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WISEな銀行 [インド]

以前、マイクロファイナンスを実施している機関の活動について少し紹介したことがあるが、こうした活動が与えるインパクトの事例がそこらじゅうにあるというのを感じさせる新聞記事が11月12日付Hindustan Times紙に掲載されていた。このブログでインドのグッド・プラクティスを取り上げるのはかなり久し振りのことであるが、ご紹介したい。


WISEな主婦(The WISE housewives)
デラドゥン(ウッタルカンド州)――たった2年前までは、アニータ・シンは普通の主婦だった。料理するのが好きで、家族の財政状況を少しでも改善するために何かできないかと考えていた。しかし、銀行から融資を受けるには膨大な時間がかかるため、起業しようという意欲はそがれてきた。でも、今ではこの40歳の主婦はデラドゥンから近いモヘベワラ(Mohebbewala)で仕出し業を始めて月に15000~20000ルピー(45000~60000円)の収益をあげている。彼女が事業で成功を収めたことで、彼女の夫シャムは運転手の仕事を辞めて彼女の事業を手伝うようになった。

アニータと同様、多くの女性がWISE銀行(Women Initiative for Self Employment Bank)から恩恵を受けている。WISE銀行は、女性起業家に低利で融資を行なう女性が経営する銀行である。「WISE銀行は私達のように小さなビジネスを始めたいと思っている女性にとっては福音となります。他の銀行とは違って、ここでは融資手続きをすぐにやってくれるし、いろいろな書類に記入して詳細を確かめるような手続はありません。」――カストゥリ・バイはそう言う。この56歳の女性の場合、WISE銀行からの融資を受けて、ジョギワラ(Jogiwala)で漬物製造を始め、諸経費を差し引いても月に5000~6000ルピー(15000~20000円)の利益を上げている。

WISEのスタッフが銀行業を始めようと考えたのは、WISEが実施する職業訓練を受けた女性たちが銀行から融資が受けられずに苦労しているという実態に直面していたからである。「こうした女性を支援するために、私たちは昨年9月から銀行事業を開始しました。現在では、年利8%で多くの女性に融資を行なっています。」――WISE銀行のキラン・ラワット(Dr. Kiran Rawat)はそう語る。彼女によれば、殆どの借入人は銀行口座を開設し、毎月預金を預け入れることから始めるという。こうして形成されてきた銀行の評判はさらに多くの女性がこのイニシアチブに参加することでさらに広まっていくのである。

WISE銀行がもたらすサービスの評判は既存の金融機関の目にもとまり、このベンチャーに参加してより広い範囲でサービス提供ができるようエリア拡大への協力が行なわれるようになってきているという。「WISE銀行は、通常の銀行がとてもカバーできないような女性たちへのサービス提供という点において、優れた成果をあげています。この成功モデルに対して、私達も協力していきたいと考えています。」――ウッタルカンド・グラミン銀行(UGB)理事長のT.カプール(T. Kapoor)はこう言う。WISE銀行の貸付-預金比率が100%であることに注目し、UGBはWISE銀行が必要とする資金を低利で提供するという提案を行なっている。これによって、これまで銀行が存在すらしなかったような地域の家庭もカバーできるようになると見られている。
WISEという団体がどのような形態で女性向け小口融資事業を展開しているのかまでは詳細に書かれていない記事であるが、小口預金受入から始めてその預金の運用先として地域の女性による起業への融資を行なっているという姿が想像できる。信用金庫のような形態ではないかと思われる。それ自体はよくある事業形態であるように思うが、記事だけ読んでいると、預金を預け入れた側のニーズについては全くふれられておらず、その点ではもったいない気がする。銀行のサービスが届いていない地域というのは、稼いだお金を安全に保管できる場所もないということなので、預金受入のニーズはあった筈である。WISEはそこに着目していた筈なのだが…。

また、元々WISEが活動してそれなりに実績をあげていたから、金融サービスはその基盤の上に成立していたと思う。それがUGBが入ってきて同様のサービスをエリア拡大するのに支援しましょうと名乗り出たからといっても、元々WISEがカバーしていなかったエリアで同様の金融サービスをすんなり実施できるわけではないのではないかという気がする。勿論、WISE銀行の資金量だけでは、WISEが元々活動していた地域でニーズに応えられるだけの融資を行なうことができないという点で資金制約があるということであれば話は少し違ってくるかもしれない。

いずれにしても、ウッタルカンド州デラドゥンに行く機会があったら、ついでに話を聞いてみたい活動ではあると思う。


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