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日本語学習成果発表の現場 [インド]


←フラッシュをたかなかったので、暗くてゴメンナサイ。

22日(金)から23日(土)にかけて、チェンナイに短い出張に行ってきた。出張の目的自体は金曜午後で済んでしまい、土曜の午前中に考えていた調査も今回は直前まで徹夜だの深夜残業だのを繰り返すほど仕事がたまっていてチェンナイ出張の準備に時間を割く余裕がなかったので結局諦め、体力回復に専念していた。

それでも土曜午後はフライトまで時間もあったので、当地で丁度開催されていた日本語のスピーチコンテストを少しだけ見学させてもらうことにした。このスピーチコンテストは、現地の印日商工会議所(IJCCI)MOSAI(Monbusho Scholars Association of India)と共同で開催したもので、全国数ヶ所で開催される地区予選の1つ。本大会の優勝者はその後デリーで開催される全国大会に出場することになるが、その一方で本選を勝ち抜いたことで、日本への短期留学の機会が与えられることになっているのだという。

本選の参加者は、4分間のスピーチだけで決まるジュニアの部が12名、スピーチの後審査員からの質問に答えなければならない中級の部が4名で(人数はいずれもうろ覚えです、間違っているかも)、チェンナイ市内の日本語学校の生徒さんの他に、タミル・ナドゥ州、隣りのカルナタカ州バンガロール、アンドラ・プラデシュ州ハイデラバード等からも参加者が数名来ていた。会場にはこうした生徒さんを指導されてきた日本人の先生の姿もちらほらと見られた。ハイデラバードからは青年海外協力隊のような公的セクターの支援チャンネルで派遣されたという日本語教師隊員が来られている一方、日系企業の進出が比較的多いチェンナイやバンガロールからは、民間の人材派遣会社を通じて派遣されてきたという日本語教師がいらっしゃるようである。こうした民間派遣の先生方の派遣先は私立の語学学校である。この辺は、日系企業の進出の多寡で公的派遣か民間派遣かの棲み分けがある程度されているのかなという気がした。

中には、チェンナイに住んで40年というKさんという方にもお目にかかった。元々日本語教育のご専門というわけではなかったのではないかと思うが、それでも生徒さんから慕われて指導をされているご様子であった。(このKさん、目下のところチェンナイ在住者では最長老なのだとか。)

フライトの都合で最初の5名分のスピーチしか見ることができなかったが、緊張してセリフを忘れてしまったり、ついつい練習よりも早口になったり、或いは関西出身の先生に習ったのか発音やイントネーションが変だったりとか、ついつい「頑張れ」と心の中で応援したくなるようなスピーチの仕方だった。でも、いずれの参加者も練習量だけは十分にこなして来られているようで、また先生方もベストの中のベストという候補者を連れてきていることもあって、僕が想像していたよりも日本語のレベルが高かったので驚いた。

特に印象的だったのはそのテーマである。4分間のスピーチで、おそらくテーマは自由に選んでいいということだったのではないかと思うが、自分のペットについて紹介した参加者もいた一方で、鳥のさえずりから自然環境保全の問題に繋げて自分にできることを話した参加者や、身近な人が行なっている孤児との養子縁組の実践からインドの貧困問題に話を繋げた参加者、テレビ普及の功罪について述べた参加者もいた。ペットの話はともかくとして、その他のテーマはいずれも複雑で難しく、それなりにメッセージ性を伴うものだった。そうしたテーマに挑戦する生徒さん達の意思の強さを垣間見た気がした。

とりわけ、テレビ普及の功罪について語った女性参加者は6歳と4歳の2児の母であり、その置かれた状況が4年前の我が家と非常に良く似ていて共感が持てた。一家に1台テレビがあることによって、子供達がテレビの前から離れなくなり、宿題・勉強が後回しになり、外で体を動かすこともなく、動物と触れ合うこともない、対人コミュニケーションの機会がどんどん減っていく状況への危惧を、ユーモアも交えてアピールをされていた。親がたまにはスポーツでもやったらと言ったら「大丈夫、スポーツチャンネルを見ているから」と子供に切り返されたとか、自然と触れ合ったらどうかと言ったら「大丈夫、アニマル・プラネット(衛星放送で見れるチャンネルの1つ)を見ているよ」と子供に切り返されたとか、そういうエピソードで会場の笑いを誘っていた。発音がなまっていたことは差し引いたとしても、このお母さん、かなり上位で入賞したのではないかと思う。

近年、日系企業の進出が相次ぎ、日本語のわかるインド人の需要は非常に高まりを見せているように思う。元々企業の進出が多い大都市であれば民間の語学学校でも日本語学習のニーズはそれなりにあって企業が教育費用を負担しても費用回収はできるところが多いが、地方でもそれなりに日本語学習熱は高く、大学のような公的機関がそうしたニーズを充足させるサービスを提供しているのが現状である。地方の学習者のニーズにどう応えていくのか、日本語を学んだインド人は高給で企業に採用されていくため、後進の日本語教師がなかなか育たない、特に地方の教育機関には行きたがらないといった問題があるように思う。地方でも日本語学習機会がある程度あれば、貧困状況から抜け出して雇用機会を得る人も出てくるのではないかという気がするが…。

閑話休題。
緊張した表情でコンテストに臨んだ参加者を見ていて、僕は自分が学生時代に出た英語弁論大会を思い出していた。こういうコンテストは事前に練習をどれだけやってペースを乱さず間違えずに忘れることなくセリフを言えるかどうかに尽きる。僕は照れもあって会場入りしても静かに出番を待っていたが、中には大学キャンパスの庭で大きな声でギリギリまで練習をしていた参加者もいた。そしてそうした方が大会では優勝した。土壇場での練習の有無というよりも、いかなる状況でも大きな声でしゃべれるのかどうか、どこで何をどう強調するか、どういった感情を込めるかというシミュレーションとそれに応じた練習量がモノを言うように僕は思う。僕は社会人になってから一度だけ同種のコンテスト(英語プレゼンテーションコンテスト)に出たことがあるが、その時はそうした練習を相当に積んで出たので、良い成績をあげることができた。

自分が昔出たコンテストを思い出しながら、応援させていただきました。皆さんよく頑張ったと思う。


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