DVD『疾走』 [重松清]
先日、重松清著『疾走』を読んだこともあり、TSUTAYAでDVDを借りて映画の方も観てみることにした。借りたのは月曜夜だったが、今週は仕事の上でいろいろと大きなイベントが立て込み、異動前のデスクスペースの片付けなどもあったので、結局就寝前の30分程度を細切れで観るしかなかった。
感想を言うと、主人公は結局死んでしまうのでハッピーエンドではないのだが、原作の方ではよく出ていた「魂の救済」的な部分が映画だと端折られていて、ただの暗い映画作品に終わっているのが残念であった。400頁もの長編である原作を2時間の映画に圧縮するのは大変な作業であったであろうことは認めるが、後半のストーリー展開を急がせ過ぎだったように思う。
特に、原作では家を出て大阪経由東京に向かうのは、神父に連れられて大阪の刑務所に服役している神父の弟に会いに行くのとは別のタイミングだったのだが、映画ではこの2つが一緒のタイミングであるような描かれ方になっているので、まるで東京行きの資金を神父が出して、家出の片棒を担いだとも受け取れてしまう。また、あかねと神父との交流が映画では完全に抜け落ちているため、なんであかねの子供を神父が引き取って面倒を見ていたのかもよくわからない描き方であった。ついでに言うと、借金が膨らんで修次を置いて家を出てしまった母親というのが、映画ではあっという間に失踪してしまったのには驚いた。父親の失踪も然りである。だから、修次が叩き落される奈落の底というのがあまりしっかりと描かれていない。
従って、原作を読んでから映画を観てしまった人は、僕と同じような感想を抱くことだろう。
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