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マネージャーの適性 [読書日記]

あなたはマネジャーに向いていない

あなたはマネジャーに向いていない

  • 作者: 津田 陽一
  • 出版社/メーカー: 日本実業出版社
  • 発売日: 2007/12/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
年末年始の読書として、もう1つ刺激的なタイトルの本を一時帰国中に購入した。三鷹駅前の啓文堂書店で結構目立つところに平積みになっており、まるで僕に「読んで下さい」と言わんばかりの本だった。最初は買わずにしかとしたのだが、どうしても気になって翌日立ち寄って買ってしまった。そして、デリーまでの帰りのフライトの機内で読み切った。

どうもこの日本実業出版社という会社は、管理職としての自分の資質に迷いが生じている僕のような人の心の琴線に触れるような本をよく出しているような気がする。以前紹介した吉田典生著『なぜ、「できる人」は「できる人」を育てられないのか?』同『「できる人」で終わる人、「伸ばす人」に変わる人』も同社の出版である。いずれもこれまでに読んできた組織マネジメントの実践書としてはとても考えさせられるところが多くある本だった。

本書については、できない管理職―――上司からは使い物にならないと思われ、部下に過大な負担を強いたり逆に呆れられたりしている管理職の特徴を10のタイプに類型化し、具体的な事例から読者に「自分はこのタイプだったのではないか」「うちの管理職はこのタイプなのではないか」という気付きを促し、具体的にどうしたら変われるのか、或いはこの手のダメ上司とどうやって付き合っていけばよいのかについて、考えられる処方箋が描かれている。

類型化の妥当性についてはここで議論するつもりはない。この類型がすぱっとそう割り切れるものではなくて幾つかの類型に見られる特徴を全て具備した管理職だっていることはいる。10の類型を全てここで紹介するのも難しいので、①自分はどの類型に属するのかという自己分析、②これまでに仕えた上司がどの類型に属するのかという分析、の2面から少しご紹介する。

(1)自分はどんな管理職か?
段取りベタすぎ「抱え込み型」カーペンター
人に仕事が振れず変な責任感で仕事を抱え込んで苦労する割に、誰にも評価されず喜ばれもせず、いつも最後に自爆してしまうタイプ。よく聞くセリフは、次の通り。
「部下に振っても、どうせ手直しが発生する。経験がなかったり、使えないやつに教えるのも面倒だ。どうせ言ってもわからないし、できないだろう。だったら自分がやる方が早い!これは俺の責任だ!」(p.viii)

横道愛好会主宰「果てしない物語型」エクスプローラー
本道の目的を外れどんどん関係のない方向に発展するため、いつも成果が出せず部下をムダ働きさせるタイプ。よく聞くセリフは、次の通り。
「ん?もしかするとこうしたほうがよいのでは?さらにこれを横展開すると、こなこともできそうだ。あれておも関係あるよね。こんなふうにも分解できるぞ。あれと関連づけるとこういう見方もできる。ということは、こういうアプローチをすると……」(p.x)

僕の自己分析は、上記の2類型の混合型である。つまり、自分で抱え込むが考えがどんどん拡散していくので収拾がつかなくなり、結果として必要以上に1件あたりの仕事に割く時間が長くなってしまう傾向があるように思う。但し、若干言い訳をさせてもらうとすれば、抱え込む理由は、部下自体がいないところで部下の仕事をやっていたという状況があったということもある。

(2)あの上司はどんなタイプの管理職か?
僕が過去に仕えた上司の中で最も僕を苦しめた直属の上司は次のタイプの方である。しかも、僕が中間管理職として位置し、その部下に恐ろしく仕事ができない奴を抱えてしまった場合、このタイプの上司はものすごくたちが悪い。

流血勝負師「完全主義型」デザイナー
細部まで必要以上の完成度を追求して時間と労力をかけるが、部下には疲労感のみを残すタイプ。よく聞くセリフは、次の通り。
「これくらいのことできないでどうする!仕事の基本だよ!この程度でOKだと思っているんなら、ひどい手抜きだ!仕事への真剣さやプライドがゼロだね。なんでいつも俺の言うことがわからないんだ!」(p.ix)

実際、僕の自己分析による「カーペンター」と「デザイナー」タイプの上司の相性は極めて悪いらしい―――「(デザイナーは)基本的に人間の自主性を信用せず、チェックと指摘によって自分の望んだ結果が得られると考える(中略)。自分が正しいと思うことに部下を従わせる圧力が大変強く、ハイハイと受け入れているとどんどん暴走する。」「仕事がうまくいかなかった時に、(中略)デザイナーは一人ひとりの人間をマークし、その行動の細部を直接チェックし、逃げ道のない状態に追い込んでまでも完璧を目指そうとする。そして使い物にならない人間は簡単に切り捨てて新しい人間と入れ替える非情な流血勝負師だ。」「このタイプをマネージャーに持つとかなり手強い。職権乱用のパワハラで攻めて来るから心を強く持たないと心身のバランスを崩し、ノイローゼや病院送りにも追い込まれかねない。基本的な対策はまず我慢すること、耐えること。「ここは道場。自分は修行中」と思うことである。そして次々と振ってくる難題を、できてもできなくても、淡々とこなすこと。思うような結果が出せず、人格を避難されるようなことを言われてもショックに思わず「そういう人だから」と受け流すこと。(中略)ただ1つ有益なアドバイスがあるとしたら、それはこのタイプのマネージャーとの問題を自分ひとりで抱え込まないことだ。抱え込めば必ずつぶされてしまう。」(pp.222-223)

今思えば、この組み合わせでの仕事が3年近くも続いた中で、よく僕は耐えたなと思う。

さて、処方箋についても本書には書かれていることになっているが、それについてはイマイチ迫力がないと思った。仕事の丸抱えをする僕の欠点について、部下と仕事を共有しろというアドバイスというのは、そんなことわかっているのにできない状況じゃないかという心理的な反発しか生まれなかった。ましてや、デザイナー・タイプの完璧主義については黙って耐えろというのでは、何の解決にもなっていない。この類型化自体を上司に見せて自分で気付いて直してもらうしかないのだとしたら、僕自身がカーペンター・タイプを好きで演じているわけじゃないと反発するのと同様に、デザイナー・タイプの上司にも必ず何らかの言い分があるように思う。結局のところ、個々人の努力でなんともならないところでそのタイプを演じることがそのTPOで最も適切だろうと判断して選択されているのであれば、個々人が自分の類型を知ったところで、何ら根本的な解決には繋がらないのではないかという気がする。

そう考えると、読み終わった後に僕が感じた無力感がご理解いただけるだろう。

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Ken-chan

Sanchaiさん、いつもお世話になっております(?) いただいたコメントからたどってこちらのブログに来ました。興味深い本がいろいろ紹介されていて、私も読んでみたくなりました。また、ときどき訪問させていただきます。
by Ken-chan (2008-01-11 16:20) 

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