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『カシオペアの丘で』(上・下) [重松清]

カシオペアの丘で(上)

カシオペアの丘で(上)

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/05/31
  • メディア: 単行本
 
カシオペアの丘で(下)

カシオペアの丘で(下)

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/05/31
  • メディア: 単行本

少し前のエントリーの中で宣言していた通り、インドへのフライトの機内でこの上下2巻を読み切った。成田空港第2ターミナルの三省堂書店で購入し、出発待ち時間から読み始めた。フライト時間は8時間少々。上下2巻で合計693頁を読み切ったのは、デリーの空港に着陸する直前だった。

こういう、A地点での生活からB地点での生活へと環境の変化を伴う大きな移動をする場合、将来に希望を抱いてか将来の不安を払拭するためか、いずれにしても未来志向で新天地での生活のイメージ作りをするための読書を移動の期間中に行う場合と、これまでの自分の総括を行うという意味での過去への振り返りのための読書を移動の期間中に行う場合と、2つの可能性があるように思う。これからのインドでの生活を考えたら、重松清作品はいったんお休みとなる。それなのに彼は僕の出発前に書き下ろしの長編小説を発表した。版元の講談社が6月に発刊した月刊文庫情報誌『IN POCKET』6月号には重松清へのロングインタビューが掲載されているが、それを読む限り、『カシオペアの丘で』はこれまでの重松作品の延長線上で捉えられる作品であるため、これまでの重松作品集中読書を総括する意味でも、どうしても読んでおきたい作品であった。

あらすじは以下の通りである。(IN POCKETのp.9から引用)

「北海道にあり、かつて炭鉱で栄えた北都は、何十年もの間、衰退の一途をたどっている。その街には、4人の幼なじみが小学校時代に星空を見上げて名づけた「カシオペアの丘」がある。4人はおとなになり、それぞれの道を歩んでいた。地元に残った敏彦(トシ)は遊園地「カシオペアの丘」の園長となり、東京の大学を出て地元の教師となった美智子(ミッチョ)と暮らす。雄司(ユウ)は東京でテレビ制作会社のディレクターになり、炭鉱経営者の一族に生まれた俊介(シュン)も故郷と決別しサラリーマンとなっていた。ある日、東京で起きた悲痛な事件の報道をきっかけに、4人は再会することになる。町の悲劇と一族の確執、友情に深い傷を残した出来事、封印してきた思い。病に倒れた俊介は、残された時間の中で、友や家族とともに過去と向き合う。人が真に「ゆるすこと」「ゆるされること」は可能なのだろうか。壮大なスケールの長編小説は、大空に輝き続ける命の物語となった。」

下巻の途中が間延びしてしまっている気がするのと、女子のニックネームのつけ方が相変わらずイマイチなのを除けば、やはり感動巨編という前評判に違わぬ作品だと僕は思った。かなりのスピード・リーディングをやったために感動の涙にむせるというところまではいかなかったが、それでも2ヶ所ぐらいでは涙腺がゆるくなった。

重松氏はインタビューでこう答えている。「この小説でも書いた、ガンという病気について、1つだけ言えることがあるとすれば、別れを告げるための時間がある病気だということ。脳溢血などでは突然だから、死を見据えて何かを残すことなどできないけれども、ガンの場合には時間がある。その残された数ヶ月の間に何をするのかを問われるということから、ガンは人生について考えさせてくれる病気でもあるんだと。」(IN POCKET、p.8)死を扱えば涙を呼ぶというのは『その日のまえに』や『卒業』でも明らかであるが、ここまで死を見据えた登場人物が何を残せるのかを描いた作品はこれまでの重松作品の中にはないような気がする。

最後になるが、IN POCKET6月号は、本編のあとがきとも位置づけられる重松氏へのインタビューに加え、これまで同氏が各々の作品をどういった意図で描いてきたのかをコメントしている頁がある(pp.18-34)。これは重松清ガイドとしてとても参考になるものであり、本編とともに是非座右に置かれては如何かとお勧めする。

 IN☆POCKET '07-06 (2007)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/06
  • メディア: 文庫
これで暫くは重松清シリーズは更新できません。『なぎさの媚薬』『小学五年生』といった近刊の他に、『ナイフ』『定年ゴジラ』『半パン・デイズ』等、まだまだ僕が読んでいない作品もありますが、暫くはご容赦下さい。これからインドを訪れようと思っておられる友人諸氏、僕の希望は未読の重松作品です。よろしくお願いします。

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コメント 1

ノリ

こんにちは。重松さんのインタビューは興味深いです。

「ガンという病気は別れを告げるための時間がある病気」

「残された数ヶ月間に何をするのかを問われる~
人生について考えさせてくれる病気でもある」

もの書きならではの発想というか、きっと言葉で伝えたいことがたくさんあるんだと思います。
私はといえば、残された時間なんて考えたくもない、きっと頭がおかしくなってしまうと思います・・・。ポックリ逝きたいので日々、悔いのないように生きてるつもりです^^
by ノリ (2007-11-25 21:19) 

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