アメリカの大ベストセラー。


この本は東京にまだ僕が住んでいる頃に近所の図書館で一度借りて、結局時間切れで読めなかった本である。デリーの日本人学校で行なわれたバザーで売れ残っているのを見かけて、折角だからと買わせていただいた。

大前研一氏が翻訳されているので、ビジネスの本かと思われるかもしれないが、期待とは大きく異なり、自己啓発本というカテゴリーに属すると思われる作品である。新しい時代は海外のコストの安い労働者にはこなせず、コンピュータが人よりも速く処理できないような仕事に集中し、反映の時代の美的・情緒的・精神的要求に応えられる個人や組織が成長する(p.247)の著者の主張自体は未来を描くビジネス書と言えるかもしれないが、その主張を裏付けるように現実に起きている取組みの紹介とか、右脳型思考の特徴を脳科学から説明しているところなどは、およそビジネス書とは言えない描き方だと思う。著者は、新しい時代に向けて、我々ひとりひとりが自分の仕事を注意深く見つめて、次のことを問う必要があるという。
①この仕事は、他の国ならもっと安くやれるだろうか?
②この仕事は、コンピュータならもっと速くやれるだろうか?
③自分が提供しているものは、豊かな時代の非物質的で超越した欲望を満足させられるであろうか?

これらの問いに対する究極の答えは、総括的な思考をし、パターン認識や、感情や非言語的表現の理解に優れており、莫大な情報処理能力を持つ右脳の能力を最大限に引き出す仕事ということになる。これまでにも、フォトリーディングのパターン記憶法に基づく速読とか、マインドマップとか、ラジオとか、右脳の機能を上手く生かして自分の能力開発ができないものかと僕もいろいろ試してきたが、ある意味その延長線上でどうした仕事に繋げられるのかという方向性を示してくれたのが本書だろうと思う。

これからは次の6つの感性(センス)が求められるという。
 1.「機能」だけでなく「デザイン」
 2.「議論」よりは「物語」
 3.「個別」よりも「全体の調和(シンフォニー)」
 4.「論理」ではなく「共感」
 5.「まじめ」だけでなく「遊び心」
 6.「モノ」よりも「生きがい」

上記の5あたりを見ると、なんとなく、大前研一氏が翻訳を引き受けた理由がわかるような気がする。

ここ数年、うちの長男ミッキーは「画家になりたい」と言い続けている。相当に名前が売れないと儲からない仕事なので、妻も僕も正直なところはもう少しまともな職種の夢を語って欲しいと思ってしまうのだが、本書を読んでいて、たとえ職業としては大成しなくても、そこで培った全体を捉える目とか表現力とかは、ビジネスの世界でも重宝がられるのではないかという気がしてきた。(勿論、必要最低限の普通の勉強はして欲しいものだが。)

インドの住む僕の置かれた立場からするとちょっと面白かったのは、上記の5の感性のところで、インド・ムンバイの「笑いヨガ(Laughter Yoga)」のことが書かれていることだ。別にムンバイだけじゃなくてデリーの我が家の近所の公園でも朝には大笑いをやっているインド人のグループを見かけることがあるし、日本支部も設立されるなど既にこのアプローチは世界的にも注目されるものになっていると思うが、なぜ大笑いが脳の活性化に対して有効なのか、1章を割いて丁寧に説明がされている。
Laughter.jpg

最後に感想をひとこと。こうやって右脳の機能まで引き出してフル活用するのが未来の姿だとなったら、その先には一体何があるのだろうかと漠然と思った。人間の可能性をギリギリまで引き出して競争を生き残ることを考えなければいけない、そうしないと並みの生活すら送れないということであれば、人間はその先どうなってしまうのだろうか。その頃には自分もこの世にいないからわからないが、人類の未来は意外と明るくないかもしれない。

A Whole New Mind: Moving From The Information Age To The Conceptual Age

A Whole New Mind: Moving From The Information Age To The Conceptual Age

  • 作者: Daniel H. Pink
  • 出版社/メーカー: Riverhead Books
  • 発売日: 2005/03/24
  • メディア: ハードカバー



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のんべいキャサリン

新しい事ってドンドン増えていきますね。
出たばかりのときは批判され、信用されなくて苦労する。
でもそれがいつしか古いものになって新しいものを批判し
また、新しいものが出てくる。
なんだか生命みたい。
考える人は、お母さんになるのかな?
by のんべいキャサリン (2008-03-05 20:20) 

cue009

はじめまして。

私もブログにこの本について書いてみました。
よろしければ、遊びに来てください。
http://cue009.blog.so-net.ne.jp/2008-04-19-1

マインドマップやフォトリーディング等、私が興味を持っているテーマについてもお書きになられてたので、興味深く拝見しました。

また遊びに来させていただきます。
by cue009 (2008-04-24 00:53) 

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